祝、出光昭和シェル誕生
 大中小+ワンの業界新秩序構築なるか
あなたは出光昭和シェル関連の番目のお客さまです

皆様もご承知の通り、本年4月1日に、新生「出光」通称「出光昭和シェル」が
誕生しました。少なくともシェアー30数%を誇る大元売が誕生した訳ですが、
元売の力が相対的により強力になる中、我々SS業界はどうしていけばよいのか。
今更聞けない何故合併しないかも含めて、今月はこの話題を解説します。
                     2019/4/1更新   文責 垣見裕司

3月19日に急に発表された 会社分割って何?

まず昨年12月18日に行われた両社それぞれの臨時株主総会で、株式交換
方式による経営統合他が承認されました。そして昭和シェル石油は2019年
3月27日に上場を廃止。その後昭シェル株1株に対し出光株0.41株を割り当て
株式交換を行い、4月1日付で昭和シェル石油を出光興産の完全子会社に
するというスキームです。

「登記上の社名は「出光興産」を今後も継続して使用する一方、事業上の
名称は「出光昭和シェル」を使う」との当初の発表でした。
 私はてっきり完全子会社化した上で、出光を存続会社として、合併すると
思っていましたが、その発表はいつまで立ってもありませんでした。
 そして3月19日にようやく発表されたのが、「会社分割方式」でした。

「会社分割により昭和シェルの資産、負債義務を出光興産に継承し、両社の
組織及び事業の一体化を図ることで、本経営統合を推進し、より一層の
シナジー創出を目指して参ります」がHPで発表された検討開始の目的です。

合併ではない理由は創業家への配慮か 新役員人事は対等な精神の象徴

当初、創業家の出光株の持ち株比率は33.92%ありましたが、出光が1200億円
の公募増資を行ったことで、26%まで低下しました。創業家も出光株を買い増し
したと聞いていますので、2018年12月末では推定28.5%でしょう。いずれにしろ
拒否権を失ってしまったことは間違いありません。

 仮に3月26日の両社の時価総額、出光約7800億円、昭和シェル約6200億円
で合併したとします。創業家が昭和シェル株を全く持ってないとすれば、単純
計算では、創業家の持ち株比率は、15%まで低下してしまいます。
これを回避するために、単純合併ではなく、会社分割の方法と、その他自己
株式の購入とその消却を行った(今後も行う?)のだと思います。

その対策として出光は自己株式を取得し、それを消却することで創業家の
持ち株比率は、23%くらいまで回復する(伊藤敏憲先生試算)とのことです。

一方、新たな出光興産の人事体制は、出光の月岡隆会長が代表権付き会長、
昭シェルの亀岡剛社長が代表権付き副会長に就き、取締役も出光と昭シェル
から2人ずつ出すなど、昭和シェルからみれば親会社になった出光興産の
ほぼ「対等な関係」を勝ちとった訳ですから、対等な精神の約束は、守られた
のではないかと思っています。

また新役員には、創業家からは名誉会長の出光昭介氏の長男、正和氏と
顧問弁護士が入る人事となっています。創業家としては、出光ブランドが
守られることが、合併条件だったでしょうし、今後も非常勤取締役として
それを社内から見守っていくことになるのだと思います。
経営統合後の新会社の目標は
新生、出光昭シェルは統合により、21年度には、従来の500億円から、共同
調達によるコスト削減や出荷基地の統廃合などの取り組みで100億円を
上乗せした600億円の収益改善を目指し、また21年度までの3年で合計
5000億円以上の純利益を稼ぎだすとしています。
また投資も5000億円規模で、高機能材や再生可能エネルギーなどに
1200億円を投じ、石油事業に頼る収益体質を改善してゆくとの方針です。

業界は大中小プラスワン体制

よくマスコミでは、業界2極プラスコスモ体制と言われています。でも私は大変
失礼かもしれませんが「大中小プラスワン体制」と申し上げたいと思います。
出光昭和シェルは確かに3割のシェアーを有し、これは確かに大きな数字です。
しかしその上にシェアー5割のJXTGというガリバー会社がいる以上、やはり
二極というよりは、大中との表現が近いと思います。
一方、シェアー約1割のコスモも「小」としての存在感は、しっかりあると思います。
JXTG誕生のお陰で業界の、特に業転市況や卸市況が改善し、5年以上前に
ささやかれていた、経営不安説は全く聞かなくなりましたのでコスモにとっても
好ましい環境変化だったでしょう。
更にプラスワンとさせて頂いた太陽石油も、本家の四国のみならず、傘下に
収めた南西石油も沖縄の高市況で確実な収益を上げているので、業界での
存在感はある意味シェアー以上あると思います。


それでも製品需要減は続く 元売各社の今後は

今後の予想ですが、卸市場に大量に製品を供給していた会社も、今後は適正
出荷を余儀なくされるでしょう。卸市場は、海外からの製品輸入価格との競争力
を有する範囲では、より適正化してくると思います。2年前のJXTG誕生の時は
4月からではなく、3月から業転市場への製品供給が絞られ価格も上昇しました。
本年4月現在は、輸入価格がそれ程高くないので、引き締まり感は今一ですが、
改善へ方向性は間違いないでしょう。
その一方長い目で見れば、全体の製品需要はやはり毎年3%減、ガソリンは、
少なくとも2%減は続くと思います。従って今の元売各社の高収益状態は、もし
何もしなければ、長く続くとは思えません。出光昭和シェルは勿論、先行した
JXTGも、合併前に予想されていた製油所の統廃合などが期待されるところです。
そしてコスモ石油はキグナス株の2割を有し、キグナスへの製品供給が約束されて
いますが、キグナスには三愛という8割の株を持つ大株主がいます。8割対2割
では勝負にならず「製品は主に御社から買いますよ」という決意表明とコスモへの
配慮ではないかと思います。

