暴落する原油価格と国内ガソリン価格 一体どこまで下がるか
  新仕切体系後のSS業界を考える No2
あなたは、11月企画の番目のお客様です。10/31 更新時 4900件からスタート
今まで私のような一特約店経営者は、朝会社に来て、末端市況に異常はないか、業転価格は
許容範囲に収まっているかを確かめれば一日の仕事は始められたものでした。しかし今は、、
まずニューヨーク証券取引所の価格、円ドルレート、日経平均スタート価格という一般経済指標。
その後ようやく業界人としてのWTI価格、前日の中東ドバイオマーン価格、TOCOM原油とガソリン
そして海上業転価格(以下海RIM)と陸上業転価格(以下陸RIM)、そして直営SSの周辺市況と
昨日のガソリン販売と洗車等の売れ行き状況です。もはや世界経済から原油価格だけを切り離し
て見るのは無意味なように、一般経済の動向を見ずして石油業界もそしてSS業界も語れません。
その意味では、弊社が最も自信を持って毎月半日をかけて開催しいる所長会では、最初に
過去1ヶ月間に起こった時事問題について、色々議論しています。最初の30分の予定ですが
白熱して1時間になることもあります。その雰囲気も含めて今月は、世界経済への感想から、
国内のSS業界まで幅広く解説したいと思います。10月の新体系解説も合わせてご覧下さい。
月刊ガソリンスタンド様よりご依頼を頂き、10月より連載が復活しました。タイトルは、
「SS業界に願いを込めて」と題し、「毎月の業界ニュースの行間を読む」という趣向です。
11月号は「原油価格」について詳しく書かさせて頂きましたので合わせてご覧下さい。

アメリカ発の金融大混乱は、世界恐慌に発展する
アメリカ発の金融不安で世界中が大混乱です。実はHPでは発信しなかったのですが、
弊社社内の新年挨拶では、「アメリカや中国がとんでもないことになり、日本はこの影響
を受け大不況が来る」と申し上げました。しかし実際は、大不況ではなく「大恐慌」でした。

一般に言われるのは サブプライムローン問題です。本来収入の余りない人に住宅を
購入させる。最初は安い金利で夢をみせてあげるものの、支払えなくなったら家を売る。
しかし住宅価格がずっと上がっていたので、ローンを返して余りあるので破産せずまた
家を買う。しかし日本の常識で言えば、バブルを経験しているので、このようなことは
いつか破綻するのは、目に見えていました。

しかし本当に問題がこれだけなら、住宅ローン会社がつぶれるだけで、米金融機関に
少し影響が出るだけでしょう。では何故ここまで大恐慌と言われるまで被害が拡大した
のでしょうか。その問題の本質は、
 金融派生商品にしたことでありその変化を10倍にも100倍にもするレバレッジ
だと思います。本来ハイリターンはハイリスクなのですが、リスクの方は、細切れに
細分化し債権として商品化し、更にデパートの福袋の如くごちゃまぜにして、世界に
ばら撒いてしまったので、誰がババを掴んだか分からない。
確かに細切れにすれば、AさんBさんCさんDさんの内、Dさんはリストラされて失業した。
という個別リスクは分散化出来ますが、不動産価格全体が下がるなどという全体の
リスクには全く対応出来ないのです。
レバレッジの倍数制限くらいは即刻実施してもよいのではないか
しかし本当は後者のレバレッジ効果の方が遥かに深刻です。日本の常識から言えば、
3000万円で買って20年で住宅ローンを組んで、10年後にローンが払えなくなったしても、
実損はローン残高-不動産価値です。不動産の価値が半分に下がっても、1500万円。
10年は返したのでローン残高2000万円とすれば、金融機関の実損はまあ500万円です。
実際アメリカの住宅価格はまだ3割りくらいしか下がっていないそうなので、傷は浅いの
のですが、しかしこれがレバレッジで10倍にも100倍にも拡大しているのです。

最終的な結果だけをみれば、本来買う能力が無いのに家を買って破産し、今テントで
生活している人も被害者。その債権を買って大損した、例えば欧州の銀行も被害者。
しかし売り逃げて高収入を上げている人もいる訳で、公的資金すなわち税金は、その
勝者への100倍に膨らんだ配当を払い続けるために使われているようなものです。
話が少し飛躍しましたが、やはりおかしいでしょう。

