激動の2001年を振り返る
 原油価格と国内市況の急速な下落、BP撤退の意味するものは

あなた12月企画の 番目のお客様です。今年も早いものでもう年の瀬になってしまいました。
年末企画は例年の通り、皆様からの質問にもお答えしながら、この一年をまとめてみたいと思います。
皆様一年本当にお世話になりました。 文責 垣見裕司 01/11/30 NO2

どうして原油価格は、下がったのですか。

9月11日は誠にショッキングなニュースが世界を駆け巡りました。米ニューヨークでの同時多発テロです。従来ですと「有事に強い」という常識からすれば、ドルと原油は上がるはずなのですが、原油価格が上昇したのは数日のみで、その後はむしろ下落に転じました。
その理由として、今回は米国自身が被害の対象であったこと。報復対象地域が、原油生産に影響を与えるイラク等の中東地域ではなく、アフガニスタンであったこと。そして今のところ「米国対テロ」の範囲内で米国対イスラムにまで戦争が拡大していないこと等の軍事面の理由がまずあげられると思います。一方このテロの影響で、陰りが見え始めた米国経済の減速がいよいよ決定的となり、世界的な景気後退から原油需要の低迷に繋がるという見方が一般的で、投機筋もいまのところこの見方に乗っかっているのではないかと思います。

この原油下落に対し産油国はかねてより150万BD率にして6.5%規模の減産を計画、11/14ウィーンで開かれた臨時総会でこれを実現する予定でしたが、3万BD、率にして0.4%というロシアの姿勢に代表されるように、非OPEC諸国の協力が今ひとつ得られなかったようです。
この結果、150万BDの減産を発表しましたが、非OPEC諸国の50万BDの減産という協力がえられるならという条件つきで、その実施時期も当初予定の12月からではなく1ヶ月延期してというものです。しかしこの発表はOPECと非OPECの話し合いが纏まらなかったことを露呈した格好となり、市場の失望売りからドバイは総会前より約3$下落し、15日には15$/B台まで達し後、非OPECの協力が得られるかもしれないという観測も出て少し値を戻しました。
今後の予想をすることは難しいのですが、過去悲惨な10$割れを繰り返してはいけない、という学習効果からやがては価格帯の範囲に回帰するという見方もありますが、余程の寒波でも来ない限り需要増からの価格回復は望めず、しばらく弱含みで推移するというのが、一般的な見方のようです。しかし以前にも書きましたが、昨今の価格は需給もさることながら、投機筋の出方で決まることには変わりはないので、いずれにせよ荒っぽい動きになると思います。
最近、ガソリン価格が急速に下がっていませんか
国内でも、以前から景気低迷から前年割れを続けている重油や軽油に加え、テロ以降ジェット燃料が大幅減となっこと。そして唯一前年対比で伸びを見せていたガソリンさえも、10月企画でご説明の通り、前年割れ目前にまで低迷したことなどから、各油種の業転市況は、じりじりと下落を続けています。
例えば京浜地区のT/Sベースサイト60日のガソリン価格は、最近のピークである6-7月には83.2円(これに海陸格差、ローリー運賃、諸経費を加えてSS届けでは85-86円)をつけていましたが、8月9月10月11月と毎月約1円ずつ値下がりし、現在は5円安の78円を割り込むまでに至っています。原油も確かに下がってはいますが、大蔵省通関統計では、7月の21.6円/Lに対し、9月が19.6円、10月速報では18.6円ですから、せいぜい3円。明らかに下げすぎの感があります。

更に深刻なのは、激戦地区の末端市況です。6-7月にはセルフでも94-5円までに上昇したのもつかの間、事実上、業転価格連動方式で仕入価格を決めている大手セルフ店や大手量販店がまず価格を下げ、それに元売子会社特約店が追随し、11/28現在、首都圏のセルフ価格は激戦地区ではボトム85円、その値下げ幅7-10円にもなっており、原油価格の先取り値下げというよりは、戦略も戦術もないまま、乱売競争に突入してしまったと言えるでしょう。
一方我々の中小特約店販売店への系列価格は、原油価格上昇時の未達分があるとして、公式には9月比、せいぜい2円程度の卸価格の値下げしか発表されていません。したがつて業転価格と系列価格の格差は益々広がり、競争力のあると言われているEM社系の大手特約店の仕入価格でも11月現在84円前後とのことですからRIM+6円にもなっています。
一方民族系最大手元売に至っては、87-89円での卸価格を提示されている特約店が大半ですが、次項で説明するとおり元売からの調整はもはや全く期待出来ませんから、生き残るためには、というより年末年始の資金繰りを乗り切るために、業転品を購入を余儀なくされるでしょう。
いわゆるこの浮気を元売は販売契約や商標法の縛りで抑えてきましたが、販売業者ももはや背に腹はかえられず、むしろ市況に準じた卸価格を提供出来ないなら、系列にいるメリットと、系列に留まる続けるデメリットを自己責任において判断することが大切でしょう。
今回の常軌を逸した急速な業転市況と末端市況の下落が、系列崩壊のきっかけになりかねない本当に危機的な状況であることを、元売、特約店とも、本当に認識する必要がありそうです。

