日本初 SS併設型水素スタンド見学記
 直近1年の水素スタンドの進捗状況等もご報告 
水素スタンド関連は、近未来自動車関連はの累計アクセスです。

昨年秋に、工事中の愛知県名古屋市の工事中の神の倉SSに、そして9月は日本で最初の
ガソリンスタンド併設型となったJXの海老名中央水素ステーションを見学させて頂きました。
更に10月某日には、水素スタンドビジネスモデル検討委員会の関連で、2015年販売開始予定
のいわゆる市販車タイプの燃料電池車に試乗させて頂ける予定です。また水素関連の規制
緩和に向けての取り組みもこの1年で随分進みましたので今月はこの水素スタンドの話です。

是非 2010年6月 2010年6月2010年7月2012年10月もお目通し下さい。2013/10/02 V2
Yahoo Google 検索サイト「水素スタンド」で 上位にヒット中 文責 垣見裕司

日本最初のSS併設水素スタンド JX海老名中央水素ステーションの概要は

@ 建設・運用 JX日鉱日石エネルギー  運営 ENEOSネット
   名 称 海老名中央 水素ステーション (水素直接納入の オフサイト型)
  (但し私はSS併設型の水素ステーションを水素スタンドと呼ぶことを提唱中)
A 特徴 SSの同一敷地内において、ガソリンや軽油等のアイランドに併設して
      水素充填機を設置出来たことが最大の特徴。現在国内に2カ所のみ
B 充填機   株式会社タツノ製 充填圧力 70MPa(700気圧) 対応
   充填方式  SAE TIR J2601と呼ばれる方法
C 充填時間 最大5kg/車1台を約3分。短時間で高圧水素充填が可能なのは
   プレクールというマイナス30-40度に事前冷却するシステムを採用した為
D 蓄圧器への充填能力  300Nm3/時 
      車1台最大5kg=約55m3 とすれば 毎時5台分の充填能力です。
E 蓄圧器   サムテック社製 80MPaからの差圧充填 12本 2100Nm3
      トレーラー同様「アルミ製のライナーをCFRPで強化したTypeV蓄圧器」
F 専用トレーラー 川崎重工製 貯蔵(運搬)容量 3000Nm3 圧力は45MPa
             材質は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP材)を使用
G 圧縮機   直接充填対応型 神戸製鋼製
H 冷凍機   前川製作所製
I SS敷地  面積は約3300m2  用途は 市街化調整区域
J 資格者  高圧ガス保安法の「丙種化学」が必要。液化石油ガス丙種化学は不可
         セルフは法的に当分無理。 ホースとガンはまだ重い。


コンパクトパッケージ型 と言っても まだまだ大きいというのが実感です

では 水素の搬入から 充填までの 流れで説明して行きましょう。
水素の搬入場所は、SSの整備室を一回り大きくした様なコンクリート部屋です。
本来は、水素トレーラー前部のトラクター部を除く、後部が収納されるのですが
当日は以前「杉並水素ステーション」で拝見した赤い水素ガードルタイプでした。
この水素タンクから、圧縮器を経て、写真下右の蓄圧器に水素が貯められます。
黒い蓄圧器の中心部には、カーボンファイバーで巻かれた跡が分かると思います。
圧縮機は、車を充填している右側の写真です。大きすぎて撮影スペースがない
狭い場所にコンパクトに収められているので、全体像を撮影するのは無理でした。



今回の見学で、自称水素オタクの私でも、初めて気が付いたことがありました。
赤いガードルなら 19.6MPa、水素トレーラーなら45MPaで持ちこまれた水素を
単に倍に加圧して充填すればよいと理解していましたが、それだと折角運んできた
水素を全部使えないのです。例えば、一杯に入れた風船の空気を、空気の入って
いない風船に移そうとして繋いでも、半分しか入らない例を想像してみて下さい。

 従って高圧で運んできた水素は、一度は20MPa程度のタンクに差圧だけで移し
残りは0.6MPa程度まで下がるのでより多くの運んできた水素を使用します。

充填機ノズルは、まだまだ重そう。 充填は資格者が行う。

充填機は、名古屋市神の倉で拝見したものより、一回り小さいような気がしました。
お伺いすれば、冷凍装置の小型化を実現したそうです。この充填機のお値段は?
とお伺いしたところ、実証実験という性格上予算の範囲内でやって頂いたそうです。
以前タツノさんの横浜のショールームで見学したときにお伺いしたときの値段とは
一桁違いました。技術革新で下がったのではなく、各メーカーとも近い将来の水素
社会実現のために、ご苦労して納入したようですが、関連各社の姿勢に深く敬意を
表します。そして右写真は、FCVに水素を充填している風景です。