一年前までなら、グローバル化と称して危険な金融派生商品でも 自由主義と大儀の元
何でも許されるばかりでなく、そのアメリカ式を押し付けられて来た訳ですが、まず米国
には、しっかり反省し、この責任を取って頂きたいものです。そしてバブルの経験から、
傷の浅かった日本が、今こそ「実業」に戻るべき時と思います。
日本株も売られ過ぎ、円高もむしろ歓迎すれば、今こそチャンスだ
世界の金融不安から ドル売りとなりましたが、いやユーロも危ないということで売られ、
結果消去法での円高だそうです。円高になると輸出が難しくなるので、「不景気になる」と
経済評論家等は解説しますが、アイスランドや韓国のように自国通貨を売られその価値が
半分等になり国家破綻まで心配されることを考えれば、はるかに有りがたいことです。
また日本の株式市場も売られ過ぎです。トヨタやパナソニック等輸出割合が大きい企業の
売り上げが落ち込むという話であり、米国の金融会社の様に、その損失が確定すら出来
ないような不透明な不良債権がある訳ではありません。読者の皆様も冷静に分析し、NHK
で放送された米国の原子力会社ウェスチンハウス社を買った東芝の如く「今こそチャンス」
の気持ちでこの激変を前向きに考えたいと思います。
暴落状態の原油価格
さてここからは、石油業界の話に移りたいと思います。
WTI価格は、11/5現在で60ドルまで下落しました。9月下旬の乱高下の時に、
「株式市場や債権市場から逃げだした投機資金は、先物市場の金や原油等手堅い商品に
戻って来るから上がる」という上昇派と「金融不安から全市場の信頼性が落ち、ヘッジ
ファンドも手元資金が必要。よって原油も下がる」という下降派に意見が分かれていましたが
今のところ後者に軍配が上がっています。
10/24のOPEC総会では、150万BDもの減産が発表されました。これはOPEC合計推定
生産量2880万BD(イラクインドネシア除く)に対して5%になりますし、推定世界生産量
8700万BD対比でも1.7%です。しかし、市場は折込済みなのか、総会後も続落です。


原油価格はどこまで下がるか
投機の世界のことなので、どこまで下がるか分かれば苦労はしませんが、やはり既に底値圏
には入っていると思います。その根拠として、産油国の国家財政の予算計画が、国にもより
ますが、大体70ドルから80ドルくらいを中心に計画されているとのことなので、長く70ドルを
割り込むようなら、結束の強くないOPECでも本気で減産してくるのではないかと思います。
もっとも過去の歴史でみれば、「OPECが減産発表しても価格が上がったためしがない」
という話も聞くので、ボトム価格としては、WTIで50ドルまではあるとは思います。でも50ドルは
正に底だと思います。先日ある講演会でトラックを多数保有する運送業界の経営者から
質問されましたが、WTIで60ドル以下なら、軽油等の月間使用量の半分くらいまで、先物で
買って、燃料コストを決定しても良いのではないかとお答えしました。(但し更に下がった
場合は、現物の仕入れは安くなっても先物で反対売買する時に損が出ますから、あくまでも
自己責任でお願いします。
暴落に近い日本国内のガソリン末端市況
現在のSS業界の末端価格は、暴落状態です。石油情報センターの毎週の調査によれば、
8/5の185.1円をピークに下がり始め、11/4の141円まで、僅か3ヶ月で44円もの暴落です。
しかし更に安いSSは沢山あり、130円台は、当たり前。弊社ガス部の隣にある、大手ホーム
センターは、10/28に突如129円に下げ、11/1には123円、更に11/4には119円に下げました。
11/4現在近隣市況は、130円前後なのに、何故ここまで下げるのでしょうか。要するに近隣
市況に関係なく、確たる販売方針と仕入価格に従って、粛々と価格を決めているなのです。
税抜きで117円、5円マージンとしてSS届け112円の仕入れなら不当廉売ではありません。
この価格が可能なのか、冷静に考えてみましょう。

