ディーゼル車排ガス環境対策と軽油問題を考える
自動車業界VS石油業界VSトラック協会の中、すぐに出来る対策は
あなたは2000年3月企画の 番目のお客様です。
1月31日に判決の出た尼崎公害訴訟でも、ディーゼル車の排ガス問題が問われる中
昨年から「ディーゼル車NO作戦」 キャンペーンを展開している東京都は2月18日、
その具体策を発表しました。また石油連盟は「軽油中の硫黄濃度の早期低減について」を
都から要請される一方、自動車業界は日米欧各社足並みをそろえ、ガソリンや軽油の中の
硫黄分を現行比最大1/100にする「世界規模の燃料品質に関する提言」を表明しています。
ディーゼル車問題がいつしか軽油硫黄問題にすりかわり、窮地にたつ石油業界?、今月は、
大荒れの様相を呈して来たディーゼル車&軽油問題とその対策を考えてみたいと思います。
尚、本テーマも専門分野ではないので誤りはご連絡下さい。 文責 垣見裕司2000/2/23.NO2

ディーゼル車NO作戦、発表された内容は

規制内容の骨子は以下の通りです。
 1.DPEを装着していないディーゼル車は、都内を運行出来ない。(島を除く)
 2.都内登録のディーゼル車はDPFを装着しなければならない。
規制実施は条例施行後、2年の準備期間をおいて2003年度から開始され
古い排ガス規制の車から段階的に行い、3年後には全車両を対象にします。
初年度の規制対象は、1995年9月までに新車登録を行った車両からですが、
具体的な制裁方法や、DPF未装着車の確認方法などはこれからのようです。
深刻な大気汚染の原因は、窒素酸化物(NOx)とSPMといわれています。
そしてこのSPMの主因は自動車排ガスですが、走行量では2割に満たない
ディーゼル車が、NOxの7割、SPMのほとんどを排出していることへの
打開策としています。

SPM、DPFとは何か

SPMとは浮遊粒子状物質のことですが、大気汚染物質の一つで、
空気中に浮遊する直径10マイクロメートル以下の微粒子です。
呼吸器に影響を与えているといわれ、トラックなどのディーゼル車が
吐き出す黒いすすは、気管支喘息などのアレルギー症状や、
肺がんなどの発ガン原因物質のひとつと言われています。
先に判決の出た尼崎公害訴訟でも、気管支喘息の主因と認めています。
そしてこれらのSPMを車のマフラー部に取り付けて除去する装置が、
ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)です。
価格は現在80万円−300万円ですが、都が普及施策を強化する
来年以降には大型用でも60万円以下にしたいと予想しています。
しかし出力は10馬力または10%程度落ちることや、補足した
SPMを走行中に交互に燃焼させなければならないなど、その性能や
耐久性等多くの課題を残しているようです。
(右写真上は、いすずセラミック研究所の製品)
(右下はそれに内包されている日本ガイシ製のフィルター例です)

自動車業界の反応は

これに対し自動車工業会は「SPM除去の方式についてはフィルターではなく
 むしろ触媒に近い、連続式DPFとでも言うべき連続再生トラッパー(CRT)
 がディーゼル車排ガス対策の本命」としています。しかしこのCRTを実用化する
場合、軽油の硫黄分を現行の1/10程度に下げなければならないとしています。
また自動車工業会の方では都のディーゼル車問題とは別に、本年1月、日米欧各社
足並みをそろえ、ガソリンや軽油の中の硫黄分をゼロ(ガソリンで1/10、
軽油で1/100現行日本比)にする「世界規模の燃料品質に関する提言」
(WWFC)を表明し、何やらディーゼル車問題を石油業界に責任転嫁するような
論調も一部に感じられます。しかし、硫黄分=SPMの原因物質ではありません。
低硫黄化は、DPFの性能や耐久性や性能を高めるためのもので、SOxは減っても
燃料に炭素が含まれる以上、登坂時やノッキング時等の不完全燃焼=燃えカス=
SPMは出るわけで、やはりDPF等の装着の必要性は変わらないと思います。

