出光昭和シェルの経営統合 No3
 
創業家一転同意報道で前進か
あなたは出光昭和シェル関連の番目のお客さまです 2018/7/2 Ver3

2018年6月27日の日経Webや同日の日経夕刊に衝撃的な記事が掲載されました。
「出光・昭和シェル統合決着。創業家が一転同意へ」とのニュースです。
今月はこの話題を解説したいと思います。         文責 垣見裕司

報道の内容を要約すると

日経は
 出光と昭和シェルが2019年春に経営統合する見通しとなった
 両社は2015年に合併することで合意していたが、創業家に反対されていた
 今回創業家が一転賛成に転じたことで、経営統合が実現に向かう
 水面下では、出光と創業家の交渉は再開されていた。その内容は
  創業家の経営理念を守る。
  新会社に創業家から2名の取締役を受入れる。(昭介氏の長男他)
 統合の方式は、株式交換になるだろう。7月中旬に開く取締役会で合意へ
  6月26日時点の株価と時価総額なら、出光1 昭和シェル1.2となる。
その他は過去からの敬意や業界概略の説明等なので、本HPと以下要点
2016年11月企画2016年7月企画を参照して下さい。

2016年7月企画11月企画も含め、現在までの時系列的な事柄一覧

2014年12月 日経やNHKが最初の報道 出光が昭和シェル株を取得検討
    TOBで5000億規模か 当社HP 2014年12月
    出光は検討の事実のみ認める。昭和シェルは、年末年始にかけ
    昭和シェル特約店大反対を受け、この時点では否定
2015年07月 出光はRDシェルからの昭和シェル株の購入予定を発表
    RDシェルの子会社SPCOは、出光に昭和シェルの株式33.24%を売却する
    価格は1691億円。一株当たり1350円。7月30日終値1170円に対し15%増額
    売却時期は、公正取引委員会等の審査を経て 2016年上半期の予定
    出光は、昭和シェルに対し、対等の精神で経営統合を目指す。
2015年11月 出光と昭和シェル 株取得後の合併で基本合意
2015年12月 出光創業家は合併反対を出光経営陣に通達 
    両者での認識の差はまだ相当ある
2016年06月 創業家、出光株主総会では代理人が正式に反対表明
    但し、月岡社長他取締役選任案は辛くも可決 当社HP7月企画の通り
2016年07月 創業家と出光経営陣会談するも平行線。
    創業家が 昭和シェル株を市場から0.1%分取得。
    以降インサイダー規制を理由に両社の正式な会談は持たれていない
2016年09月 出光、当局の審査遅れを理由に株取得時期を当初の
    2016年上期から 2016年10-11月に延期するとの報道
2016年10月 出光昭和シェル経営陣 2017年4月の統合予定の延期発表
    但し具体的な時期は示さないものの2-3年の単位ではなく1年未満?
2016年12月 JXTGとともに公取承認。直後、出光は昭和シェル株式を31%取得
2017年7月 会社側が発行済に対して約3割1200億円の公募増資を発表
    創業家は「会社側の増資は議決権比率を下げるのが狙いで不公正」
    と、差し止め請求をするも訴えは棄却。7月20日に増資は実行。
    出光文化福祉財団7.75%、出光美術館5.0%、創業家21.17%も含め
    最大33.92%の持ち分が、増資後は約26%にまで低下した。
2017年12月 創業家が出光株の買い増しを発表。約28%として反対を継続
    200億円を借りるために1100万株を担保にした? 村上ファンドが資金提供?
2018年6月 村上氏ら投資ファンドの出光株保有が表面化(約1%?) 
    新聞によれば、創業家に合併を推奨 会社側との協議再開
6月28日の出光の株主総会はどうだったのか
では、6月28日に開かれた出光の株主総会は、どのような状況だったので
しょうか。出席した方のお話しをお伺いすることが出来ました。

会社側の説明は、「創業家との話し合いは再会している。前向きにも進んで
いる。しかしまだ発表段階ではない」とのこと。また創業家や物言う株主
として知られる「村上ファンド系」の株主からの質問はなかったようです。

また一般株主からは「お金がかかるTOBはやらないほうがいい」との意見が
出たそうですが、全体的には終始和やかな雰囲気の中、2時間で終了した
そうです。

この日の株主総会を冷静に分析すると、「報道された内容はほぼ事実。
そして今の交渉の現状を会社も創業家も、そして村上ファンドも容認している。
そして合併に向けて纏まってほしいと思っている」ということでしょう。

何故 創業家は 賛成に回ったのか ここからは私の勝手な推測です

一番大きいのは、今までは会社対創業家という直接対立から、今年に入って
報道が事実とすれば、村上氏という投資のプロの第三者が入ったことでしょう。
例えば創業家の理解が得られぬまま、強引に臨時総会を開いたとします。
一番喜ぶのは1-2%の外資や物言う株主です。出光としては、キャスティング
ボードを握られてしまう訳ですから、例えば増配とか推薦取締役の受入れ等の
要求に対処の必要が発生し、合併決議が成功しても、多大なる影響が出ます。

創業家も28%も所有にも拘わらず合併してしまったら、今までのような影響力を
示せなくなるのは必定なので、全面対決は両者とも避けたいところでしょう。

一方、もし統合決議が否決されてしまうと、出光の株価は、恐らく相当下がる
でしょう。それでも昭和シェルと合併するとなるとTOBしかありませんが、更に
多大なるコストがかかることになり、それは更なる出光株価の下落要因です。

そして株価下落で困るのは、会社、創業家、そして村上ファンドにとっても同じ
なので、村上氏が、創業家を説得したのではないでしょうか。

やはり結婚でも何でも、当事者とその弁護士どうしの対話だけでなく、第三者が
いると話は纏まりやすいと思います。

出光昭介名誉会長はまだ反対している?

