ガソリン需要は、いよいよ減退か
自動車登録台数&新車販売データから11月市況まで
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先日、日本自動車販売協会連合会から2006年4-9月期の新車販売台数が発表されました。
一方国土交通省からも、本年7月末現在の自動車登録台数(保有台数等)が発表されました。
この二つのことから一体何が分るのか。今月はこれらのデータ等から分析する今後のガソリン需要
ガソリン業転市場、そしてガソリン11月の末端市況等のガソリン市場を取り巻く環境全体を考えて
みたいと思います。 文責 垣見裕司 2006-10-30 Ver1 2007-1-12更新Ver2

2006年4-9月期の新車販売台数から分ること
(1-12月データに更新)
先月2006年1-12月期の新車販売台数が、日本自動車販売協会連合会から発表されました。
SS業界のデータは、一応注視しておりますが、その需要の源であるはずの自動車販売の方に
うとかったのは大反省でしたが、今回その実態を見て唖然としました。それは、軽自動車(660cc)
とそれ以上の登録車を合わせた上位販売10車種の内、6車種が軽という驚くべき事実でした。

 
1-12月登録車と軽自動車の新車販売ベスト10 過去10年間の登録車・軽自動車の新車販売推移(一部推定)
順位 車名 メーカー 台数 前年比 西暦 登録車 前年比 軽自動車 前年比 合  計 前年比
1 ワゴンR スズキ 221,066 -6.6% 1997 5,561,608 107.6 1,726,352 103.8 7,287,960 105.7
2 ムーブ ダイハツ 184,983 -9.6% 1998 4,747,089 85.4 1,527,939 88.5 6,275,028 86.1
3 カローラ トヨタ 143,176 -4.4% 1999 4,213,480 88.8 1,653,302 108.2 5,866,782 93.5
4 ヴィッツ トヨタ 117,641 -12.0% 2000 3,980,658 94.5 1,901,333 115.0 5,881,991 100.3
5 アルト スズキ 113,341 -22.9% 2001 4,119,274 103.5 1,854,165 97.5 5,973,439 101.6
6 タント ダイハツ 106,428 +15.6% 2002 3,979,834 96.6 1,839,033 99.2 5,818,867 97.4
7 ライフ ホンダ 105,506 -19.5% 2003 4,043,464 101.6 1,820,196 99.0 5,863,660 100.8
8 フィット トヨタ 101,793 -19.1% 2004 4,029,315 99.7 1,857,697 102.1 5,887,012 100.3
9 エスティマ トヨタ 95,626 172.4% 2005 3,939,733 99.4 1,880,669 101.2 5,820,402 99.0
10 ミラ ダイハツ 81,375 -32.9% 2006 3,913,183 99.3 1,948,247 103.6 5,861,430 100.7

上記表の通り、1位はスズキワゴンRで221千台。2位がダイハツムーブで185千台。そして
5位、6位、7位、10位がすべて軽自動車でした。それ以外は、登録車と呼ばれる普通車ですが
3位がカローラで143千台、4位がヴィッツで118千台、8位がフィットで102千台他となっています。
しかしこの車名を聞いて分る通り、これらの車は登録車の中ではクラウンやセドリック等の
大型車ではなく、エスティマ以外は「小型車」の部類に入る超省燃費車だと言えるでしょう。
また 1位の軽自動車と3位、4位の登録車の台数の差が4割以上も違うことを考えると、原油
高騰により、ガソリン価格も急上昇した今年度の上半期に、車を買った(買い替えた)消費者の
ニーズは、「省燃費」であるとハッキリ言えると思います。(以上 2007-1-12更新)


