日本のエネルギー&原発問題を考える  
 ソフトランディングか、不足電力は天然ガス、最後は水素か
あなたはエネルギー基本計画企画の番目のお客さまです 2018/8/1 Ver1

皆様もご存じの通り、原発の地震やテロ対策が遅れています。とは言ってもどうせ
原発村のコップの中の議論と思っておりましたが、規制委員会が、なし崩しの対策
工事の遅れは認めないとの見解を発表。にわかに、日本の原発の全基停止の
可能性が出てきました。今月はこの原発政策を改めて考えてみたいと思います。
                                    文責 垣見裕司

日本の原発の現状 約60基中9基再稼働(2基停止中) 廃炉は24基

現在日本の原発は約60基あります。     下記期限はテロ対策
このうち、本年7月8日現在再稼働を果たしたのは、以下の9基です
 2015.08.11 九州電力川内1号機 89万kW  期限2020年3月
 2015.10.15 九州電力川内2号機 89万kW  期限2020年5月
 2016.08.12 四国電力伊方3号機 89万kW  期限2021年3月
 2017.05.17 関西電力高浜3号機 87万kW  期限2020年8月
 2017.06.06 関西電力高浜4号機 87万kW  期限2020年10月
 2018.03.14 関西電力大飯3号機118万kW
 2018.05.09 関西電力高浜3号機118万kW  現在停止中
 2018.03.14 九州電力玄海3号機118万kW  現在停止中
 2018.06.16 九州電力玄海4号機118万kW 
その他、設置変更許可を申請中が下記の6基 左日付は申請日
 2016.10.05 関西電力美浜3号機 83万kW
 2016.04.20 関西電力高浜1号機 83万kW  期限2021年6月
 2016.04.20 関西電力高浜2号機 83万kW  期限2021年6月
 2017.12.27 東京電力柏崎6号機136万KW
 2017.12.27 東京電力柏崎7号機136万KW
 2018.09.26 日本原電東海2号機110万kW
この他、審査中が12基、未申請も9基あり、今後の動向が注視されています。
廃炉がほぼ決定したのは24基、東電の福島第2の110万kW4基などです

原発のテロ対策とは何か 遅れる各電力会社の対応

「特定重大事故等対策施設」は、航空機などによるテロを受けても、原子炉
から100m以上離れた安全な場所から、原子炉を冷却出来るようにする
施設で第二の制御室とも呼ばれています。2013年に新設され、規制委員会
が求める対策が追加されました。当然大工事を伴うので、規制委員会は、
必要な工事計画の認可日から、1度はその完成期限を5年伸ばし、その施設
がなくても稼働を認める「異例の措置」を取ったのです。
 しかし本年4月17日、九州電力、関西電力、四国電力は、その完成が
1〜2年遅れると相次いで発表しました。
 規制委員会も工事の遅れを黙認してきた訳でなく、本年1月に「期限内に
対応しないと原発停止命令の可能性ある」と警告していたそうです。
 しかしその時は、各社とも「最大限の努力をする。問題はない」と回答して
いましたが、僅か3ヶ月で翻ったのですから、規制委員会も困ったのでしょう。
 工事が大変なのは、もちろん想像がつきます。しかし3社そろって遅れを
通知すれば、再度完成期限を延長してもらえるという甘えがあったのでは
ないでしょうか。もし規制委員会が、今回もなし崩しの延長を認めれば、私で
なくても国民は黙っていないので、規制委の対応は妥当なものでしょう。
 一番早く期限が来る九州電力の川内1号基の期限は2020年3月に迫って
いるものの、完成は1年遅れなので、この川内1号機の原発停止命令を皮切り
に日本の原発が全て止まるという可能性が再びあるかもしれません。

