2019年石油&SS業界重大ニュース
 出光昭和シェル誕生、サウジ空爆、市況、京アニ再発防止策他
あなたは12月企画の 番目のお客様です。2019年も気がつけばもう年末。
今年も国内はとにかく自然災害に見舞われた年のように思います。佐賀豪雨、
台風15号の風被害による千葉の長期停電。そして19号の東日本全域の大雨
災害とその後の大雨災害。ラグビーベスト8は嬉しいニュースでしたが、石油&
SS業界も色々ありました。私はこう思うというあくまで独断のレベルですが、
業界の1年を振り返ってみます。重要度順番というよりは、話の流れ順ですが
皆様のご参考になれば幸いです。
                           2019/11/29文責 垣見裕司

NO1. 出光昭和シェル無事誕生
最初の報道から丸3年。反対をしていた創業家の同意も何とか得られ、
難産の末、出光と昭和シェルの統合会社である新しい出光興産、通称
「出光昭和シェル」が誕生しました。
ビジネス的には、出光興産が子会社化した昭和シェルを会社分割という
方法で傘下に収めたので、昭和シェルの株主や特約店よりは、出光創業
家への配慮に重きを置いた感じがします。
人事についても、創業家関係者と昭和シェル出身者が入ったので、
ここでは対等感は一応出せたのではないかと思います。
よくマスコミで業界は2極プラスコスモ体制と言われていますが、
私は「大中小プラスワン体制」が正しいと思います。
出光昭和シェルは確かに3割のシェアーを有していますが、その上に
シェアー5割のJXTGというガリバー会社がいる以上、やはり二極という
よりは、大中との表現が近いと思います。
一方シェアー約1割のコスモも「小」としての存在感はあり、以前に囁や
かれていた、経営不安説は、もう全く聞きません。
プラスワンの太陽石油も四国や傘下に入れた南西石油も沖縄の高市況で
高収益を上げているので、業界での存在感は、実シェアー以上あると思います。
NO2.  出光昭和シェル誕生+JXTGはENEOSマーク統一下での末端市況
JXと東燃ゼネラルの合併の時は、合併前から業転市場の需給バランスが
タイトになったので、個人的には今回の出光昭和シェルの合併時も大いに
期待をしました。また7月からは出光特約店と昭和シェル特約店の仕切り
価格体系が、統一されました。
更に7月までには、旧東燃ゼネラル系のEssoMobilゼネラルマークも、
皆ENEOSやENEJETに統一されたので、今一段の末端市況の改善を
期待したのですが、道半ばと言う感じです。
 12月現在でもGogoGSの東京都の安値ベスト20を見るとENEOSが6、
昭和シェルが6なので、昭和シェル系の安売り体質は残っているようです。

このようなお話をすると消費者の皆様には、お叱りを頂いてしまいそうですが、
ピークは6万あったSSが、今は3万SSと約半分になりました。しかし底を
打った感じはしません。確かに元売統合で石油部門全体としては、黒字に
こそなりましたが、再投資可能な利益水準には程遠い状況です。
現に弊社の南田無SSも計量器等設備故障が限界となり昨年3月でSSの
継続を断念しました。
またSS業界はエネルギーインフラの最後の砦と言われるようになりました。
実は、国もそして東京都からもこのSS減少をご心配を頂いております。

