ENEOS株式会社&出光新ブランド遂に誕生
 ここまで来た業界再編40年。だが更なる改革も必要か
あなたはENEOS(株)・出光新ブランド誕生の番目のお客様です。
読者の皆様もご存じの通り、JXTGHD株式会社は6月25日の株主総会を持って
その社名に別れを告げ、遂にENEOSHD株式会社となりました。
また出光興産は、6月19日、昨年4月の合併以来使用していたトレードネーム
「出光昭和シェル」に変わって、新しいコーポレートブランドを7月から使用すると
発表しました。これで業界再編も一段落でしょうか。私が業界に入って40年。
その思いもひとしおなので今月はこの話題を解説してみたいと思います。
                              2020/6/30 17時更新 Ver1

日本石油の創業から戦前まで

1888年(明治21年) 5月、新潟県に有限責任日本石油会社が誕生。
1894年(明治27年) 1月日本石油株式会社に商号変更しました。
1914年(大正 3年) 8月 に本社を東京丸の内に移し
1921年(大正10年) 10月 宝田石油株式会社をそして
1941年(昭和16年) 6月小倉石油株式会社を合併しました。
 実は吸収合併の遺伝子は昔からあったのです。
 垣見油化の前身垣見油店は、この小倉石油特約店でした。
 ちなみに 三菱石油株式会社は1931年(昭和 6年) 2月に
 興亜石油株式会社は1933年(昭和 8年) 6月に設立されています
1942年(昭和17年) 6月 愛国石油株式会社を合併
1945年(昭和20年) 8月 終戦。ちなみに興亜石油の麻里布製油所は
 5月に完成するも、翌日被災という悲しい歴史もあります。1950年8月再開

戦後の復興と元売の復興時代

1949年(昭和24年) 4月 元売業者に指定され販売業務再開(三菱石油も再開)
1951年(昭和26年) 10月 Caltex Petroleum Corporationとの折半出資により
 日本石油精製(株)を設立。日本石油も外資を受け入れざるを得ない時代が
 あり、それは1996年に、同社から株を買い取るまで続きました。余談ですが、
 日本石油は都市対抗野球の常連会社でしたがその応援歌、力と希望の歌詞。
 今は、   ♪ENEOS、ENEOS、チャンピオン♪ ですが、
 その昔は、♪日石、日石カールテックス♪ だったのです。
 (1999年7月日石三菱精製(株) 2002年4月新日本石油精製(株)に商号変更)

1955年(昭和30年) 2月 日本石油瓦斯株式会社、設立
 (2001年10月日本石油ガス(株)、2002年6月新日本石油ガス(株)に商号変更
 実は、垣見油化もガス子会社を作る時、日本石油ガスという社名に決め
 日本石油に挨拶に行ったのですが、その名前は、日本石油に譲ってもらい
 垣見さんは東京石油ガスにして下さいと言われ、そんな訳で、日本石油ガス
 における垣見油化の特約店コードは 長らく「0001」でした。
 
1955年(昭和30年) 8月 日本石油化学株式会社 設立
 垣見油化は、日本石油化学の特約店にもなりました。
 当時50社近くの石油系特約店が、日本石油化学の特約店にもなったとお伺い
 しましたが、今も化学をやっているのは、当社も含め数社しかありません。

1964年(昭和39年) 4月 日本石油精製、基幹となる根岸製油所完成
1967年(昭和42年) 7月 日本海石油株式会社を設立
1968年(昭和43年) 7月 東北石油株式会社を設立(三菱石油株式会社)
1971年(昭和46年) 7月 東北石油株式会社仙台製油所完成
1973年(昭和48年) 4月 沖縄石油基地株式会社を設立(三菱石油株式会社)

私が業界に入ってからの40年は、正に元売再編の時代

1980年(昭和55年)  垣見油化でアルバイト開始
1984年(昭和59年) 11月 三菱石油と仕入、精製、物流及び販売で業務提携
1996年(平成8年) 4月 カルテックス保有株を購入、日本石油精製を子会社化
 当時元売を民族系と外資系に分けて論じられることがありましたが、
 日本石油は、悲願の純粋な民族系となりました。

1999年(平成11年) 4月 三菱石油(株)と合併し、日石三菱株式会社に商号変更

1999年(平成11年) 9月 興亜石油株式会社を株式公開買付けで子会社化
2001年(平成13年) 10月 株式交換の方法により、
 興亜石油株式会社及び東北石油株式会社を完全子会社化
2002年(平成14年) 4月 日石三菱精製株式会社が、興亜石油株式会社及び
 東北石油株式会社を合併し、新日本石油精製株式会社に商号変更
2002年(平成14年) 6月 新日本石油株式会社に商号変更
2004年(平成16年) 5月 和歌山石油精製株式会社の増資引き受けで99.0%
2005年(平成17年) 7月 新日本石油ガス株式会社と合併
2008年(平成20年)10月 新日本石油精製株式会社が、会社分割の方法により、
 九州石油株式会社の大分製油所の事業を承継、その後九州石油と合併

2010年7月 新日本石油株式会社が株式会社ジャパンエナジー及び新日本石油
 精製と合併し、JX日鉱日石エネルギー株式会社に商号変更。


2010年10月 JX日鉱日石エネルギーが新設分割で大阪国際石油精製を設立
 大阪製油所の事業を承継させ同社株式49%を中国石油国際事業日本に譲渡
2011年3月 JX日鉱日石エネルギーが吸収分割により同社のLPガス事業の内
 旧新日本石油及びその子会社が営むLPガス事業と、三井丸紅液化ガスのLP
ガス事業とを統合させ、統合新子会社となるENEOSグローブ株式会社を設立。
2016年1月 JX日鉱日石エネルギーがJXエネルギー株式会社に商号変更。
2017年4月 JXエネルギー株式会社と東燃ゼネラル石油株式会社が合併
  JXTGエネルギー株式会社に商号変更。
2020年7月 ENEOS株式会社に商号変更
                     