      石油情報センター 毎週の調査価格(全国平均)  
ガソリン 8/4 8/11 8/18 8/25 9/1 9/8 9/16 9/22 9/29 10/6 10/13 10/20 10/27 11/4
価 格 185.1 184.4 183.2 181.7 176.2 174.5 173.0 171.5 170.2 164.7 161.6 157.4 151.3 141.0
下げ幅 ピーク -0.7 -1.9 -3.4 -8.9 -10.6 -12.1 -13.6 -14.9 -20.4 -23.5 -27.7 -33.8 -44.1
但し、一般に土地や人件費コストが高いと言われている東京都にある弊社直営SSでさえ、ピーク
184円から本日11/8現在 125円での販売を余儀なくされていますので 下げ幅は何と60円です。
WTI価格から東京の先物原油と先物ガソリンそして海上RIM価格まで連動
世界の原油価格を決めるのは、良し悪しに関わらずWTI原油であると先月ご説明しました。
それは中東のドバイ・オマーン価格に連動し、国内ではTOCOMの先物原油と先物ガソリン
もある幅をもって連動します。そしてTOCOMの先物ガソリンは、現物での受取も出来るので
取引形態が近い京浜の海上現物RIM価格(以下 海RIM)とも密接に連動します。それは、
物流機能をもつ元売や大手商社なら、例えばTOCOMで買って現物で受取り、海上現物品
として売ることが容易に出来るからです。 ちなみに従来RIM価格と言えば、海上でのバージ
(船)取引である海RIM価格を指していました。
従来は一致していた 海RIMと陸RIM価格
この海RIMに対し昨今の新仕切体系の基準とされているのが、製油所や1次2次基地
(油槽所)から出るタンクローリー出荷価格が陸上RIM価格(以下陸RIM)です。(ラックとは
出荷設備のことでローリーラックと呼ばれることもある)。この海と陸の違いは、受渡方法
(船かローリー)とその数量ロットの大小ですが、下記の4-9月の6ヶ月間を月平均では、
海RIMの方が需給バランスをより反映するので、値幅が大きいこと、両者の価格の反映
には多少タイムラグがあることなどの特徴はありますが、大きな差はありませんでした。
下記表は先物価格も加えた表です。4月価格とは最も期近物である5月限月価格です。
本来は毎月25日の翌限月品の受渡価格である納会日の終値だけで良かったのですが
新体系では日々の終値の平均値も参考にしているので、終値で月平均を算出しました。

単位円/L 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
陸RIM 79.3 83.9 91.4 98.8 93.5 89.7 70.0
海RIM 79.5 84.9 91.2 96.5 90.5 84.9 60.4
陸-海 -0.2 -1.0 +0.2 +2.3 +3.0 +4.8 +9.6
先物平均 79.2 86.4 92.4 95.7 86.1 79.0 55.1
先物納会 80.8 89.4 93.7 90.5 88.7 78.3 50.3
新体系の特徴とは何か
私は、1つ目は「市場価格(時価)連動」。その市場とは、末端市場からの逆算ではなく、
業転価格等の相場です。2つ目は月決めから「毎週改定」。そして3つ目が「数量インセン
ティブの明確化」。他にも計画数量とか色々ありますが、メインはこの3つだと思います。
その結果、商社でも一特約店でも、この体系に沿って厳格に決定するので
「元売による恣意的な差別価格はなくなる」とのことでした。 そして新日石は、この市場
価格をRIM社の陸RIMかTOCOMの先物か、両方の平均かの選択制にしました。
個人的な推定ですが、約7割の特約店が陸RIM、2割強が両方の平均、商社系を中心に
残りの約1割がTOCOMのみで契約したと思われます。但し陸RIMとTOCOMどちらを
選んだとしても一定の価格帯の中で収めるプライスバントが設定されています。
気になる下限価格は、その週に到着する予想原油CIF価格+アルファです。要するに
約1ヶ月前に「時価」で買った原油が、船旅を経て日本に到着した時の輸入通関価格です。
1ヶ月間相場に変化がなれば、時価のままですが、もし原油が急落した時は、含み損を
抱えた購入価格になってしまい、もはや「時価」ではありません。
一方出光は、「TOCOMリンクは最終的な目標ではあるが、まだ取引量も少なく時期尚早
と思われるので当面はRIM価格のみでスタートする」とコメントしています。11月から始める
Jomoも京浜と阪神の海上RIMの平均ですが、従来方式との選択方式で、TOCOMは
入っていないようです。
想定外の原油価格の下落で新体系の問題点がはやくも浮き彫りに
この新体系は、陸RIMかTOCOMか、どちらを選んだかという「運」だけで、SSの粗利に
匹敵するような価格差が、最初の10月第一週目から発生する異常事態となりました。
更に少数派ではありますがTOCOM選択組は、めったにないはずの「下限価格の適用」
という波乱のスタートです。これが「新仕切体系の健全な決定方式」とは思えませんが、
何故このようなことが起きたのでしょうか。