しかし、色々な新聞やネット情報を見ていると別の報道もあるようです。
日経新聞には、書いてありませんが、その他の一部のマスコミ報道では
名誉会長の出光昭介氏は、未だに反対と表記しているものもありました。

長男は、取締役になるので賛成、次男は、昭介氏とともに反対などいう
記事もありました。少なくとも創業家が一枚岩でなくなり、一部でも賛成に
回ったすれば、出光側としては大幅な前進だと思います。

実は私、ロータリーの関係で 昨年と今年、出光昭介様ご本人にお会いして
名刺交換までさせて頂きました。中曽根康弘元首相にもお会いしたことが
あるので、中曽根様ご同様、ご高齢でも矍鑠(かくしゃく)とされ、あるべき
出光論を蕩蕩(とうとう)とお聞かせ頂けることを期待していたのですが、
残念ながらそれが叶うご体調ではなかったようです。



特約店が心配しているのはマーク問題

一連の出光と昭和シェル問題は、最初はというか本来は、出光と昭和シェル。
そして出光と系列特約店、昭和シェルと系列特約店の問題でした。
その当時、私が講演等で一番お聞きしたご意見は、「由緒があり老舗特約店
も多い昭和シェルの方」でしたが、「昭和シェルが出光を飲み込むなら分るが、
その逆などあり得ない」というもので、昭和シェル特約店の本音だったようです。
 しかし、2016年6月の株主総会で、出光と創業家が実は対立していることが
表面化したあとは、出光の特約店や、ましてや昭和シェルの特約店は、蚊帳の
外で、出光と創業家の対立の話に擦り替わってしまいました。

 しかしそれから丸2年。業界は大変革を遂げました。同時期に発表された
JXと東燃ゼネラルの合併話は順調に進み、2017年4月JXTGが誕生しました。
 そして東燃ゼネラル系特約店にとっては、その合併上に重要な、ENEOSへ
のマークへの統一が2017年7月に発表されてしまいました。そうなのです。
あの由緒ある Esso Mobil ゼネラルのマークが2019年3月までになくなって
しまうのです。実はJX系の特約店の私でさえ、3年くらいは併用使用される
と思っていたので、マークが残る我々旧JX系としても申し訳ないくらいです。

でも現実には、EMGの特約店さんもブランド統一を前向きに受け止めています。
先日も、マーク統一や双方の元売カード研修会に出て来ましたが、この期に
およんで、EMGのままが良かったなどという店主は、もう一人もいませんでした。

合併の原則は対等だったが、創業家の条件を飲むならマークは出光??

出光と昭和シェル経営統合は当初対等合併が基本方針でした。出光を
存続会社とした吸収合併ではなく、本社も新たな本社所在地にしてもいい。
そんな心遣いは、昭和シェル特約店の気持ちを配慮してのことでしょう。
しかし、現実として世界的に由緒のあるロイヤルダッチシェルは、事実上
日本から撤退しました。撤退をした外資マークに拘る必要はないでしょう。
そしてこの数年間、gogoGSを見る限り、安値看板は圧倒的に昭和シェルが
多くなってしまい、少なくとも高級ブランドというイメージは、お客様には
薄れてしまったのではないでしょうか。
そして相対論で言えば、前述のようにあのEsso Mobil ゼネラルの
マークが消えるのです。2017年5月企画で示した私の名刺風講演資料は、
大受けでした。そしたら旧共石の方からのオファーで是非、ブルーに赤ポチ
のマークも取り入れてくれ、また日本石油の方から、カルテックスマークや
コウモリマークを知らない若い業界人がいるので カル社も入れてくれとの
オファーを頂き、最近の講演では以下を使っています。そう今のENEOS
マークは、下記の12のマークの思いと遺伝子を受けついでいるのです。

一見全てを吸収してきた日本石油も血は流している
さてここまでは優等生的な説明をしてきましたが、旧東燃や、Jomo、遡れば
旧三菱系の方からも、三次会まで飲んで話や本音をお伺いすれば、全てを
飲み込んで来た「日本石油」が憎い、嫌いなんていう話も実はお伺いします。
それは特約店のみならず、元売の幹部社員様からもそんな話は聞きます。
私は、三次会までお付き合い出来ることは稀ですが、そんな時、私が説明
するのは下記の事実です。実は全てを飲み込んで来たように見える
「日本石油」も実はそれなりの血を流しているのです。

下記の日本地図をご覧下さい。これは2018年4月現在の国内の製油所の
配置図とその精製能力です。シェアー50%のJXTGは、仙台、根岸、川崎、
千葉、堺、和歌山、水島、麻里布、大分と9箇所の製油所をもっています。
では、この9箇所の内、旧「日本石油」系の製油所はいくつあると思いますか。
9箇所の半分弱として4か所?。講演で聞けば3〜4か所というイメージを
持つ方が多いのですが、現実的には「根岸」1か所だけなのです。
その根岸でさえ、いつぞや読売新聞の夕刊の1面で「撤退」と書かれた程
です。SS数がピークの6万から約半分の3万にまで減って、これからはEV
が徐々には浸透してくる訳ですから、もう考え方の基準を変えた方がよい
時期に来ているのかもしれません。(石油連盟HP発表図を筆者加工)