石油連盟発行 今日の石油産業2019より

ENEOS株式会社誕生

そして皆様もご存じの通り、6月25日のJXTGHDの株主総会を持って、JXTG
エネルギーの社名に分かれを告げENEOS株式会社の誕生となりました。

この株主総会。コロナ問題があったので、参加しようか迷ったのですが、ホテル
の方にお伺いしたところ9時40分時点で約50名しかいらしてないとのことだった
ので急遽参加することになりました。
実際会場に行ってみると、せいぜい100人程度でしょうか。例年の混雑からすると
5分の一か10分の一くらいかもしれません。そして総会は無事終了しました。

この社名変更は、私は以前から時間の問題と公言してきました。その理由は
CI(コーポレート・アイデンティティ)的にはJXはJapanのJと未来を表現する
Xを合わせた造語ですが、TGは東燃ゼネラルの頭文字表記なのでCI的な
意味はなく、単に結合したので、CI的には余り評価を得られていませんでした。

一般に企業が合併する時には決めておくべき絶対条件が幾つかあります。
存続会社、合併比率、本社所在地、人事等ですが、新社名もその一つです。
従って新社名でもめて決裂するよりは、時間をかけて検討するという当時の
先送り方針は正しかったと思います。

第二に、新社名を考えるならやはりブランドイメージに近い方がよいのです。
業界外の一般の方にお伺いすれば、JXTGよりENEOSの方が知名度は
遥かに高いので、このENEOSを社名に使用するのは、ベストかつローコスト
の選択だったと思います。

第三にはJXの子会社では、ENEOSをつけた社名は、以前からありました。
前述したLPガス子会社の日本石油ガスは、ENEOSグローブとして2011年
に誕生。SS系販売子会社もENEOSフロンティア始め多数ありました。
そして私が確信したのは、JXトレーディングがENEOSトレーティングに
なった時です。これだけ状況証拠が揃えばあとは時間の問題だと思いました。

社名変更は昨年11月に発表済みだしそんなに重要ですかと言われれば、
その通りですが、業界に40年いる私には、感慨深いものがありました。
日本石油が米国カルテックスからの独立を成し遂げ、三菱石油、九州石油、
ジャパンエナジー。そして東燃ゼネラル。ある意味私の40年間は今の3極
体制への長い道のりだったのかもしれません。
読者の皆様からの評判が良かったので、ENEOSのマークの中で、脈々と
その遺伝子が生き続けている、由緒ある12の元売マークを再載します。



またこの総会後の取締役会で、ENEOSホールディングスの会長に
杉森務氏、社長にはENEOS株式会社の大田氏がご就任されました。
従って人事面での両社の一体運営が、より強固になると思います。
更に、杉森会長は、石油連盟の会長にもご就任。石油産業全体では、
需要減は避けられない、難しい時こそ、シェアー50%の業界NO1企業の
トップに業界のあるべき姿を示して頂きたいと思います。

出光興産(出光昭和シェル)も早々にブランド統一発表

実はブランド統一をしたのは、ENEOSだけではありません。
本当に難産の末誕生した「出光興産、トレードネーム出光昭和シェル」も
6月19日、本年7月より、コーポレートブランドを刷新すると発表しました。
刷新と言えば、聞こえは良いのですが、たった1年3ヶ月で、昭和シェルの
トレードネームを捨てるという大胆な決断をされた訳です。
冷静に考えれば、貝殻マークを使い続けるというのは、本国のロイヤル
ダッチシェルにマーク使用料を払い続けるということなので、時間の問題
ではありましたが、もう1〜2年先と思っていました。
SSのブランド統一は、それぞれの元売発行のクレジットカードの相互
乗り入れが可能となる2021年4月より統一して、コーポレートブランドと
一体感を持った形にするそうです。
特約店には合同特約店会で既に説明があったそうですが、旧昭和シェル
の特約店の皆様の本音はともかく、真摯にご納得されたとお伺いしました。

石油業界の再編は一応終了

実はJXTGの株主総会で、株主から「コスモ石油と合併することはあるか」
と質問がありました。杉森社長は、一切無いと否定されていました。
公正取引委員会的には、ENEOSとコスモ石油の合併は、シェアー70%と
なるので、かなり難しいでしょう。一方 航空業界のJALとANAの2トップ
の例があるので絶対ないことは言い切れませんが、業界NO2の出光と
コスモが一緒になることは今後の情勢によってはあるかもしれません。
ただ少なくともコロナ前までは、ENEOS、出光、コスモと太陽石油の自称
「大中小プラスワン」体勢で、事業継続可能な利益構築体制が一応出来た
ので、ここ一両年の業界再編はないと思っています。

経済界や株式市場からの石油業界やENEOSの評価はまだ低い

一般に企業の価値を示す指標は色々ありますが、その代表はやはり
株価でしょう。現在の価格は、6月30日の終値で380円。勿論総資産に
対する発行済み株式総数の大小があるので、他社との比較は簡単には
出来ませんが、その割安感を示す一つの数字があります。
今の380円で買って年間待ち続けている時の予定配当が年22円なので
配当利回りが何と5.82%にもなります。今優良企業なら銀行は0.5%以下
で、貸してくれると思うので、税金を引いても4%の利回りなのです。
本年3月の320円の大底からは抜けだしました。2018年秋の800円と
まで言いませんが、業界のためにも500円は回復してほしいと思います。