税込円/L 9月4週 10月1週 2週 3週 4週 5週
陸RIM平均 142.6 140.5 134.9 127.0 118.4 111.3
海RIM平均 139.5 133.5 124.8 113.6 111.4 105.3
先物平均 133.1 128.3 118.6 109.8 104.4 100.2
陸-海格差 +3.1 +7.0 +10.1 +13.4 +7.0 +6.0
陸-先物差 +9.5 +12.2 +16.3 +17.2 +14.0 +11.1

まず陸RIMと海RIMのそして先物価格を今度は週毎比較表にしました。9月最終週の
陸RIMの142.6円は、一応適価ですし、海陸格差もこの程度ですから許容範囲です。
これに対し、WTIの大幅下落に引っ張られた先物価格は、突出安となり、陸RIMと先物は
9円という大幅な格差となりました。 10月第1週も下げは続き、2週以降もその差は、
拡大するばかり。第4週に入り、やっと高値在庫がはけたのでしょうか。陸RIMも前週比
9円近く下げるという大幅下落で、海陸格差は7円に縮まりましたが、それでも先物との
格差は、縮小しません。その結果TOCOM採用組は、前述で説明したプライスバンドの
下限価格です。よってこの格差が丸々仕切差とはなりませんが、やはり異常状態です。
では何故元売はTOCOMで先物ガソリンを買って価格を正常化させなかったのでしょうか。
一つは、新体系開始早々、価格形成に意図的に介入していると思われたくないという
コンプライアンス上の問題。そして連動性のその答えは以下2つ目の項目に答えが
あるように思います。
気になる11月限月の受渡数量は
その安値価格ばかりが注目されてしまう先物ですが、10月24日の取引終了日に清算
されず残った数量が、11月に現物として取引される訳ですが、その数量はTOCOMで
813枚x50kl=40650kl 、中部C-COMでも3218枚。中部の単位は、x10KLですから32180KL。
前月企画でも申し上げた通り日本のガソリン月間需要は500万KL弱ですから、それぞれ
1%にもなりません。 プライベートブランドSS等が、中部商品取引所(通称C−COM)の
先物市場で買った製品を現物として受け入れるような環境があれば、10/24の終値 50円に
ガソリン税を加えた104円+運賃で、11月1日以降末日までにガソリン受け取ることが出来
ますが、全体としては、先物数量は、ごく僅かなのです。
では元売何故TOCOM等のガソリンを買って価格を正常化させなかったのでしょうか。
末端価格暴落の真の犯人は 新体系ではなく海RIM価格の暴落ではないか
こう考えてみると私は新体系の週決め方式が末端価格暴落の要因とは思えなくなりました。
むしろ犯人は「海上RIMの暴落」でしょう。先物の場合、価格だけ一人歩きしますが、
海RIMの場合は、価格だけでなく大量の現物製品を伴います。商社等が引き受ければ、
数日後には、4-5円乗せた価格で末端SSに届けられるでしょう。冒頭の例で申し上げた
大手HCが周辺価格が135円前後で販売するのにも関わらず123円に下げたことも、この
海RIMからするとおかしくないのです。要するに想定外の海外原油安に想定外の需要減。
そして製油所の定修明けが重なり、慢性的にだぶついていた業転市場が一気に下落。
その意味では元売の責任の範疇ではありますが、冷静に考えれば、今回の末端の
暴落の主因は新体系ではなく、この海RIMの暴落すなわち需給調整の失敗でしょう。
では何故需給調整に失敗したのでしょうか。それはやはり想定外の需要収縮です。
以下、過去7ヶ月のガソリン販売数量と前年対比伸び率を掲載しました。
更に各月末の在庫数量を並べると、見えてくるものがあると思います。