弊社としても業界としても、これ以上SS数を減らさなくてよいよう、消費者の
皆様のご理解を頂ければ幸いです。
NO3. 台風で証明された最後の砦
今年も50年に一度といわれるクラスの台風が二回も来ました。 
15号は千葉県で風の被害をもたらし、巨大な高圧鉄塔やゴルフ場のネットの
支柱が民家に倒れるなど被害が発生。この強風の二次的被害が2週間以上
にも亘る大規模停電が発生しました。この結果、ガソリンスタンドには、長蛇の
列が出来ましたが、その解消には停電終了までを要しました。
この15号の被害を教訓に、10月の19号襲来の時は、国や自治体はもちろん、
我々市民レベルでもかなりの緊張感を持って事前準備がなされたと思います。
 しかし19号は、ハリケーンカトリーナ並の巨大台風で、東日本全体を襲い、
河川の氾濫被害は、想像を超えるものでした。堤防の決壊を伴わない越水なら
まだしも、一級河川が広範囲かつ同時多発的に決壊したのは記憶にありません。
 そして本当に残念なのが80名もの死者の多くが自宅の1階や避難中に亡く
なられたことです。その他弊社の対応等は、11月企画の通りです。
NO4.サウジ石油施設がドローンと巡航ミサイルで攻撃される
9月14日、とんでもないニュースが入って来ました。サウジアラビアの原油施設が、
ドローンや巡航ミサイルの攻撃を受けたというのです。
被害はサウジ原油生産量の約半分の570万BDにも及び、それは世界の原油
生産量の約5%にもなります。40年前なら、恐らく石油パニックになっていても
おかしくなかったでしょう。
 犯行声明はイエメン反政府組織フーシ派から出されましたが、安価なプロペラ
式の無人偵察機のような形をしたドローンのみならず、巡航ミサイルの残骸も
発見されたこと。イエメンからの航続距離を考慮すると、米国やサウジは、
イランが関与していると指摘しました。しかしイランはこれを否定しています。
またサウジは、防空体制の強化の目的で米軍に駐留を要請し、米軍もこれを
受け入れました。また9月末までに生産を回復出来るとも発表しました。
NO5.原油価格高騰は数日のみ1ヶ月で元のレベルまで戻る
このサウジの石油施設攻撃のニュースを受け、原油価格はWTIで、それまでの
55ドル前後から一時63ドルに高騰しました。
 しかし値上がりしたのは数日のみ。その後は乱高下を繰り返しながらも今現在は
攻撃前の水準に落ち着いています。
 エネルギー資源輸入大国の日本としては喜ばしいことですが、何故ここまで
原油価格は安定しているのでしょうか。
 私見ですが、やはり米国のシェールオイルやシェールガス由来のNGLなどの
増産余力が非常に大きいことだと思います。
2018年米国の原油(昨今は原油に加えNGL含む)の生産量は約1100万BD
(前年比17%増)に達し、サウジやロシアを抜き世界一になりました。
原油こそ日本に輸入されていませんが、原油以上に中東依存度が高かった
LPGは既に米国産が50%以上となり、サウジのCP価格抑制に寄与しています。
NO6.消費税10%、SS業界の対応は
 10月1日より消費税が8%から10%に増税となりました。単価が150円ならば
約3円の値上げとなる訳ですが、少なくとも筆者の直営SSにおいては、仮需
なるものは、ほとんど発生しなかったように思います。
むしろ上記の台風前の10月10日や11日の方が、通常の倍位売れていたので、
満タンプラス一缶運動は、多少は浸透して来たと思います。
混乱が予想されたポイント還元問題ですが、筆者の属するJXTG系列SSでは、
申告したSS(会社)で、ENEOSカード等元売直系のクレジットカードを使用し、
ガソリン灯軽油のみしか還元されないことが、お客様にどのくらい浸透しているか
本当に心配だったのですが、いざ始まってみると、現場での一般クレジットカード等
をお出しになったお客様に、丁寧に説明したせいか、お陰様で大きな混乱は
避けられています。
NO7.京都アニメーション ガソリン放火殺人事件
ガソリンを使用した放火殺人事件としては、2001年5月、青森県弘前市で発生
した武富士弘前支店強盗放火殺人があり、犯人は4Lのガソリンをまき火をつけ
自身は金を取らずに逃走。5人の店員が焼死した痛ましい出来事でした。
 しかし本年7月18日に京都市伏見区の京都アニメーションでの放火殺人事件は、
事件直前に近くのセルフスタンドで、ガソリン二缶を発電機に使用するとして購入。
途中でバケツに移して手押し車で運び、現場に行って直ぐに火をつけたのです。
 死者は36人。これは放火事件として、更に殺人事件全体としても、戦後最も
被害者が多い事件となりました。
 当該SSは適法に販売していましたが、当局の指導で、SS業界はガソリン
携行缶への販売に際し、@本人確認、A目的確認、B販売記録簿の作成、
C不審者は警察に通報、この4項目を徹底することとなりました。これは、現
段階では指導ですが、今後法制化されていくこととなりそうです。

