2023年もエネルギー業界は波乱のスタート
 車の立ち往生、大規模停電、船舶戦争保険停止問題他
あなたは新年1月企画の 番目のお客様です。
明けましておめでとうこざいます。新年くらいは明るい話にしたいのですが
今年も波乱のスタートとなりました。その中で間違いなくいえることは、環境
問題はあるものの、有事は石油で支えるしかないというのが私の結論です。
新年企画は、年末に発生した車の立ち往生や大規模停電、サハリンU問題
とその対策を考えてみたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いします。
            2022/12/29初掲載  30日更新 文責 垣見裕司
年末年始の寒波、豪雪、車の大量立ち往生問題を考える
12月19日から20日にかけ日本列島を寒波が襲い、新潟や北陸地方で
発生した大雪は、車の大渋滞を引き起こし、国道8号や17号線において
約30km、数百台の車が、最大30時間にも亘って立ち往生しました。
新潟県は20日午前5時、自衛隊に災害派遣を要請をしたほどです。
自分は、冬タイヤを履いているしチェーンを持っているから大丈夫と
いう気持ちは分かりますが、1台のノーマルタイヤ車が道路を塞いで
しまう、その車を移動させている作業中にも雪はどんどん積もり、結果
全ての車が動けなくなってしまうのです。
大雪が予想されるときは、外出しないのがベストですが、やむを得ない
時は、冬タイヤは勿論、チェーンやその装着に便利なジャッキ等の工具、
スコップ、手袋、懐中電灯、お菓子や簡易食料、防寒具、簡易トイレ。
そして停電時は、POSやスマホの電子決済が出来ないので千円札や
小銭等の現金。スマホ充電用ケーブルを用意しておくこと良いでしょう。
そして出発後、最初に見つけたSSで、ガソリンを満タンにして下さい。
結論は、自分の身は自分で守るしかないのです。今回EVの立ち往生
は無かったようですが、自衛隊でも電気の補給は出来ないでしょう。

私は東京在住なので、自宅と会社の間で車が動けなくなる大雪は、
数年に1度しかありませんが、防災オタクなので上記品は搭載済みです。
写真は2014年2月です。左二枚は自宅近くですが、夜になり、車の轍
すらなくなったら外出を断念します。右2枚は弊社八王子SSですが、
小型車のタイヤがすっぽり埋まる程の大雪でした。

豪雪による鉄塔損壊や倒木による電柱損壊停電も避けられない話
日本の電力会社のサービスは大変行き届いているので、平時に電柱が
1本倒れた程度の停電でしたら、1日以内で復旧してくれると思います。
しかし豪雪による高圧線の倒壊となると話は別です。高圧線も基本は
ネットワーク状になっていますが、北海道の紋別の2度の大規模停電は、
バックアップした別の高圧線も雪で倒壊してしまったので、復旧に相当
時間を要したそうですが、私は北電を責めることは出来ないと思います。
例えば電柱の保守を考えてみます。電柱や電線の保守は、電力会社が
行いますが、隣接する私有地の木を勝手に切る訳にはいかないので、
大雪で私有地の木が倒れ、電線を切ったり電柱を倒したら、1本1本
直すしかないのです。これが大雪で、広範囲で同時多発的に発生したら
もうお手上げです。すなわち、電気というものは、発電所、高圧線、ネット
ワーク、変電所、6600V、そして220Vの低圧電線と電柱。全てが正常で
ないと自宅まで届かないということを改めて考える必要があると思います。
従って基幹病院では自家発電を用意していますが、その燃料はせいぜい
数時間分でなので、地元のSS等からのパトロール給油が必要なのです。
雪の降らない都心等で自家発電機を持つ集合住宅なら、オール電化も
否定はしませんが、豪雪地や寒冷地、山間部等は、停電がいつ起きても
おかしくないことを前提に、灯油やLPガスストーブを用意して下さい。
ファンヒーターは100V電気を使うので出来れば、電池かマッチで点火
出来る灯油ストーブと灯油一缶も含めて平時から用意して下さい。

結論、小規模停電は僻地等以外は直ぐに普及するが、広範囲の大規模
停電は復旧に時間を要する。よって停電がいつ起こっても数日間は自力
で生き残れるよう用意する。自分の身は自分で守るしかないのです。