元売中間決算発表の実力度は

11月は3月末決算の元売にとっては中間決算の発表月でもあります。内容は下記の通りです。各社とも苦戦の中、日石三菱だけは連結で中間純利益334億を経常し、前年比9倍増となっています。しかしこれは原油等の在庫評価方法を、先入れ後出しから、総平均法に変更しこの影響が490億円ある、としているのでこれがなければ利益は半分以下になっていたようです。
また評価方法の変更にともなう利益貢献を、連結通期で当初の320億円としていた予想を、220億円に下方修正しましたが、その算出根拠は下期で21$/Bとのことですから、原油の実勢価格が17-18$となれば、本決算の時には更なる下方修正を余儀なくされるでしょう。
またコスモ石油、昭和シェル、Jomo等も、昨年棚卸資産の評価方法の変更を既にしていますので、各社とも来年3月末決算は、今後予想されるマージン低下とあわせ、かなり厳しい数字となると思います。従って、末端市況も業転市場も下落しておりますが、元売としてはおいそれと系列仕切価格を下げられる環境にはなく、ましてや2002年3月には決算調整という財源は、もはや全く期待出来ないでしょう。
従って購入する側としては、昨今の不景気や銀行不良債権処理の強化にともなって、年末そして来年3月は、特約店の経営環境は益々厳しくなりますから、、当月の価格は確たる姿勢と方針を持って、その時々で自己責任で決断していかなければならないと思っています。
                                 単位千KL、百万円
元売名 日石三菱 コスモ石油 Jomo 出光興産 4グループ計

販売数量 36,303 20,301 18,269 32,095 98.7
前年 37,610 20,074 18,171 31,650 103.1

 

 



売上高  1,932,100 915,000 1,047,766 1,183,600 104.2
前年 1,865,300 846,800 1,023,029 1,171,700 102.4
営業利益 75,100 12,077 18,328 35,300 97.7
前年 17,500 16,361 39,190 38,600 93.9
経常利益 69,600 10,142 18,256 23,500 97.5
前年 11,700 10,208 33,562 22,800 96.0
当期利益 33,400 -198 7,401 7,700 92.8
前年 3,200 5,517 12,244 9,400 96.1

BPの日本国内SS市場から撤退は、何を物語るのか

去る10月26日。BPジャパンは日本国内に展開する21箇所のSSを売却し、日本国内のSS運営から撤退すると正式に発表しました。BPと言えば、エクソンモービル、シェル、に継ぐ世界第3位のスーパーメジャーで、アメリカのアモコやアルコを買収して正に飛ぶ鳥を落とす勢いのある会社であることは間違いありません。BPジャパンは97年12月15日群馬県伊勢崎市に独自コンビ二を併設してオープン以来、当初は同じ群馬県の尾島町、富士見村、東村、吉井町などに出店して来ました。その後全国に拡大し四年間で1府8県の21店舗にまで拡大したBPが、何故日本市場から撤退してしまうのでしょうか。以下は私個人のひとつの意見に過ぎませんが、、、、
BPは世界市場においてOIL等で極めて高いブランドイメージを有していたと思います。にもかかわらず、セルフとはいえ安売り戦略に出たことが第一の敗因だったと思います。
そして第二の敗因というかこれは誤算かもしれませんが、戦略があったかどうかは別にして近隣SSの価格追随でしょう。BPの出店は結果的に群馬県は価格ワースト県の一つに転落するなど、各地において出店直後から対抗価格を出されてしまいました。よくも悪くもこの日本的商習慣?を読みきれなかったことは失敗のひとつといってよいでしょう。
第三の敗因は、群馬県内の集中出店時はまだしも、全国展開を図ったことにより、SSもそして恐らくは本部の維持管理費用も、高コストになってしまったと思われます。またソーラーパネルによる自家発電や貯水槽を備えた災害対応型SSを目指したことは、企業理念としては賞賛に値しますし、広告費や環境費として考えればよいとも思います。しかしそれはスーパーメジャーであるBP本体の話でBPジャパンにとってはやはり重荷になったことは否定出来ないでしょう。
しかし最終的に撤退を決意された最大の原因は、私は
「日本のSS市場が、もはやメジャーとして魅力がなくなってしまったこと。」ではないかと思います。当初は、メジャーとして裏業があるのではないか?とか、安い原油を持ち込み委託精製をかける?とか色々憶測がながれましたが、日本で製油所を自前で有していない以上、継続的に購入可能なそして経済合理性のある価格は、やはりRIM価格とそのSSまでのローリー運賃でしょう。正にこれは今の業転価格に他なりません。そして今の業転価格で仕入れても小売価格が87円とか85円とかではBPの運営力を持ってしても赤字か、良くてトントンでしょう。
本来ならこのような異常事態は収拾されるべきなのですが、日本での価格戦争が経済合理性にのっとったものではなく、一部の元売の未だに続く系列子会社への決算対策に代表されるような不透明な仕切や決算対策により
、本来は競争力のないSSが存続している。昨今急増している元売上下所有セルフの内のすくなくとも半分はこれに当たるのではないかと思います。
それらの元売子会社のセルフには運営力やコスト競争力があって、撤退するBPやそのSSに、運営力もコスト競争力もないのでしょうか。むしろBPのSS運営者には標準以上の力があり、企業理念があり、そして経済合理性に基ずく冷静な判断が出来たからこそ、日本撤退をご決意出来たのではないかと思うと、私はその名誉ある撤退をむしろ賞賛したいと思っています。