これまで石油業界の対応は

東京都への返書はこちら
従来の軽油中の硫黄分は0.5%でしたが、平成4年に0.2%に、更に平成9年に
0.05%にまで低減しました。そして「石油業界は平成元年の中央公害審議会答申を
もとに現在までの数値に低硫黄化して来たが、それは微粒子除去装置DPF等、
後処理装置の早期装着実現のためで、今度は自動車業界がDPFの低価格化を計り
早期装着を実施すべき」としています。これは石油業界が低硫黄化のために、既に
約2千億円もの設備投資を行っている事。ドイツ等に代表される現行日本比1/10
の最も厳しい規制値0.005%の達成ために、更に数千億円の投資が必要な事。
現在の厳しい経営環境下でこのような巨額投資が果たして出来るか、硫黄分の高い
中東原油への依存が高いこと、室内使用が多く低硫黄が望まれる灯油など欧米とは
違う要因もありますが、道義的には早急なる対策をせまられるでしょう。

反論する全日本トラック協会

一方全日本トラック協会 は、「自動車業界からトラックを、石油業界から軽油をそれ
ぞれ買っているのはトラック業界である。中小企業が多く、DPFの取り付け費用や
新車の買い替え負担に耐えられない。またこの不況下ではコストは運賃に転嫁しにくく
経営的にかなりの負担になる」と反論しています。また同協会によると普通トラックの
車両価格が200万円程度なのに対しDPFは約80万円、大型用だと300万円
もの負担となり、義務付けするなら、助成策を検討してほしいと訴えています。

広い意味での税制改革も必要ではないか

現在、ガソリン税(揮発油税)は53.8円/L、軽油は地方税で32.1円/L。
環境には悪いはずの軽油の方が安いことが、3t以下のトラック等のガソリン車への
シフトが進まない最大の理由だと思いますので、ガソリン税は減額、軽油税は増額し、
同程度にして行くことも必要でしょう。またガソリン税は、国税で元売出荷の段階で
かけられており、脱税はまず不可能ですが、一方軽油税は地方税で、大手特約店等が
特別徴収義務者となり、末端ユーザーや小売店に販売する段階で課税されています。
近年問題になった軽油の脱税は、この特別徴収義務者の資格をもち経営難等で事実上
休眠状態になった会社を利用し、元売等からは製品価格のみで仕入れるものの、
小売業者等には税込みで売る。しかし納税時期になっても支払いをしないばかりか、
計画倒産させてしまうというものです。従って軽油税を国税にし、その上で地方に
改めて交付すれば脱税は、防止出来ると思います。この改正では特別徴収義務者である
特約店の同税の手数料収入は無くなりますが、これは本来徴税にともなう手数の対価で
あり利益や権利というものではないはずなので、見識ある業界人なら軽油税の国税化に
反対する理由はないと思います。

実現可能なすぐにでも出来る対策は何か

「出来ない言い訳を考えるより、どうしたら出来るかを考える」当社標語で検討です。
1.軽油税を国税化し増税、ガソリン税は減税し軽油のコスト的優位をなくす。
2.その増税分で軽油環境対策基金を創設する。
3.2−3tトラック車は、ガソリン車もしくは、LPG車に切り替える。
  LPG車等は割高だがPDFに比較すれば遥かに安いので、その分は基金、国、
  導入都道府県、自動車メーカー、購入者が応分に負担し、移行促進を図る。
4.4t以上の大型に関しては、まず車検時の排ガス低減整備の徹底を図る。
  三菱自動車工業日野自動車の関係者にお伺いしても、国内はもとより
  海外向けにも大型トラックバスの実用代替車は生産されておらず、また1−2年で
  商品開発するという訳にも行かないとのことでした。
5.PDFも耐久性の向上と価格低減を官民あげて推進し順次装着義務化を図る。
  その際も前述の基金で全部または一部を負担する。
6.石油業界も世界最高水準の低硫黄化を目指す。基金から資金を出し高性能脱硫
  装置を精油所に設置し、精製会社はこれを無料で賃借して受託運営する。そして
  10年経過時等、原価償却が概ね終了した時点で、精製各社に払い下げる。
  (これは1月企画の燃料電池の脱硫対策にもなり一石二鳥だと思います。)
7.全軽油車にDPFが設置された時に基金を解散、ガソリン軽油税を減額する。
8.実効性ある取締りを考えた場合、東京都のみでなく日本全体で実施していく。
実はより環境に優しいLPG車は生協等の配送で実績があり、当社配送会社でもLPガス
容器配送車は、燃料供給インフラの心配がないので、車両入替時に順次切替えています。