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バイオガソリン販売開始 その意義を冷静に分析してみたいと思います |
Jomo荻窪SS 訪問記 発売開始当日の4月27日に、一ユーザーとして自宅近くのJomo荻窪SSに行ってきました。
このSSはマスコミ公開用の指定SSなので、報道陣らしき方が沢山いらっしゃいました。
概観写真の通り、沢山の告知ツールで、バイオ燃料を取り扱っていることが十分に分かります。
少々意地悪質問にも完璧にお答え頂きましたこのSSは、セルフなのですが、係員さんがいらっしゃいましたので、計量器前に止めて、少し
質問をしてみました。
質問1、バイオガソリンって、エンジンに悪影響はありませんか?、
答え 「はい問題ありません。日本工業規格(JIS)及び品質確保法に基づいたガソリンです
ので安心してお使い頂けます」と言い切って頂けましたので一般の方も不安はないでしょう。
質問2、バイオガソリンっていうのは、全量バイオガソリンなのですか?
答え 「バイオエタノール3%分と石油ガス4%分を合成したETBEが7%配合されています」
質問3、今日入れたバイオガソリンで走る車の炭酸ガスは、京都議定書的には、ゼロカウント
(カーボンフリー)扱いになるって聞いたんですけど、全量ですか。それとも7%ですか。
この辺となると少し意地悪質問なのですが、奥の責任者らしき人に聞きに行ってから
答え お買い上げ頂いたガソリンにETBEが7%入っており、バイオエタノール割合は3%なので
カーボンフリー分は、3%分だそうです。
さすがマスコミ対応用SSに選定されただけで、完璧な受け答えでした。
どこのどんなSSで販売されているのか販売地域は、東京、神奈川、千葉、埼玉、の1都3県です。首都圏という理由は、出荷施設が、
今のところ新日本石油の根岸製油所のみなので、ここからのローリー直送圏内と考えて頂け
れば良いでしょう。
元売別には、エネオス12、EM10、出光7、昭和シェル7、コスモ石油6、Jomo5、の他、九州石油、
太陽石油、三井石油の各1箇所で、9系列となっており、PBは含まれていません。
ここまでは、単に元売の販売シェアーに即した数字なのですが、次の二つの数字は、非常に
大きな事を物語っています。
まずは、今回の50SSは土地建物は、上下全て元売が所有する元売社有物件割合が、100%
という数字です。(内元売子会社運営が39SS)。もう一つは、50SSのうち、何と43SSがセルフで
フルサービスはたったの7箇所しかないと言う事です。先ほどの元売シェアーはそこそこ実態に
近いのに何故セルフ率はこんな高いのでしょうか。
それは、地下のガソリンタンクが、二重殻になっているSSを選ぶ必要があり、それは、最近の
新設か大改造物件しかない訳で、結果的にその大半が、セルフSSであった。とご説明すれば
ご納得が頂けるものと思います。
テレビではあまり伝えられていない 「流通実証事業」であることさて今回のマスコミ報道で多いのが、「バイオ時代の幕開け」等のキャッチコピーです。決して
間違いではありませんが、あくまで「実証試験」なのです。正式には経済産業省の「平成19年度
バイオマス由来燃料導入事業」の補助事業としてバイオETBEを配合したレギュラーガソリン
「バイオガソリン」の販売(流通実証事業)をするというものです。
その目的は、ETBEを広く知ってもらうことや、ETBEを混合したガソリンが、既存の設備でも問題
なく、そして安全に使えることを、正に実証することでしょう。
従って、事実上タンクからガソリンが漏洩しない二重殻タンクを既に設置したSSを選別し、更に
安全を確保するために、万一漏洩しても早期対応が出来るよう、注入口付近にそれを検知
する土中センサーや臭気センサーを、今回のために新たに設置したとのことです。
この土中センサーや臭気センサー、更に土間のコーティング等の設備投資費用は、平均
数百万円単位でかかるとのことですが、今回の実証試験では、この臭気センサー等の投資