2018年末のSSシェアーgogoGSから見たSSシェアー 

では改めて現在のSS数のシェアーを抑えておきましょう。各元売のSS数は
各社のHPや業界新聞発表からの引用です。分母は、2018年3月末の
30741からの推定で3万としました。一般にJXTGのシェアーは50%と
言われていますが、SS数だけを見ると44%となっています。

そしてよりお客様に近いgogogsに登録されたSSシェアーも記してみました。
gogogsは単にSSの販売価格だけでなく時々面白いデータを出してくれます。
それは「ガソリン関連ニュース&お知らせ」ですが、例えば12月20日のコラム
では、同日現在の登録数として下記表の右2列の数が掲載されていました。
また2月25日のコラムでは、2月のガソリンスタンド情報まとめとして
(新規登録・店舗情報変更で≪ESSO・Mobil・ゼネラルのブランド変更≫
※2月変更分が掲載されていました。 ESSOからENEOS 100件  
MobilからENEOS 89件 ゼネラルからENEOS 16件  などとなっています。
ブランドの変更は、旧EMGのエクスプレスから、先行して行われましたが、
今は一般のフルサービスの塗り替えが着々と進んでいるのだと思います。

一番気になるマーク問題 当面は出光、昭和シェル併存

出光と昭和シェルの経営統合において、SS業界そして当事者である出光と
昭和シェルのSSの皆様にとっての最大の関心事はやはりマーク問題でしょう。
創業家への配慮から出光マークがなくなるとは思えませんので、シェルマークが
いつまで使えるのかが、昭和シェル関係者にとっての一番の関心事です。
先行したJXと東燃ゼネラルの時は、マスコミにすっぱ抜かれたのがきっかけかも
しれませんが、私にとっては想定外の早さで、エクスプレスはEenJetに変更され、
一般のフルサービスSSも粛々とENEOSマークに塗り替えられています。
先日とある会に参加した際、旧MobilLマークの社長が挨拶で「私はMobilマークで
長年SSをやってきましたが、今は頼みもしないのにオレンジ色に変りつつあります」
と冗談ぽくおっしゃっていました。
心から賛成はまだ出来ないが、かといって系列から離脱して反対も出来ない。
仮に離脱しても、もはや思い入れのあるMobilマークを上げる術もないので、
時の流れに身を任せるしかないかないのかなあというのが、本音のようでした。
その意味では、出光と昭和シェルの経営統合がもし2年早かったら、私は昭和
シェル系列の特約店は、ここまですんなり納得はしなかったと思います。
以前もご紹介した通り当初老舗昭和シェル経営者の本音は「昭和シェルが出光を
飲み込むなら分るがその逆などあり得ない」というものだったからです。
またこれは根拠のない私の予想ですが、JXTGが、傘下のSSをENEOSに統一した
時よりは、出光マークに統一する時は、丁寧にそして長い時間をかけるのではないか
と思います。しかしこれもJXTGの時と同じですが、本国のロイヤルダッチシェルが、
いつまでも貝印マークの使用を許可するとも思えませんので、自ずと限界ラインは
見えてくるでしょう。
融和が進んだ JXTG特約店とジュニア会
もう一つの課題は、両元売の特約店会の融和でしょう。JXTGの場合は、2年前、
元売の各支店長を初めとする幹部が、相当気を遣っていただいたお陰で、JXと
旧東燃特約店の融和は順調だったと思います。
特にJXTGの場合はその規模も口座数も多いので、プロパー特約店の若手二世
経営者で作る「ジュニア会」の存在も大きかったのではないかと思います。
ある意味血気盛んな年頃ですので、彼らの年代が本気になると、その特約店の
会社業績にも大きく影響すると思います。
そしてこのジュニア会が、海外研修旅行を実施しました。 私も経験がありますが、
海外で一緒に行動すると何か不思議と「同志感」が醸成され、その両マークの融和が
完成したのではないかと思います。私は若手会の定年過ぎていますが、OBとして
暖かく応援して行きたいと思います。
両元売の特約店店会も併存でスタート でも最後はお客様から評価でしょう
出光と昭和シェル経営統合においても、両元売の両特約店会が、上手く融和される
ことを同業者として望んでおります。私も全国各地の石商様から講演会の講師で
お招きを頂き、懇親会もあれば、参加させて頂いた時の印象ですが、両社の特約店
には若干の個性の違いがあると思います。私の勘違いかもしれませんが、出光は
1SSでも基本的には出光と直接契約する特約店が多いような気がしました。
 それに対して、昭和シェルの方は、地元では名士の老舗の大会社が多く、石油事業
以外にも例えば、車販売業や、飲食業、その他色々な事業を手広くやっている老舗
の大特約店が多いような印象を受けました。
この規模や個性の違いに基づくそれぞれのプライドを大切にしながら融和を図れば、
きっと上手く行くと思います。少なくとも最初は、出光会と昭和シェル会をそれぞれ
残して検討してゆくと聞いていますので、きっと上手く行くでしょう。
 そしてこれはどの元売かに限ったことではありませんが、各SSがそれぞれのお客様
から必要とされていれば、マークに関係なく生き残れると思います。逆に地域最安値を
提示しなれば、前年数量を大きく割ってしまうとすれば、それはもはや価格ではなく
接客サービスや運営方針のもの等を見直す必要に迫られているのかもしれません。