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東京電力他大手電力の規制料金も遂に値上げへ 資源を輸入に頼る以上、値上げはやむを得ないか |
「1月23日の週には日本全体に10年に一度の大寒波が来る」と数日前
から気象庁が発表していたにも関わらず、三重と滋賀両県境の新名神
高速道路で車の立ち往生が発生。最大34kmに達し、その解消には約
28時間を要したそうです。
国や高速道路会社は、車の立ち往生を回避するために「予防的な
通行止め」を実施することが出来ます。これは通行止めの数時間前に
対象区間を決めて周知するのですが、中日本高速道路は「事前の降雪
量予測が社内基準に満たなかった」という理由で実施しなかったそうで、
結果論ですが、読みが甘かったと言われても仕方がありません。
一方、三重県と奈良県を結ぶ名阪国道を管理する国道事務所は、
今回の気象予報を受け、24日午後7時から亀山ICと天理東IC間の
予防的通行止めを実施したのですが、名阪国道が規制された結果、
新名神下り線に多くの車両が流入し、渋滞が発生。そこに大雪が降り、
渋滞した車列で除雪車すらも稼働できない事態に陥ったそうです。
責任を追求するなら中日本高速や国道管理事務所が悪いのかもしれ
ませんが、立ち往生で苦労するのはそこにいるドライバーなのですから
大雪予報が出たら運転をやめる。リスク覚悟で運転する理由があるなら
48時間閉じこめられても生きられる準備を自分でするしかなさそうです。
ただ今回の新名神の立ち往生においては、マスコミの映像を見る限り
乗用車は少なかったようです。トラック等は納品時間厳守があるかもしれ
ませんが、大雪時には出発を見合わせる権利や遅延免責条項等を契約
書に入れて、配送業者を守る必要があるかもしれないと思いました。
昨年の新潟や今回の車の立ち往生にEVが含まれていたのかは確認
出来ませんでした。しかしEVがいたらどうなったのかは是非知りたい
ところです。私がEVを所有していたら実験したいところてすが、幸い
JAF様が実験したデータをHPで公開していたのでご紹介します。
実験条件
EVのバッテリー残量70%のEVを複数台用意した。
外気温条件マイナス8度、夜19時から実験を4パターンで開始した。
本HPでは一般的な室温25度で暖房をかけ続けた場合をご紹介。
実験結果
19時開始から5時間後の24時で時点でバッテリー残量は40%。
翌朝午前4時30分でバッテリー残量が10%となったので実験を終了。
結論
ガソリンでもバッテリーでも残量70%は好条件だと思いますが、
外気温マイナス8度では9時間しか持たなかった。
垣見私見
今回のように周りに立ち往生している車が一杯いる国道や高速道路
なら命の心配は少ないのかもしれませんが、例えば山道で、立ち往生
したり、道に迷って側道に入って止まってしまった場所が、携帯の圏外
だったら本当に命の危険があるかもしれません。
実際、愛媛県久万高原町では、12月23日の大雪で69才の腎臓疾患の
男性が病院での透析後、車で帰宅中に積雪で立往生。車を置いて
徒歩で帰宅中に雪の中で倒れて死亡してしまったのです。
私の結論としてはやはり雪国でのEVは危険です。そして大雪の時には
チェーン規制があるように、EVはここから通行禁止等の規制も必要かも
しれません。
更にもし立ち往生して電欠になったとしたらどう救出するのか。
ガソリンなら地元のボランティアや自衛隊から鉄の携行タンクで数L
給油してもらえば、最寄りのガソリンスタンドまでは動けると思いますが
EV充電となると大変です。走るパトロール給油車は沢山ありますが、
走ける急速充電車は多分ないので、レッカー牽引が現実的でしょう。
もしFCVが普及するれば、100V 20Aくらいで性能的には給電出来るかも
しれませんが、相当未来の話だと思います。
JAF様の実験の詳細や他の3パターン実験結果は下記からどうぞ
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/snow/stuck
https://jaf.or.jp/common/news/2020/20211220-001
https://www.youtube.com/watch?v=qT5Vt7met6g
さて後半は今月の本題です。2022年11月企画も是非ご覧下さい。
東京電力は1月23日、東電全体の3分の2程度の約1000万世帯が
対象となる「従量電灯B」の規制料金の引き上げを経済産業省に
申請しました。値上げ幅は平均29%で、今年の6月からの適用を
目指しているとの発表でした。
この従量電灯Bは正に「規制料金」なので最終的な値上げ幅や
時期は国の審査後に決定されます。最近では、原油は既にご報告
の通り値下がりしました。LNG価格はロシアのウクライナ進行後の
ピークよりは少し値下がり、また過度な円安も解消されていますが
大幅な値上げになることは間違いないでしょう
規制料金は下記表の通り、2022年11月以降に東北電力など
大手5社が3〜4割前後の値上げを申請しており東電は6社目です
この従量電灯Bにも燃料費調整制度があり、3〜5カ月前の燃料費