車種別に見てしまうと軽自動車も各車種前年割れのようですが、軽自動車全体の新車販売は
好調で右表の通り過去3年前年を上回る伸びとなっています。また4-9月合計でも96万台となり
販売台数で16年ぶりに過去最高記録を更新し、前年比でも4.9%という高い伸びとなりました。
その一方登録車の新車販売は、2001年や2003年等に一時的に伸びた年もありましたが、
長期トレンドとしては減少傾向です。また月別でも15ヶ月間前年実績割れを続け、今年度上半期
の合計は、174万台で前年比7.5%減と、1977年以来29年ぶりに180万台の大台割れとなりました。
米国エネルギー省が選んだ究極の省エネカー10台
ちなみに米国エネルギー省が、10月17日に最新型の省燃費車トップテンを発表しました。
4位のフォード以外は、1位から8位までを日本車が独占という快挙です。
一地球市民としては、日本の自動車メーカーの技術力を高く評価したいと思いますが
石油業界としては、ガソリンの需要減を覚悟しておかなければならないでしょう。

順位 車種 メーカー 市街地km/L 高速時km/L
1 プリウスハイブリッド トヨタ 25.5 21.6
2 シビックハイブリッド ホンダ 20.8 21.7
3 カムリ ハイブリッド トヨタ 17.0 16.1
4 Escape Hybrid FWD Ford 15.3 13.2
5 ヴィッツ マニュアル トヨタ 14.4 17.0
6 ヴィッツ オートマ トヨタ 14.4 16.6
7 フィット マニュアル ホンダ 14.0 16.1
8 カローラ マニュアル トヨタ 13.6 17.4
9 Accent マニュアル 現代 13.6 14.9
9 Kia Rio マニュアル 13.6 14.9
米国HPでは、マイルパーガロンでしたが、これを1マイル=1.6km 1ガロン=3.79Lで換算
新車購入及び買い替え要因によるガソリンの需要減は最大5%か
上記の傾向は、そのままガソリンの需要減を意味します。では自動車の新車から中古車
等の売買を経て、完全に廃車になるまでの平均車齢は、何年くらいなのでしょうか。
下記表をご覧下さい。これは自動車検査登録協会から発表されている平均車齢です。
傾向として、車の性能が向上しているのか、節約意識が芽生えたのか、不景気が長く続き
経費削減意識が強かったのかは不明ですが、僅かずつながら伸びる傾向にあります。
逆に言えば、このお陰で新車販売が低迷しても登録絶対数である日本の自動車全体の
保有台数が維持されて来たとも言えます。
その一方現実的にガソリン需要を考えると、例えば10年乗って老朽化し、実質的な燃費が
かなり落ちたカローラ等から、以前ならマークUや場合によってはクラウンやセドリックに
格上げして燃費消費は増えていはずなのに、今は燃費性能の極めて良い軽自動車や
小型車に乗り替える訳ですから、その購入者が買い替え後に消費する燃料は、正に半分
になる?と言っても、過言ではないでしょう。従って新車の車種の傾向やその燃費性能から
10年に一度の買い替え要因だけでも、年間最大5%の需要が減る可能性がありそうです。