年度/月 07年度 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
ガソリン万KL 5908 446 577 461 440 486 469 477 468
前年比% 97.5 86.0 117.3 94.5 91.1 93.2 86.0 91.2 93.0
在庫量 万KL 252 213 235 210 200 230 206 219
前年比% 111.5 98.7 109.6 108.3 110.3 113.1 115.2 117.6
需給を絞ったら海RIM価格は上がるか WTI→TOCOM原油&ガソリン VS 現物価格
では、元売が原油処理を意図的に極端に絞り、また元売間の調整が成功し、それが
数ヶ月維持されたとしたら、経済原則から言えば海RIM価格は上がります。
その一方、WTI価格からTOCOM原油とガソリンはそして裁定取引でガソリン現物の海RIM
まで連動すると申し上げてきましたが、これは一体どちらの影響を受けるのでしょうか。
実は、日本のガソリンのスペックは、世界最高水準のサルファーフリーであり、製品輸入は
まずありえません。もしTOCOMの原油までは、WTIに連動しそうなことは、想像出来ますが、
一体どうなるのでしょうか。元売各社は大幅減産を発表していますので、この辺も今後注目
して行きたいと思います。
新体系の実施が来年だったら末端の暴落は回避されていたのか
答えはNOです。もし実施されていなかったら大手HC等の異業種系や毎週タイムリーな
価格で業転を仕入れられるプライベートブランドや或いは商社系の一人勝ちだったでしょう。
逆に今までは市況下落に即追随して来た広域超大手特約店が、今回は実に慎重な姿勢で
追随しているように思います。これは新体系を実施した元売が、不透明な値引きする余裕は
既になく、粛々と新体系を実行していることの現れでしょう。一方まだ様子見をしている元売
の中小特約店からは、高い仕切価格情報を聞く反面、元売子会社系や交渉力のある大手
有力特約店が、積極的に安値追随している姿を見ると、系列内の不透明な卸格差は、
まだ続いているのではないかと疑いたくなります。
大幅に下落した元売の決算予想は
7月までは、超安値と思われていた広域超大手特約店の納入価格は、輸入原油CIF価格
+12円のレベルから+15円くらいまで、頑張って上げてきたと聞いていましたが、今の卸
価格は、到着ベースの推定原油CIF価格から、せいぜい+6円程度。これでは、元売の
経営もなりたたないでしょう。 また今回の体系には実は根本的な問題があります。
それは「売値だけを時価にした」ということです。もし「仕入れも時価」すなわちTOCOMの
中東原油価格で仕入れられるのなら、TOCOM原油価格とガソリン価格の値幅が精製
メーカーとしてのマージンを確保出来ます。しかしガソリンと違ってTOCOM原油は現物で
仕入れることが出来ません。この対策としては、元売が現物の原油を買う時に、同量を
先物で売り、原油到着時に買い戻せば、期間変動リスクは回避出来ます。
今回の新体系では、あれだけ大騒ぎをして売値を時価にしたので、私は7月以降か、
少なくと遅くとも10月以降は、この期間リスク回避はしているのかと思いましたが、その
ような話は聞こえてきません。この下落傾向時の期間リスクの影響がどのくらいあった
か不明ですが、10月下旬に発表された各元売の3月末決算予想は大幅下方修正です。
JALやANAは、ちゃんとリスクヘッジしているようですし、その方が、株主やアナリストの
評価も高いそうです。一部上場企業として「価格下落局面では儲からない」では済まされ
ません。この期間変動リスクは、90日分ある民間備蓄の在庫評価益や評価損とは、少し
違う問題だと思いますが読者の皆様は如何お考えでしょうか。
「魅力あるSS業界」にための「生みの苦しみ」であることを祈ります NO2
昨今のSS業界は、間違いなく大激変です。原油暴落と市況暴落と週決めの新体系が
重なり、自由化の10年分の変化が、来年3月までの半年間に一気に来ていると言っても
過言ではないでしょう。 更に価格下落時は、130円の売価で150円の時の仕入代金を
払うので運転資金もショートします。残念ながら年末年始には廃業SSも増えるでしょう。
4月の暫定税率の時、テレビが持てはやした青森の大手PBの倒産は、急激に店舗数を
拡大した薄利多売式のPB経営が、如何に苦しいか物語っています。逆にもしあの会社の
倒産が半年先だったら、地道にやって来た中小の地場SSが先に倒産していたかもしれ
ません。また今回の倒産の最大の特徴は、業界内業者への支払不能だけではなく、
プリカや灯油の前売券の大量発行でお客様に多大なるご迷惑をおかけしていることです。
消費者にまで被害が及ぶなら、その手前で、政治や行政が介入する必要もあるでしょう。

今月の結論もやはり同じです。今回の新体系が原油価格の暴落と重なり、市場の安値
競争を激化させ「誰も儲からないSS業界」になるのではなく、恣意的な差別のない卸価格
体系が確立し、価格競争ではなくサービス業に一番大切なCS等での本当の競争が
出来る「魅力あるSS業界」になるための「生みの苦しみ」であることを願っています。
(RIM社のご配慮でデータ提供とその掲載にお許しを頂きました。深く御礼申し上げます)


2008年10月31日 11/8更新 文責 垣見裕司 ご意見ご要望ご感想はこちらから Ver3