を自動的に反映出来るのですが、規制料金には消費者保護の観点
から転嫁の上限が設定されており、その上限を超えると料金はそれ
以上は上がらないしくみなのです。実は昨年9月から上限に達しており
使用量が仮に9月も1月も同じなら標準家庭なら上限の9126円に張り
付いたままなのです。また値上げがそのまま認められると、現在の
燃料価格から計算した6月の料金は1万1737円となるそうです。
大手電力会社の規制料金の上限調達時期と値上げ申請状況
料金体系 規制料金・上限他 値上げ 自由料金 電力会社名 上限到達 値上申請 開始予定 上限撤廃時期 旧
一
般
電
力
会
社
北海道電力 2022年8月 申請予定 6月〜 2022年11月〜 東北電力 2022年6月 31.7%申請済 4月〜 2022年10月〜 東京電力 2022年9月 28.6%申請済 6月〜 上限なし 中部電力 2022年10月 検討せず --- 2022年11月〜 北陸電力 2022年2月 42.7%申請済 4月〜 上限なし 関西電力 2022年3月 検討せず --- 上限なし 中国電力 2022年3月 29.9%申請済 4月〜 上限なし 四国電力 2022年3月 27.9%申請済 4月〜 2022年10月〜 九州電力 2022年8月 検討せず --- 2022年9月〜
東京電力は、これまで未定としていた23年3月期の業績予想も公表
しました。連結最終損益は3170億円の赤字(前期は56億円の黒字)。
燃料価格の影響が一番大きい電力小売子会社は23年3月期に
約5050億円の経常赤字を見込み、同社に東京電力HDは3000億円
の資本を1月末に追加注入し、昨年10月末分と合わせた増資額は
合計5000億円となりました。逆に言えば、この増資をしないと債務
超過になる一方、もし今回の料金見直しがなければ、年平均で
2944億円の収入不足になると発表しています。
また国の認可を必要とせず、電力会社が自由に料金を設定できる
家庭向けの自由料金についても、23年6月から平均5.3%値上げする
そうです。
東北電力は2022年3月の福島県沖地震の影響もあり更に深刻です。
2023年3月期の最終損益は1800億円の赤字で、前期の1083億円
の赤字から700億円も増えてしまう予想になっています。
本HPでも申し上げている通り、日本のエネルギー自給率は12%程度で
化石燃料のほぼ全てを輸入に頼っていると言っても過言でありません。
その輸入CIF価格は、下記表の通り実は2021年秋から値上がりしており
その傾向が、ロシアのウクライナ侵攻で決定的となったと言えるでしょう。
値上げはやむを得ない あとは政治の話で補助金は2月から支給へ
東京電力によれば、規制料金の燃料費調整制度で昨年9月に既に
上限価格に達したとのことなので、その仕入れ単価は約3ヶ月前の
4〜6月頃で既に上限に達したことになります。しかし日本の仕入れで
ある輸入CIF価格はその後の黄色で示したピークに向けて上がり続けて
います。少しでも安い方がよいという国民感情は良く分かりますが、
一般民間企業としては、やはり価格は上げざるを得ないと思います。
政府はガソリン同様 電気と都市ガスに補助金の支給を決定
この価格上昇に対して政府はガソリン同様、電気と都市ガスに対しても
補助金の支給を決定し、2月から実質される予定です。補助金の概要は
<電気料金>
【低圧契約(主に家庭)】値引き単価:7円/kWh 標準家庭で月約2800円
【高圧契約(主に企業)】値引き単価:3.5円/kWh
<都市ガス料金> 値引き単価:30円/m3 標準家庭で月 約900円
補助金事業の詳細は こちら https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp/
我々LPガス業界への末端価格の直接的な引き下げの為の補助金は
ありませんでした。その理由は発表されておりませんが、LPガスの輸入
価格の上昇が、前記表の通り大きくないこと。LPガスの末端料金は
配送等の物流費が多く、LPガスの占める割合が大きくなかったこと。
LPガス業者が全国に1.7万社あり制度設計が難しかったと解釈しました。
個人的な疑問、原発再開有りきなのか
以上説明してきた通り、値上げの幅は国の審査に委ねるとしても
値上げそのものはやむを得ないと思います。しかし一点心配なのは、
柏崎刈羽原子力発電所の再稼働時期を7号機は23年10月。6号機
については25年4月を前提とし、原発の稼働を織り込むことで燃料費
を抑え、顧客の負担軽減につなげるという説明をしていることです。
私は「原発の再稼働がなければ、更なる値上げをお願いせざるを
得ない」とも聞こえてしまいました。原発が1年稼働すれば、計算上、
年間100万tのLNGの輸入を削減出来るのは事実です。しかし安全性が
東日本大震災前と比較して格段に向上したとしても、核廃棄物処理
問題は、過去50年間も含めて全く進展しているとは思えないません。
使用年数も40年から60年に延長され、更に停止期間中の除外案も
検討されているとのことなので私は心配です。例えば一般住宅は
人が住んでいない方が、劣化が激しいように感じますし、長期間稼働
しないことを、最初の設計時に想定していないとも思います。