垣見油化のとしてのお願い方法は、こちらの通りです。
NO8.人手不足深刻化で最低時給も上昇の中、働き方改革スタート
 本年も相変わらずの人手不足が続きました。2018年度の求人倍率は1.62。
東京は2.13ですが、現場の苦労はこの程度の数字では表せません。やっと見つ
けたのが東京の職安別の求人倍率で、品川や飯田橋は8というレベルです。
 そんな中、実質的には労働時間を制約し各個人の年収も下げてしまう可能性
のある「働き方改革」が4月から始まりました。
 確かに人手不足の中、遵守は難しいかもしれませんが、法律ですので、24時間
営業や長時間営業を見直すなどして、総労働時間を厳守するとともに、有休は
本人が望まなくても取得してもらわなければいけません。そして最低時給も上昇
しました。運転免許や乙4手当などを考えると全体の嵩上げの検討も必要です。
NO9 都市ガス自由化 石油業界からはJXTGが挑戦 一定の成果か
 本年2月よりJXTGが、主に東京ガス販売エリアにおいて、電力に引き続き、
都市ガス事業にも参入しました。ENEOS電気や都市ガスの魅力はズバリ安い
ことでしょう。価格ドットコムなど各種の価格比較サイトで検索すると、ENEOS
都市ガスは、安値上位3番目以内にランクしています。
 では、ENEOSは電気や都市ガスを何故安く出来るのか。私見ですが、東京
電力は新規である都市ガスを安くすることは出来ても、電力単価の値引きは
即減益なるので下げられない。同様に東京ガスも電力は新規なので下げられても
ガスは即減益になるので下げられない。
 その反面ENEOSにとっては石油という基幹事業で利益を上げているので
電力都市ガスともに安く出来るのです。少なくともお客様には、この説明が
一番ご納得頂けるように思います。
No10 セルフSSは1万突破も、SS数はピーク6万の半分まで減少
 本年3月末、2018年度末の全国のSS数が、30070と発表されました。
正に過去のピークの1994年度末の60421から本当に半減してしまいました。
前年比はマイナス677で、昨年の減少数マイナス720や一昨年のマイナス
866からは、その減少数は少なくなってはいますが、残念ながら下げ止まった
という感じはありません。
 販売事業者数も14160社で前年比マイナス452社です。
セルフSS数の方は遂に大台を突破、10100で前年比プラス172となりました。
 SS過疎問題も ゼロは10市町村から9に減りましたが、全体としては312から
325まで増加してしまいました。
そして東京でも過疎は始まっています。甲州街道の環8交差点から皇居に至る
10数km。上り車線にはもうSSは一カ所もないのは余り知られていません。

緊急報告 JXTGホールディングス、JXTGと一体運営 社名もENEOSに

 以上10項目のニュースを書き終えた時、上記のニュースが入ってきました。
詳細はJXTGHD、https://ssl4.eir-parts.net/doc/5020/tdnet/1774304/00.pdf
私の第一印象は遂にという感じで時間の問題だと思っていました。その理由は

1 CIすなわちコーポレート・アイデンティティ的に申し上げれば、JXは、Japanの
Jと未来を表現するXを合わせたCIセンスにあふれる社名です。
 しかしTGは、東燃ゼネラルの頭文字表記で、そこにCIセンスはありません。
それを強引に結合したので、CIのプロからは、高い評価は得られないでしょう。
 現実的には、合併前交渉には決めるべき大切なことが沢山あるので、新社名は
じっくり時間をかけて検討する、だったと思います。

2 新社名を考える時、ブランドイメージに近い物がやはりベストです。
 業界外の一般の方に、JXTGですというよりは、ENEOSですの方が、その知名
度は圧倒的に高いのでこのENEOSを使用するのがベストかつローコストです。

3 実は子会社の社名では既に始まっていた。
 LP子会社で旧名、日本石油ガスは、ENEOSグローブになっています。
販売子会社もENEOSフロンティア他、多数。そして私の確信は、JXトレーディング
が、ENEOSトレーティングになった時です。よってあとは時間の問題でした。
 
 ホールディングス等、持ち株制がよいか意見の分かれるところですが、私は、
合併時など特殊な時以外は、事業会社と一体の方が、より消費者と近くなるので
良いと思います。株主も大切ですが、同等以上に大切なのは、消費者の中の
お客様であり、ENEOSファンだと思います。

番外編 + 弊社 + 私個人は

 水素や水素スタンドについては、規制緩和がようやく進み始めました。
これについては来年しっかりご報告したいと思います

11月の東京モーターショー2019でもある傾向をしっかり見て参りました。
これについては1月新年号で、自動車会社への提言をお話したいと思います。

会社のニュースとしては、8年ぶりに文京区で駒込SSオープンです。
他の特約店から引き継いだ中古案件ですが、吉祥寺並のポテンシャルがあるので
成功したらご報告します。

私個人としては東京都石商の副理事長就任です。
東京オリンピックを来年に控え、水素が急激に進み始めたので、組合内よりは、
東京都庁や東京都議会の先生。また資源エネルギー庁への説明等で忙殺中です。

そんな訳で多忙で講演数は少なくはなりましたが、群馬石商様での講演や青年部
の事業継承相談とその後の懇親会は本当に良い思い出です。

今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。