費用の約半分が、国からの補助金でカバーされているそうです。
実証試験は2年間行われ、1年目は、1都3県で供給し、安全を確かめ、そして2年は、更に
関東地区で50箇所を追加、全部で100箇所での販売に拡大する予定とのことです。
しかしこの2年目で注目されるのは、追加される50箇所は、二重殻タンクではなく、普通のタンク
でも、土中センサーを設置したSSであれば、販売が可能になるかもしれないということです。
もしタンクの入れ替え費用は必要ないなら、改装費用が、数千万円単位ではなく、前述の通り
数百万の単位となるので、この1年が無事経過することを、一SS業者として願っております。
国内ではまだ製造出来ないETBE1月企画でご説明したとおり、「ETBEは、バイオエタノールと石油ガスを異性化させたイソブテン
を反応させて作ります」と言えば簡単そうですが、実は国内にはこの製造装置がありません。
また、現在のところ国産のバイオエタノールも微量です。従って、ETBEやバイオエタノールを
輸入するため、元売各社が共同で「バイオマス燃料供給有限責任事業組合」を設立、その
第1船が、フランス地中海岸の港を出港、スエズ運河を通り4月6日、はるばる日本にやって
きました。その数量、あえて表現させて頂きますが、僅か 7800KLです。
この貴重なETBEが、新日本石油精製の根岸製油所に陸揚げされました。
そして、ガソリンに約7%配合しそれぞれの元売各社のマークのローリーで出荷されていきます。
記念すべき4月26日は、石油業界の元売の重鎮が集まって出荷式を行ったそうです。
今後の計画としては、2008年度に100SSに拡大されるのを期に、国内での生産体制を
整備し、2009年度の移行期を経て、そして2010年度には1000SSの全国展開を図り、
ETBE換算で84万KL、バイオエタノール換算で36万KLの販売を目指す事になります。
概算数量シミュレーション
1SSあたりの月間推定販売量を仮に300KLとし、ハイオク比率20%とするとレギュラーは240KL
仮にETBEの配合率を7%とすると 16.8KL/SS月。全部で50SSだから月間必要量は約 840KL
今回の輸入量 7800KL ÷ 840 KL = 約 9ヶ月分 の在庫と計算することが出来ます。
次の課題は、コストかETBE方式のバイオガソリンの本格普及を考えると時、やはり一番問題となるのが、その
コストでしょう。当たり前の話ですが、今回のETBEの輸入コストは、発表されていません。
前述の通りフランスから、元売レベルで考えれば非常に少ない量を輸入したこと、そして
9ヶ月も専用タンクで寝かせなければならない、総合コストを考えると、全くの推定ですが、
今回輸入したETBEは、通常のガソリン基材やオクタン価向上剤よりは、非常に高く、
関税や揮発油税課税前で恐らく100円/Lを超えるのではないかと想像しています。
一方売値は、通常のレギュラーガソリンと同じに設定されています。私はETBEにはオクタン
価向上性能があるので、元売としてもそのコストUP分を吸収し易い、ハイオクガソリンに配合
するのかと想像していましたが、諸事情を加味して、レギュラー仕様ガソリンでのスタートに
なったようです。しかし国内としてのコストの問題は、それこそ国が本気でやろうとするなら、
ETBE分は揮発油税を免除する等の法律を作れば対応は可能です。
実は、私が本当に心配するのは、バイオエタノールを輸入に頼る国際的な問題です。
高騰したシカゴコーン価格 (下記グラフは、オーバルネクスト様資料より)
上記グラフをご覧下さい。これはアメリカはシカゴの先物市場でのコーン価格です。
あくまで先物の価格ではありますが、2005年の7月に260ドルまで上昇したものの、それ以外は
200ドル程度に落ち着いていました。しかし、日本でバイオエタノール等の議論が白熱したのと
時を同じくして、コーン価格は上昇を始め、2007年に入ってからは一時、400ドルを突破する