車種/年 2005 2000 1995 1990 1985 1980 1975
乗 用 車 10.93 9.96 9.43 9.26 9.17 8.29 6.72
貨 物 車 11.72 10.53 9.60 9.28 8.38 7.77 6.29
乗 合 車 15.34 13.03 12.36 11.91 10.95 9.95 ---
総保有台数は伸びているものの、軽自動車を除く登録自動車数は減少している事実
国土交通省発表による本年7月末現在の自動車保有台数は、79,130,473台です。
これは、軽自動車や原付以外の二輪車も含みます。3月末は、78,992,060台、更に
2005年3月末が 78,278,880台なので、一見すると順調に伸びているように見えます。
しかし前述の通りこれは軽自動車の伸びに支えられているようなもので、登録車に
限ってみれば、51,394,396台で、前年比58万台、率にして1.1%も減少しています。
使用燃料別では、5139万台の内数として軽油車が823万台ありますが、軽油車は今いち
人気がなく、前年比7.2%という落ち込み、これが登録車の減少に響いた格好となりました。
ガソリン車は、過去1年間、1%台の安定的な伸びを続けてきましたが、今年に入って
増加率が急速に低下し、7月は4236万台、前年同月比0.03%減の約13000台減少しました。
率は僅かですが、初めて前年水準を割った意味は、非常に大きいと言えるでしょう。
車種別に見ると、ガソリン使用の「貨物車」は約208万台で、前年を1%上回っていますが、
ガソリン車全体の94%を占める「乗用車」が、前年同月を22千台、率で0.1%下回ったことが
多く影響したようです。
2006年4-9月のガソリン需要はいよいよ減退へ 中間3品も大苦戦
それを踏まえて先日発表された4-9月のガソリン全国需要を見てみます。
4月100%、5月100%、6月97%、7月は8月からの値上げ前の仮需要もあって 101.4%と
善戦しましたが、 8月はその反動で96.0%、9月も94.5%に留まりました。従って4-9月では
98.3%とオイルショック以来の明確な、言い訳の出来ない前年割れとなりました。

2006 ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重油 BC重油 重油計 燃料油計
4月 4,973 3,764 380 2,210 3,098 2,205 2,137 4,343 18,768
% 100.2 97.9 85.7 119.9 99.4 95.36 100.1 97.6 100.6
5月 4,932 3,855 399 1,009 2,751 1,719 2,066 3,785 16,732
% 100.9 94.6 105.3 87.9 100.8 91.7 108.9 100.3 98.5
6月 4,974 3,927 475 1,018 3,038 1,892 1,812 3,704 17,137
% 97.1 106.6 113.0 75.4 93.9 82.1 83.2 82.6 93.7
7月 5,475 4,145 445 1,137 3,197 1,984 1,950 3,934 18,333
% 101.4 100.8 100.3 105.0 100.9 93.8 90.7 92.2 99.3
8月 5,606 4,078 390 782 2,986 1,758 1,872 3,630 17,472
% 96.0 99.8 87.1 74.9 95.0 85.0 77.0 80.7 91.7
9月 4,848 3,735 374 817 2,939 1,688 1,760 3,448 16,164
% 94.5 88.4 91.3 66.7 97.1 80.2 77.9 79.0 87.9
合計 30,809 23,505 2,463 6,980 18,009 11,247 11,598 22,845 104,611
% 98.3 97.8 96.8 90.7 97.8 88.0 88.8 88.4 95.2

しかし実はガソリンは、これでもまだ良い方なのです。他の油種を4-9月で見ると、
灯油は前年比91%、軽油も98%、A重油に至っては、LNG等都市ガスへの燃料転換が
効いているのか、88%まで下落しています。
更に9月単月数字はもっと深刻です。ガソリンで94%、灯油67%、軽油97%、A重油80%と
ガソリンと中間3品で90%を割りました。単に10%減と言えばそれまでですが、市場から
中堅元売であるコスモやJomo等が供給していた需要が「丸々無くなった」、またそれが
元売にとって白物採算油種だったと表現すれば、その深刻さがお分かり頂けるでしょう。
ある意味深刻な現物業転価格の下落状況
ずばり申し上げれば、これが9月以降のガソリン現物(業転)価格の下落要因でしょう。
9月末ガソリン在庫は216万KLで、前年比108%、3月末比107%です。需要が旺盛の時なら
決して多いというレベルではありませんが、今の時期なら200万KL以下がよいのでしょう。
ある元売の幹部が「うちが幾ら買っても、もうバランスを保てるレベルではない。末端市場を
崩してはいけない大事な時期だが非常に残念だ」と嘆いていました。勿論元売も何もして
いない訳ではなく、各社前年比85%等、定期修理時並みの減産をしていますが、それ以上は
化学原料がタイトになる等の限界もあり、減産による需給調整はこれ以上無理のようです。
実際ガソリンの京浜地区の現物価格は、8月のピークが11日の125.7円で、それを8月下旬
までは何とか120円台を保っていましたが、9月7日に120円を割り、21日には115円を、そして
26日にはついに110円を割り、10月第1週以降108円を割るレベルまで下がっています。

