先物価格VS現物価格、どれがホントの軽油価格か
 公開されている色々な指標から本当の軽油価格を考える
あなたは、軽油関連企画の 2005年6月企画の 番目のお客様です。更新時 23090件
今月は、軽油の価格を、先物、現物、卸、末端、ユーザー調査等、色々な角度から分析してみます。
ガソリン価格は、ガソリン価格分析ページを更新しました。 文責 垣見裕司2005/5/31.NO1

最初に暴騰したTOCOM先物価格

TOCOMの期近物の軽油価格は、2月中旬の 36円から急上昇を始め、4月12日には53円
となりましたので、超大幅値上げと言って良いでしょう。ガソリンに直せば、107円の超高値。
灯油価格も、暖房シーズン明けにもかかわらず寒い日が続いて出荷が好調となり、WTIの
高騰につられ高値をつけましたが、それでも4月5日の50.5円が最高でしたので、いかにこの
53円が高いかがお分り頂けるでしょうか。
先物市場関係者の話では、一部の外資と一部の投資家が買いに入り、その後、期を見て
売却したとのことで、高騰のあとは大幅下落となったようです。
我々現業者としては、本来リスクヘッジをするための先物市場であると理解したいのに
むしろ現物市場の振幅を大きくし、悪影響を及ぼすような価格の乱高下は残念に思います。


    本チャートは「株式会社オーバルネクスト」 e-profit システムより拝受しました

現物価格も大荒れとなった

では、現物価格の推移は正常な動きなのでしょうか。先物VS現物という企画タイトルからすれば
「現物が正しい」と言いたいところなのですが、実はこれも、非常に荒っぽい動きでした。
3月中旬、灯油が52円をつけている時は、45円だった軽油価格が、4月に入り灯油の需給に
目処がつくと、今度は軽油に合わせた生産を調整したのか、47円まで下落した灯油とは対称的に
軽油は53円まで高騰、その後は少し下がったものの50円代の高値が、5月中旬まで続きました。
前述の先物価格が、一部の外資や投資家によって作られた、好ましくない価格とするなら、
この現物価格は、意図したかどうかは別として、精製元売の生産調整の過程で出来てしまった
価格と言えるでしょう。
但し、その超高値圏での売買数量は、あまり多くはなかったと聞いていますので、株式用語でいう
「真空地帯での乱高下」だったようで、健全な業者は前年100%程度までは、通常の価格で買えた
ようです。しかし、前年引取実績、すなわち「枠」を全く持たず、今まで安値価格だけで購入先を
変えてきたような一部の業者には、本当につらい時期であったようです。下記の価格表の下段に
京浜地区の現物業転価格の推移を、RIM社発表の価格で一年分記載しました。

石油情報センター発表の末端価格とSS業者の購入価格(卸価格)

次は、石油情報センター発表の価格をみてみましょう。
1つは毎月調査し発表している末端価格です。これは一般の軽油ユーザーが対象なので
業務用で数量を多く使う方等は、もう少し安く買っていらっしゃるかもしれません。
もう1つの卸価格は、エネ庁からの委託を受けて、石油情報センターが、我々SS業者に
その仕入価格をアンケートして発表しているものです。当社もあるSSでご報告していますが
業界内では「当たらずしも遠からず」であり、それなりの信頼性はあると思います。
特に「その変化幅」は、個人的にも大変参考にさせて頂いております。

ちなみに、この卸価格と、下記表下段のRIM業転価格を比較する場合は、京浜RIM価格は
船ベースの1000KLロットなので、通常「海陸格差」とか「ロット格差」と呼ばれるコストを乗せ
ローリーベースの単位に換算するとともに、出荷基地からSSまでのローリー運賃代を加算
しなくてはなりません。少なくとも2円、出来れば4円程度は、見ておいた方がよいでしょう。

そう考えると2004年4月の時点は、明らかに業転価格の方が安いことが分かります。実は
業界では長らくこの状態が続いていましたが、昨年10月あたりからほぼ同じか逆転状態に
なりはじめ、浮気をしていたSS業者が、再び系列先から買い始める「系列回帰」という言葉が
生まれるようになりました。そして2005年の4月以降も、明らかに業転価格の方が高い状態が
続いています。(エネ庁調査卸価格は4月まで発表データ、5月は当社推定)