という荒っぽい動きを見せています。とある団体での友人である国際政治経済評論家の
「浜田和幸先生」にお伺いしたところ、「日本のバイオガソリンの実証試験開始発表が、その
きっかけや高騰要因ではない」とのコメントを頂きましたので、あくまで投機筋の先物買いだ
とは思いますが、価格が大幅上昇したのは事実なので、頭の痛い問題です。
更にブラジル等生産者の側も、コーンが儲かるということで、増産して頂けるのは非常に嬉しい
のですが、現在CO2を吸収している森林や熱帯雨林を何と切り開いて、コーンを作り、結果的に
環境破壊をしているという本末転倒な事例もあるとお伺いし、非常に心が痛みます。
とうもろこし価格が倍になると世界的には食料問題ではないのか米国の大学では銃の乱射により30人以上の尊い命が奪われました。これは誠に痛ましい
事件で心からお悔やみ申し上げたいと思います。このアメリカで30人亡くなったニュースは
世界を駆け巡りますが、世界では、1ドル以下での生活を余儀なくされる所謂、極貧困の人が
アフリカやアジアを中心に、2001年時点で何と10億人以上もいると言われています。
そして何と一日1000人以上が、貧困で餓死したり、貧困に起因する不衛生な水等の要因で
病死したりしていますが、これらは、国際貢献等の特集でもないかぎりそのような問題が
あることすら報道されません。その彼らにとっては、とうもろこしは、貴重な食料です。
そのとうもろこし価格が、先進国のバイオマスエネルギーがクローズUPされただけで、或いは
日本がその取り組みを発表したのが、多少なりとも影響して2倍に上昇したとすれば、彼らに
とって買える食料としてのコーンは半分になってしまいます。
環境問題も非常に大切なことです。しかし、10年後の温暖化防止のために、とうもろこし
価格が急騰し、極貧の方々の餓死者が更に増えるようなことはあってはならないと思います。
また貴重な森林を伐採して、とうもろこし畑を作っているという現実を漏れ聞くと心が痛みます。
その意味では、3%のバイオエタノールを含む7%のETBEを使うよりは、省エネや環境意識の
徹底や「もったいない」の精神で、総需要を3%節約することの方が、地球に遥かに優しいのです。
以上は、業界人というより一地球人としての私見ですが、読者の皆様は如何お考えでしょうか。
数値参考資料 新聞等に出てくる色々な目標数値を改めて紹介します1.政府が2005年の閣議で決めた「京都議定書目標達成計画」は、2010年度までに輸送用
燃料にバイオマス燃料を「原油換算」で50万KLを導入する目標を決めました。
2.この50万KLに対し、石油業界には、21万KLの導入要請が来て、業界もこれを受諾しました。
3.日本のガソリン総需要を6000万KL、その20%(ハイオク比率相当)に、(オクタン価向上剤として)
3%相当のエタノール36万KL(但し原油換算では21万KL)を導入する、という想定です。
4.エタノールの導入方法としては、ETBE方式とし、これは、イソブテンとエタノールを3:4で反応
させるので、ETBEの量としては 36÷3 X 7 = 84万KL が必要となります。
ここから先はあくまで私見ですが、石油業界に課せられた21万KLは目処が立ちましたが、
その他の、29万KLはどうなっているのでしょうか。私が調べた範囲では、以下の通りです。
5.沖縄の宮古島の地産地消プロジェクトは、島内で消費するガソリンすべてがE3ですが
島内の絶対需要が、年間24000KLに過ぎず、3%の混入なら、720KLです。
6.環境省が、大阪府堺市で進める建設廃木材を原料に進める燃料用エタノールの製造
プラントの能力も、年間1400KLと聞いています。
1月企画の通り地産地消プロジェクトは大賛成ですが、数量的にはこの程度でしょう。
従って、政府は石油業界に、2010年度の導入目標数量の拡大を求めてくるのは、明らか
でしょう。石油業界は、一体どうするのでしょうか。
私見ですが、この時こそ、あの揮発油税の一般財源化を含めた税制の抜本的解決が見えて
来るような気がします。