1000KL業転価格 8月最高 8月平均 9月平均 10月平均 平均下落幅
ガソリン(京浜) 125.7 123.6 116.2 108.0 -15.6
灯油(京浜) 63.8 63.3 59.9 51.6 -11.7
軽油(京浜) 64.0 63.9 61.1 53.3 -10.6
A重油(京浜) 59.9 59.7 57.5 51.3 -8.4

税金は約56円なので、正味価格は67.6円から52円まで、約17円、即ち25%も値下がりしました。
同様に灯油も9/6のピーク63.8円から、10月の直近では第1週は52.3円で約12円、20%の下落。
軽油もピークの64円から53円へ11円の下落。A重油もピーク比8.5円下落しています。
もちろん業転の出荷割合は通常の元売にとってはごく僅かで系列物の方が遥かに多い訳ですが
業転価格の下落が系列卸価格に与える影響は少なくありません。そして忘れてはいけないのが
精製元売のコストは、その殆どが固定費であるという事です。前述のように10数%の需要減は
ほぼそのまま利益の圧縮を意味します。そして価格まで落ちこんだらダブルパンチとなるでしょう。
精製も儲からず、販売(卸売り)も儲からず、子会社特約店のSSレベルでも、利益を上げられない
となると、元売の上半期の本業での利益は、相当苦戦するかもしれません。
心配される11月のガソリン末端市況
さてこうなると心配なのが、末端市況です。8月には、全国平均レベルで、144円を達成。
その後9/19までは144円をキープしていましたが、10/2には142.6円、そして10/16は141.0円
そして10/23は、140.2円と、10/30は、140円割れとなりました。

しかしこの石油情報センターは、ある意味理想的な価格です。我々の実際の印象は、
この価格より遥かに安いレベルです。例えば8月1日のNHKの朝のニュース「おはよう日本」で
生中継をした八王子SSは、当時143円ですが、11月のスタート価格は134円となりました。
また南田無SSも8月の143円が本日は130円看板ですので、約13円も下落しました。更に
東京都内の23区内でも一番の激戦地区では、125円、税抜きで119円まで出てくる始末です。

これは元売と業転価格連動方式で値決めをしている一部の有力会社が、まだ粗利幅はある
と、率先して値下げしているように思います。一方系列価格の値下げ発表幅は、せいぜい4円。
それでも過去の値上げが未達成な特約店には、元売はその分値下げを縮小すると発表して
いるので、マージンは益々少なくなるでしょう。そして6月のように、自分の仕入価格より、
隣の広域大ディーラーや、自分と同じ系列元売の100%子会社SSで販売するガソリンの方が
安いという、コンプライアンス上、どう考えても問題がある事態に、再び戻ってしまう事だけは
避けるべきだと思います。
尚、未だに大変好評の5月企画ですが、ご要望が多いので、ドバイやオマーン、WTIから
輸入CIFデータ、国内業転価格、元売系列仕切り、ガソリン末端市況データ
を10月末日
現在判明している数値に更新しました。末端価格が130円では、全くやっていけない事が
具体的な数字の流れで、お分かり頂けますので、是非ご覧下さい。
   文責 垣見裕司
海上自衛隊観艦式ご招待頂きました。感動の写真報告ページ(個人)です
この度ある方のご配慮により 海上自衛隊の観艦式にご招待頂きました。勿論人生初めて
の経験でしたが、大変感動的な体験をさせて頂いたので、その感謝の意味を込め、また
私が頂いた「感動」のおすそ分けを、皆様にも差し上げるべく、個人として写真報告ページを
作成しました。よかったらご覧下さい。2006年 自衛隊観艦式 感動の写真報告はこちら