現在の石油業界は戦後最大の危機!
 オイルショックからの石油業界30年をデータで見る

 あなたは9月企画の 番目のお客様です。改めて申し上げるまでもなく
弊社6月企画どこまで上がるか原油価格 でご紹介した通りその価格はそろそろ上限?
という買い手側の期待をよそにいまだに上昇を続けております。産油国で戦争が
勃発した訳ではないので数量危機ではありませんが、価格的な値上げ幅は過去の
オイルショックに接近し、今の体力の弱まった石油業界にとって「戦後最大の危機」
と言っても過言ではなくなってきました。今月は過去3度のオイルショックも含め
石油業界の30年を成るべく多くのデータを通して振り返りたいと思います。

第1次オイルショック

時期と期間、1973年10月から1974年8月までの約1年
原因と状況、アラブVSイスラエルに端を発した第4次中東戦争、
    石油が武器となりイスラエル支援国に原油の輸出停止措置をとった
原油輸入量、73年度290,09万KLが74年度276,12万KLに約5%減少
価格上昇幅、FOBで10月の3$/Bから翌年1月に$11.6$/Bまで上昇、
輸入 CIF円、73年度8,329円/KLが74年度21,154円/KLに+12.8円/L上昇
市況上昇幅、ガソリン73年全国平均60円/Lが74年で90円+30円
内外の影響、価格決定権はメジャーからOPECへ移り世界的な景気低迷へ
    国内は物不足への懸念からトイレットペーパーなどの買いだめ
緊急対策等、政府は石油2法を制定、省エネを訴えるとともに、石油価格を
    事実上統制して灯油価格を押さえる一方ガソリンを値上げした
備蓄日数は、52日(73年3月末)67日(73年10月末)56日(74年3月末)
    ちなみに喜入備蓄基地は260万KLから60万KLに激減したとのこと
輸入額割合、国の総輸入額に占る石油関連額は74年度18兆円で35%、前年18%
中東依存度、77.5%、エネルギー石油依存度77.4%(73年度)

第2次オイルショック

時期と期間、1978年10月から1981年2月までの長期。
原因と状況、イラン革命とその後のイランイラク戦争
    イランからの輸出が一時止まる。その後回復するも1次より数量は危機
原油輸入量、27000万KL台(77−79年度)が81年度には22700万KLへ
価格上昇幅、13$/Bから79/6に18$/B、79/11に24$/Bの公式価格、スポットは40$/B
輸入 CIF円、78年度17,633円/KLが79年度33,526円/KLに+15.9円/L上昇
輸入 CIF円、80年度47,508円/KLが81年度52,432円/KLに+4.9円/L上昇
市況上昇幅、ガソリン78年全国平均100円/Lが、79年120円、80年145円
備蓄日数は、92日(78年12月末)88日(79年3月末)95日(80年3月末)
輸入額割合、石油関連は80年度139千億円で43%、78年度57千億円の34%から増加
中東依存度、75.9%、石油依存度、71.5%(79年度)

第3次?オイルショック、いわゆる湾岸危機

時期と期間、1990年8月から1991年2月まで比較的短期
原因と状況、イラク軍のクウェート侵攻により、一時中東湾岸諸国からの
    原油輸出が停止、終戦後もイラクからの輸出が制限された
原油輸入量、関連薄く89-90-91年度で207百万KL、240百万KL、223百万KLバブル他?
価格上昇幅、17$/Bから30$/B、スポットピークは37$にも
輸入 CIF円、89年度15,975円/KLが90年12月には27,574円/KLに+11.6円/L上昇
市況上昇幅、ガソリン90年8月全国122円/Lが90年11月138円へ+16円
備蓄日数は、144日(90年3月末)142日(91年3月末)ほとんど減らず
輸入額割合、石油関連の割合は90年度62千億円18.4%、前年15%から増
中東依存度、71.5%(90年度)石油依存度、58.3%(90年度)


