カーボンニュートラルのコストを考える
電気代なら国民は何倍まで許容するのか
あなたは環境問題の番目のお客様です。
昨年12月に発表された
A日本のエネルギー基本計画素案と
B 温室効果ガス2050年ゼロに向けた 2035年 2040年目標
今月はこの話題を少し掘り下げてみようと思います

                      2025/1/31 文責 垣見 裕司

新年挨拶で本社の約30人に聞いてみた
年始の挨拶で本社に集まった約30人の社員の皆様に聞いてみました。
Q1「皆様は2050年カーボンニュートラル達成目標は賛成ですか?」
渋々も含めてかもしれませんが、多くの社員が手を上げてくれました。
積極的賛成か。消極的賛成かは別として総論では賛成のようです。
Q2「ではその達成のために例えば電気代が2倍になってもいいですか」
この質問をしたところ半分くらいの方が手を下ろしてしまいました。
Q3「では3倍になっても賛成ですか?」
なんと全員が手を下ろしてしまいました。皆様環境によいことはしたい
とは思っていても、それを自らが払うコストとして考えると、かなり厳しい
答えが帰ってきたのです。
昨年政府が示した、エネルギー基本計画の特に再生可能エネルギーの
大幅割合UPについても下記グラフのカーボンニュートラル2050年達成
に向け30年46%に加え、35年60%、40年73%の記載についても、
政府からはそのコストが何故か発表されていないからでしょうか。また
マスコミもこのコストを報道している会社は皆無だったように思います。


日本のエネルギー基本計画素案

先月もお示しした通り、2040年の再エネ比率は23%から倍増予定です。
特に心配なのが、太陽光を今の10%から2-3倍の目標にすることです。
私は太陽光を自己中心のどら息子と呼んでますが一番やっかいです。

老朽火力のパパに、「僕は時代に望まれ生まれて来たんだ。だから
僕が発電出来る時は、パパは発電してはダメだよ。でも、夜や雨に
なったら後はパパよろしくね」。従ってパパは年老いた老朽火力に
むち打って、どら息子太陽光のバックUPをしなければならないのです。
緊急企画、22年3月22日の東電管内の停電危機 
http://www.kakimi.co.jp/2022-035.htm
をご覧下さい。
極寒時を過ぎているにも関わらず、東京が停電危機となりました。

太陽光が10%でもこれだけ大変なのですから3倍になったら、バック
UP火力はもっと大変です。どら息子が困った時だけ、それこそ1年の
内の数日間。それも数時間だけのために、50万kWクラスの老朽火力
を維持し続ける為のコストは本当に火力が持つべきなのでしょうか。
私は少なくても今後は太陽光や風力が持つべきだと思います。例えば
家庭用太陽光と蓄電地をセットで設置する事例が増えていますが、その
電池コストは、太陽光のコストとして、お客様は理解していると思います。



有識者のご見解は

上記の私の疑問を有識者にお伺いしてみました。あくまで私見との
ことですが、以下参考リンクも含めて、コメントを頂きました。

発電にかかるコストについては、 太陽光や風力といった安定供給が
難しい電源の比率が増えていくと、電力システム全体を安定させるため
電力システム全体で生じるコストも増大することから、その統合コストの
一部も算定され、各電源のコストに含めた形で既に公表されています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1622U0W4A211C2000000/

昨年12月17日の総合エネルギー調査会基本政策分科会 資料1
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_
subcommittee/2024/067/067_004.pdf

5Pに固定費等の(統合コストは含まない)発電コストになっており
6Pが統合コストの一部込みの発電コストになっています。
6Pは太陽光や風力のコストは原子力やLNGより大きくなっています。

このコストが温対計画やエネルギー基本計画の目標や対策に直接
紐付くものではなく、コストを負担するのが、必ずしも当該電源側では
ない(太陽光について、高い統合コストを負担するのが太陽光発電を
導入する者というわけではない)という点には留意が必要です。

その点で「火力を維持し続けるコストは、太陽光や風力が持つべき
というご意見が出てくることは理解できます。
対策コストについて、議論が足りないのはおっしゃるとおりと思います。
削減目標を議論していた昨年の中環審・産構審合同会議では、 例えば
12月17日には参考資料1・2として関連機関のコスト分析等しています
https://www.env.go.jp/council/06earth/1224daa_00001.html

参考資料1 第6回合同会合国立環境研究所 説明資料8P
https://www.env.go.jp/council/content/i_05/000276912.pdf
参考資料2 第6回合同会合地球環境産業技術研究機構 説明資13P
https://www.env.go.jp/council/content/i_05/000276913.pdf

実はこの私でも頂いたリンク先は、よく説明出来ない程難解でした。
東京都石油商業組合幹部会でも党議しましたが、良く分りません。
よって今後とも勉強し、理解し、要約し、電気代にして何倍等簡単に
解説出来るようになったら改めてご説明します。

【モデルプラント方式の発電コスト】2040年の試算の結果概要(暫定)

【統合コストの一部を考慮した発電コスト】2040年の試算の結果概要(暫定)