エネ庁勉強会の委員の感想

さて個人的な話ではありますが、今年の私のビックニュースにエネ庁の課長補佐クラスの「流通業界の経営と石油製品販売業界への応用等に関する勉強会」の委員を仰せつかったことがあげられます。メンバーは約20名ですが、業界人は僅か3人で、大学の先生や多くの有識者に混じって、SS業界代表として、しかられてまいりました。
原則非公開ということだったので本音の話になり大変勉強になっておりますが、近々三菱総研様から報告書が作成され一部公開されるとお伺いしましたので、ご興味のある方は是非楽しみにしていて下さい。以下項目はこの研究会を通じて、より確かとなった私なりの業界論です。

1、SS業界は好むと好まざるとにかかわらずガソリン利益に依存出来なくなる。
2、従って早急にガソリン利益に依存しない経営体質を確立する必要がある。
3、その方法は数パターンに分けられるものではなく、生き残るSSが3万あれば、3万通りある。
4、キーワードがあるとすれば顧客第一主義で、仕入先を見るのではなく顧客を中心に考える。
5、そしてガソリンに依存しない経営基盤は、系列にも依存していないということになる。
6、それが出来たSSは結果として魅力がつき、仕入先からも大切にされるようになるであろう。

この勉強会そのものの結論ではありませんので、誤解の無い様にお願い申し上げます。


秘書箱サービスへの多数のアンケートご協力ありがとうございました。

さて特別企画において発表しております、「SSでも出来る新ビジネスモデルあなたの秘書箱」はアンケートを通して多く方から貴重なご意見や励ましを頂き本当にありがとうございました。
本来なら全ての方にお返事を申し上げるべきところですが、多くの方から頂戴しましたので、まずもって本稿にて御礼と感謝を申し上げる次第です。
その後の経過をすこしご報告申し上げますと、ある元売様にご相談したところ、「実用化に向けて検討をしたい」との大変ありがたいお言葉を頂戴しました。しかし「その系列だけ」というか「独占」或いは「他社との差別化のために」ということでした。本サービスは、発送元がどこの宅配会社でも、郵便局でもそれこそデパートからの配送でも受取が出来るのが最大の特徴ですから、受取れるのが特定の元売系列だけというのは如何にも残念ですので、引き続き系列を超えての実現をお願いしているところです。
一方複数の大手宅配業者様ともお話をしたところ、大変興味を持っておられるとのことでした。都心周辺部の住宅地域における不在率というか持ち戻り率は30%にも達するとのことで、その負担は極めて大きく、持ち戻り率が減少するなら、そのコストの一部を宅配業者が負担してでも、検討してみたいとのことでした。
また今回の発想の本家本元でもあるマンション等の集合住宅に宅配ボックスを設置しておられるトップ企業様ともお会いしました。同社は集合住宅のみならず駅等に設置して実験を開始しておられますが、さすがに不特定多数の宅配業者や品物の受取は、色々な制約からまだ実現出来ていないとのことでしたので、SSで実現出来れば正に新サービスと言えるかもしれません。
実は、ご当局様や組合関係者のご尽力の下、お陰さまで、この秘書箱サービスも含めた、
「SSが地元地域における物流拠点として何らかの機能を果たせないか」
を検討するワーキンググループが11月から立ち上がりました。
私もその一委員として参加させて頂いておりますが、SS業界のみならず、宅配業界様、ITやEC関連として銀行のEC事業部様、そして宅配ボックスシステムを提供しておられる会社様にも委員になって頂いております。いずれ公式な発表がそのWGからなされると思いますので、私からの詳細報告はさし控えさせて頂きますが、SS業界に前向きななんらかの提言が出来るのではないかと楽しみにしています。

今後の企画の予定

さて本当に一年垣見油化HPをご高覧頂きありがとうございました。さて皆様から色々に企画の要請が来ておりますが、取り合えず
1月、燃料電池車&エコカーの実力はどこまで来たか。そのガソリン需要に与える影響
2月、ついに1000件を越えた日本のセルフSS、その実力は果たして本物か の予定です。
来年もまた頑張りますのでどうぞご期待下さい。ではよいお年をお迎え下さい。