ステルスマーケティングのつもりはありませんが、東京杉並区在住の
私でさえ、下記の灯油ストーと灯油2缶を常備しております。
以前は節電+停電対策として太陽光+自動車用バッテリーを自宅に設置
しましたが、(2014年11月企画参照)今は自動車がHVなので、緊急時は
1500W以内ですが、車から延長コードで引っ張ろうと思います。

国内損害保険会社、戦争保険受付停止、サハリンUからの輸入は
日本のエネルギー国家戦略上、大変なニュースが飛び込んで来ました。
国内損害保険各社は12月23日、極東を含むロシアやウクライナ周辺の
全海域で、戦争による船舶の沈没などの被害を補償する保険の提供
(引き受け)を2023年1月1日から停止すると発表したのです。
私の知るところでは、原油タンカーの座礁事故は、単原油の価値が
なくなるだけでなく、海洋汚染の他、事故発生場所が港湾内だったり
したときは、火災事故など、想像もつかない被害が発生します。
よって船舶保険は全ての船が加入するというか、船舶保険に加入しな
ければ航行(特に外洋)は出来ないというくらいの認識でした。
そして今回の措置の対象地域には、ウクライナに近い黒海やアゾフ海
だけでなく、ロシア東部や北極海航路などが含まれ、当然サハリンUから
のLNG輸入も止まる可能性がある大変なことだったのです。
これに対し日本政府は資源エネルギー庁と金融庁が27日、極東海域
でのこの「船舶戦争保険」について、1月1日以降も継続するよう国内
損害保険各社に要請したそうです。
しかし私は1歩も2歩も進んで、政府もしくはJOGMEC等が、その保険
を肩代わりするくらいの決意がが必要なのではないかと思いました。
サハリンUは日本のLNGの総輸入量の8%に過ぎませんが、逆に
言えば1ヶ月分相当の量を輸入していることになります。そして何度も
お話ししている通り、LNGには備蓄義務がなく、その量は、正に流通
在庫の2〜3週間分しかないのです。特に冬は発電や都市ガスの
使用量が多いのでまあ2週間というところでしょう。
この問題を注視していたところ12/29、政府の強い要請を受けて
損害保険各社は、サハリンUからの輸入に対する戦争船舶保険の
引き受けを再開したというニュースが29日夜入って来ました。
これで最悪の事態はとりあえず回避しましたが、ミサイルの直接攻撃
でなくてもエネルギーの輸入が止まることを改めて認識しました。
やはりエネルギー自給率はもっと上げないといけないと思います。

下記写真は、よくわかるガスエネルギー業界より 東京ガス様提供 

原油価格、高値120ドル/Bから 直近70ドル/B台まで下落
さてここまで悪いニュースばかりだったので、良いニュースを二つ
ご紹介したいと思います。一つは原油価格の下落です。
WTI価格でピーク120ドル/Bまで行きましたが、直近では70ドル/B台
まで値下がりして来ました。何故下落したのでしょうか。私見ですが
西側諸国はロシアからの原油輸入を大幅に縮小させましたが、その分
中国やインドがロシアからの購入を増やし、世界需給としては上手く
バランスしたのだと思います。エネルギー輸入大国の日本にとっては
国富の海外流出を防げるので本当に良いニュースです。

為替レートも1ドル150円から130円台まで戻す
日本経済の特にエネルギー他輸入業界を悩ませていた行き過ぎた
円安も、徐々に回復し12月初旬には135円台にまで回復してきました。
日銀の二度のドル売り円買い介入も市場はそれ程反応せず、また
基本的な原因である日米の実質金利差約4%も解消された訳では
ないのですが、売られ過ぎた円安が政府の介入ではなく、自力?で
回復したのはよいことだと思います。
この結果ピーク110円/Lだった原油価格が約65円/Lまでダブル効果
で下がって来たのも本当に良いことです。

燃料油激変緩和措置の出口戦略発表
上記の原油安と過度の円安の解消により、一頃35円/L以上出て
いた、燃料油価格激変緩和措置も大幅に縮小され、12月29日現在
14.8円まで縮小されました。本制度において12月までの投入された
総予算は、約3兆円とも言われているので、将来へ借金が減少して
よかったと思います。
また同制度の出口に戦略も発表されました。本年1月以降、毎月
2円ずつ5月まで合計10円。6月から2週間で2.5円ずつ月5円。
4ヶ月で20円。その結果1月から9月末までに合計30円の補助金が
縮小されます。それ以降も、原油高や円安にならないことを祈ります。