各種価格 円/L 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月
石油情報S末端 85 85 89 90 90 94 94 95 94 93 93 93 98 100
エネ庁調査卸 37.0 37.5 40.6 40.6 40.7 44.0 43.9 45.4 43.8 42.7 43.1 45.0 50.3 52?
業転RIM京浜 31.2 32.3 35.3 34.4 35.6 39.2 40.9 44.0 40.2 37.2 36.3 42.6 52.7 50.4

買い手が調査し発表している貴重な購買価格


さてここまで、先物、現物、末端、そして卸価格と4つの価格を見て来ました。
しかし、これはある意味我々業界関係者が調査した価格と言ってよいでしょう。
では、利用者の方が調査した価格はないのでしょうか。それが実はあるのです。
その1つが 日本貨物運送共同組合連合会 様が、組合員の皆様から軽油の購入価格を
調べて発表しているもので、非常に大きな意味をもっていると思います。上記グラフ参照。
2004年11月をピークに値下がりし1月2月は低迷、3月も72.3円までしか上昇しなかったので
販売業者は心配していましたが、4月の76.6円が発表され4.3円の大幅値上げとなりました。
この4.3円は、同組合が発表して来た過去の例からすると、極めて大きい額です。実は、
当社にも運送子会社があるのですが、この1年で12.6円、率にして20%もの上昇ですが、
運賃にはなかなか転嫁して頂けないので、トラック業界の苦しさは良く分かります。

しかし、この76.6円から軽油税の32.1円を引くと、46.5円。従って、業転価格は勿論、系列
卸価格より、まだ大幅に安いことがご理解頂けると思います。
この件に関し、我々販売業者は以前より問題と思ってきました。その理由として確かに
組合全体でみれば取引量は、1SSの軽油総販売数量より大きいでしょう。しかし組合向け
と言っても実際にお納めする場所は、個々の組合員の自家用給油施設であり、タンク容量も
10KL程度。従ってローリー1台(通常12KL以上20KL程度まで)の1箇所配送ではなく、複数の
配送先を回るという意味では、コストはSS向け配送と大差ないでしょう。にも関わらず、
元売や商社、大手特約店等が、一般SSへの卸価格より、安くトラック業者に販売するというは
いくら相手のあることとは言えおかしい。きっと安い特価を元売が出しているのではないか。
というのがその根拠です。
ここから先は、元売の差別対価とか優越的地位を利用しての一方的な通告価格で買うことを
SSが余儀なくされているのではないか等、別の話になってしまいますので、これはまたの機会に
解説させて頂きたいと思います。

軽油価格、今後はどうなるのか

それが分かれば苦労はしませんが、状況証拠からある程度の推測は出来るでしょう。
現在、精製設備の定期修理は一応順調に進み、あと1ヶ月程で概ね終了します。
生産能力という意味では、今が一番少なく今後は徐々に増えてくるでしょう。

もう1つの価格決定要因は、軽油の製品在庫数量でしょう。幸いにして1週間遅れながら、
石油連盟のHPから前週末の在庫等が翌週の火曜日に発表されております。
少なくとも現物価格においては、この在庫数量の増減にある程度相関しているように思え
ますので、お時間のある方は、こまめに見ておくと良いでしょう。

海外の軽油製品価格については、サルファーフリー世界最高の環境水準が、見えない
輸入の壁となっておりますので、海外品が余程低価格にならない限り、影響は少ないでしょう。

原油価格の動きも軽油価格に大きな影響を及ぼします。先物価格は、WTIの影響を多く
受けているようですが、国内製品の仕入コストは、ドバイやオマーン等の中東原油です。
昨今気になるのは、一頃10ドル以上差があったドバイやオマーンの中東価格とWTIの差が
5ドル以下まで縮小していることです。またWTI が下がっても、中東価格は、あまり下がって
いないというのが、昨今の傾向です。新聞等では、どうしてもWTIがメインに取り上げられがち
ですが、是非、中東原油の動きを注視して頂ければ幸いです。