気になる設置価格 と 2013年度設置予定数は

基本的に正式な価格は公表していないようなので、補助金事業ということから推定
してみました。水素ステーション補助事業では、2013年度において以下の補助金額
と1/2という補助率を下記のように設定していますのでズバリ倍にしてみました。
当たらずしも遠からずではないでしょう。個人的には、以前お話した岩谷さんが
輸入されるリンデ社等の簡易パッケージ型で1億円を切らないと、ビジネスとして
は難しいと思います。

規模 水素供給能力 供給方式 補助上限額 筆者推定金額
中規模 300Nm3以上 オンサイト 25000万円 約50000万円
オフサイト 19000万円 約38000万円
小規模 100以上300Nm3未満 オンサイト 16000万円 約32000万円
オフサイト 13000万円 約26000万円

尚、2013年度の採択決定数は19か所のようです。
首都圏で11(JX 8、東京ガス2、岩谷1) 中京圏で 6(JX 2、岩谷2、豊田通商2)
あとは、阪神1、福岡1ですが、いずれも岩谷産業なので、その気愛が分かります。

SSで水素を作るオンサイト SSに水素を運んでくるオフサイト 

水素スタンドビジネスにおいて、販売する水素をSSでどう作るか、持ってくるか
はある意味最大の課題です。都心部ならSSまで天然ガスが導管で来ているので
都市ガスのオンサイド型が有利でしょう。但し改質器が必要な分、上記表からも
わかる通り、建設費は約1億円くらい高くなりますが、運送費ゼロは魅力です。

一方石油精製業界としては、現在でもFCVにして約500万台分の水素製造能力
を有していると言われていますし、C6H12→C6H6+3H2 ベンゼンを作るとき
副産物のような水素もあるので、効率的かつローコストです。

JXでは、海老名ではオフサイトを、名古屋ではLPガスによるオンサイトの実証
実験をしています。今後は、どちらが主流になるか読者の皆様にも見極めて
頂きたいと思います。 以下はオンサイトとオフサイトのイメージ図です。





アベノミクス 成長戦略 第2-3段に 燃料電池自動車&水素スタンドの規制緩和

実は、水素社会推進者の中でしか知られていないのが、誠に残念ですが、安倍
総理から、2013/5/17と6/5に以下の発表があり、関係者一同大いに喜びました。

燃料電池自動車は、環境にやさしい革新的な自動車だが、水素タンクには
経産省の規制、国交省の規制。燃料を充てんするための水素スタンドには、
経産省の規制の他、消防関係の総務省の規制や、街づくり関係の国交省の
規制等、がんじがらめの規制の山。これを一挙に見直しする。

政府の規制改革会議は、水素スタンドの設置基準の見直し、燃料電池車など
世界最速普及を目指す。

過去を遡れば、家庭用燃料電池の規制緩和は、小泉決断で技術革新と同等以上
の速さで実現しました。従って 燃料電池自動車と水素スタンドの規制緩和も急速
に進むのではないかと期待しています。以下は水素スタンドのみ記載します。

次世代自動車の世界最速普及  例えば 水素スタンドだけでも以下の通りです。
a 液化水素スタンド基準の整備  高圧ガス保安法につき/消防法につき
b 水素スタンドの使用可能鋼材に係る性能基準の整備
c 水素スタンドに係る設計係数の低い特定設備、配管等の技術基準 
  適合手続の簡略化
d 第二種製造者に相当する小規模な圧縮水素スタンド基準の整備
  高圧ガス保安法につき/建築基準法につき
e 高圧ガス保安法における水電解機能を有する昇圧装置の位置付けの明確化
f 市街化調整区域への水素スタンド設置許可基準の設定
g 市街地に設置される水素スタンドにおける水素保有量の増加
h 水素トレーラーが運送に用いる高圧水素複合容器に係る 水素充てん、保管、
  移動時の上限温度の緩和
i 70MPa 水素スタンドに対応した技術上の基準や例示基準の整備

2020年の東京オリンピックに向けても 水素社会構築宣言 をしてはどうか

今の日本は原発汚染水問題等、福島原発の後処理で、重い空気となっています。
主たる責任者は東京電力ですが、その電気を使い続けて来た私や東京都民や
東京都には、何の責任もないのでしょうか。少なくとも道義的責任はあるでしょう。
もし福島県民の皆さんに、
「東京に原発を作れとは言わないが、せめて使用済核燃料保管プールをお台場
に作れ」と言われたら私は反論できません。 その代わりにせめて

東京都は原発にしないクリーンエネルギーの構築を世界に先駆けて実現します
 東日本大震災と原発事故から我々都民も多くを学ばなくてはいけません。
 福島や新潟の原発に依存し、結果として福島県民に多大なるご迷惑をおかけ
 したことに鑑み、 よりクリーンな水素エネルギー社会の構築を目指します。

と宣言してもよいのでしないでしょうか。これを心から反省しアピールし、そして
東京オリンピックが開催される2020年までに東京を世界に先駆け、水素社会都市
にしてはどうかと本気で思っています。
感想等はこちらから。尚、必ずお返事出来るとは限りませんのでご了承下さい