本年3月以降の値上がり状況

時期と期間、1999年3月から
原因と状況、主要産油国間での協調減産の合意とその遵守、
    これを見た投機筋が原油先物市場等で買いに入り更に値上がりした
価格上昇幅、ドバイ原油で10$/Bが19$台/Bへ10$/B弱
輸入 CIF円、99年3月で8,467円/KLが99年8月には推定16,000円/KLで更に上昇中
市況上昇幅、ガソリン99年3月91円/Lが99年8月94円へ+3円、灯軽油で1-2円/L
備蓄日数は、164日(99年3月末)
輸入割合額、石油関連の割合は96年度50千億円12.6%
原油輸入量、25368万KL(98年度)
中東依存度、86.1%(98年度)、石油依存度、55.2%(96年度)

何故戦後最大の危機なのか

 では今回がなぜそれ程の危機なのでしょうか。数量はまず大丈夫。価格もFOB
での値上がり幅10$は第1次に匹敵しますが、当時と今の円レートの違いの
お蔭で、輸入円ベースでは約7円ですから問題は値上がり幅ではないのです。
 欧米では、ニューヨーク先物市場のWTIの値上げに敏感に反応し、末端市況も
じりじり値上がりを始めました。アメリカ西海岸では、製油所事故も手伝って、
税抜きでは倍になったところも有るほどです。
 一方日本はどうでしょう。過去3回は業界以前にマスコミが大々的に取り上げ、
政府も立法化し、国民全体の関心も高く市況も上がりました。それに対し今回は
マスコミの反応は極めて冷ややか、従って国民の皆様もその事実をご存じでは
ありません。勿論政府や当局も自由化や規制緩和の最中、業界や末端市況に関与
出来るはずもありません。その辺が石油業界内にとって戦後最大の危機なのです。

元売の経営に決定的な打撃が、 石油精製・販売元売の利益合計推移1972-98年度

 今、元売会社は、8月企画の通り、間違い無く赤字です。
もし末端への転嫁が遅れ仮に4円、業界が負担すると年間総販売量23000万KLとして
その金額は920億?いえ9200億円もの金額です。これは昨今特に弱まっている
一部の元売にとって結論が出てしまう程の数字です。しかし日本経済もヤミ上がり。
経済全体に占める石油業界の影響力も、その輸入金額割合以上に低いと言わざる得ず、
値上げに対し全業界的に協力取り付けるというのは、ちょっと無理がありそうです。
 しかしこのままですと強硬なる卸価格値上げを迫る元売と、市況が上がらず苦しむ
末端SSの間に挟まれた、特約店経営がまず急速に悪化するでしょう。
 しかしそれを今まで吸収して来た元売子会社にも余裕はなく、一部の元売にとって
もし卸価格の引き上げが進まなければ、それは経営危機を意味するのかもしれません。
 一方世界から見れば日本の石油市場はアメリカに次ぐ世界第2位の市場ですから、
まだ日本に本格進出していない勝ち残り組メジャーが、その弱った元売をただ同然で
買収する可能性がないとは言えません。そうなれば過去からも申し上げている通り、
イギリスのように外資対外資の戦争も始まれば、日本市場は更に混乱するでしょうし、
それは最終的に、決して日本全体の為にはならないでしょう。
 この様な個人的な心配が真夏の夜の夢で終わってくれるよう祈るとともに、HPの
読者の皆様には、現在の石油製品の価格は税別では国際水準に比べてかなり割安であ
ることをご認識頂くとともに、本来有るべき市況までの値上げにはご理解頂きます様
心からお願いお願い申し上げる次第です。1999/8/16 NO3 文責  垣見 裕司

1970-2000年、原油輸入価格、国内製品市況SS数表と30年間の主な出来事

 この表は大蔵省の原油通関統計や、通産省資源エネルギー庁から出しておられる
石油資料(A6版毎年8月頃発刊)をもとに、石油情報センターや経済調査会の
資料を参考に当社が作成しました。しかし一部、年と年度が混在していたり、
出所もとが異なっていたりしますので、あくまでひとつの目安としてお考え下さい。
更に原油輸入数量価格、海外SS数、精製販売元売の合計収支実績、精製稼働率、
製品別販売量の各30年間の推移データエクセル版(有料)はこちら