そのテロ対策費用は、2013年想定から大幅増加

ではその「特定重大事故等対策施設」の費用は、一体どのくらいなのか。
各社HPや新聞情報ですが、2013年当時と今の比較です。大幅増も大問題
ですが、直近の見積もりが本当なのか、その信頼性は低いように思います。
そしてこの上昇額は、各社の経営に深刻な影響を与えていますが、最終的
には、国民の電気代の値上げとなって跳ね返ってくるのです。
社名/想定月 2013年1月末 2019年6月末
関西電力 2850億円 10250億円
九州電力 2000億円 9000億円
東京電力HD 700億円 6800億円
中国電力 500億円 5000億円
中部電力 1500億円 4000億円
北海道電力 700億円 2000億円
四国電力 500億円 1900億円
北陸電力 250億円 1500億円
 合  計 9000億円 40450億円 1基 1000億円増で +1円/kWh
国の試算による原発の発電コストは幾らなのか 上記グラフ参照
国の試算では、現在の原発コストはどうなっているのか。2015年の総合資源
エネルギー調査会の発電コスト検証ワーキンググループの調査は10.1円です。
原発のコストは「発電原価」と「社会的費用」に分けて考えるのだそうです。
発電原価とは、発電施設の建設と運用に関わるコストのことで、具体的には
施設の建設費、 燃料費、運転維持費、また使用済みの核燃料を加工して
再度燃料として利用する核燃料サイクル費 「核燃料サイクルの今」 )や、
廃炉措置をとった場合にかかるコストなどを含みます。
また2013年に定められた新規制基準にもとづく追加の安全対策費なども
含みます (「原発の安全を高めるための取組〜新規制基準のポイント」 ) 。
一方社会的費用とは、賠償費用などの事故リスク対応費用と原発建設地
への立地交付金など(税金) のことで、原発の運用に間接的に関わるコスト
といってよいでしょう。
試算では、設備容量120万kWの原子力発電所が、設備利用率60%・70%・
80%で、40年あるいは60年稼働した場合という複数のケースを想定し計算。
事故リスク対応費用は、福島第一原発での事故対応費用を参考に、120万
kWの原発1基が 事故を起こした場合を想定して、約9.1兆円と想定。
設備利用率70%の場合で計算すると、原発にかかる発電コストは1kWhあたり
10.1円〜となるのだそうです。

福島第一原発の廃炉費用は、11兆円から12兆円に倍増

そうなると気になるのが、原発のお葬式代とも言うべき廃炉費用です。
福島第一原発は想定外の事故で、世界的にも前例が少ない、デブリの撤去作業
を伴うものですから、見積もりが難しいのは良くわかります。しかし当初算定された
廃炉2兆円、賠償5兆円、除染中間貯蔵施設4兆円 合計11兆円が、その後
廃炉8兆円、賠償8兆円、除染中間貯蔵施設6兆円 合計22兆円 と倍になりました。
しかし日本経済研究所の試算では、50〜70兆円というとんでもない話もあります。
原発1基で費用が1000億円上がると、1kWhのコストは1円上がる言われています。
仮に生き残れる原発が日本に10基あるとして、10兆円のコストUPは、発電コスト
の10円UPに他なりません。要するに原発は、もはや全く安くないのです。

福島第2原発の廃炉費用は、2800億円は本当か 

一方福島第二原発の廃炉も事実上決定したそうで、廃炉に伴うその費用の必要
積立金は2800億円です。福島第二は110万KWが4基あるので、1基あたりの
廃炉費用は700億円になりそうですが、これをそのまま信じることは出来ません。

ちなみに衆議院議員立憲民主党の阿部知子氏が、2018年6月27日に
廃炉コストに関する質問主意書」で質問し。(質問413)が、その答えが7月6日に
文書で答弁
されていますが、一言で言うと、「わからない」で政府は逃げています。

一番心配なのは、核廃棄物処理並びに保管問題

しかしそれでもまだ解決できないと言われているのが、使用済み核燃料や高濃度
核廃棄物の処理問題です。日本に現在あるのはあくまでも、一時もしくは中間貯蔵
施設なので、最終処分の方法やその場所すら決まっていないのです。
使用済み核燃料を巡っては、核燃料サイクルの核となる青森県六ヶ所村の再処理
工場がトラブル続きで、1997年の完成予定が20回以上も延期され続け、その完成は
早くても2021年以降になるそうですが、もはやこの予定を信じることは出来ません。
上記の九州電力玄海原発3号機は、日本で2009年ウラン・プルトニウム混合燃料
(MOX燃料)を使った初めての原発です。しかし使用済みの核燃料保管プールは、
同社の3号機4号機は、あと3年分しか保管スペースがないと言われています。
一方同じく九州電力の玄海原発の1号機で始まった廃炉作業も、順調にいっても
2043年まで続く長丁場なのです。そうです。原発解体には、高濃度核廃棄物が
沢山出ますが、その最終処分場すら決まっていないのです。
ではその核廃棄物をどこに捨てるのか。国内の未発見の活断層も沢山あり、
そもそも地方の過疎の自治体でさえ、どこからも手が上がっていないのでです。
その意味では最も現実的なのが、米国等に多額の費用をかけて輸出し、砂漠
地帯の地中深くに長期保存してもらうという方法です。しかしそうなると、原発は
形式上国産エネルギーであるという大前提が壊れることなり、原発の必要性が
益々薄れることになります。

核兵器に転用出来るプルトニウムの大量保管問題は、米国も懸念を示す

世界各国の民生用プルトニウム保管量
英国133トン、フランス82トン、ロシア57トン、米国49トン、日本47トン ドイツ0.5トン
日本には2017年末現在、47トンのプルトニウムがあります。これは、核保有国
を除けば、圧倒的に多い量で、核兵器にして約6000発にもなる量だそうです。
資源のない日本にとって、使用済み核燃料を六ヶ所村に完成予定の再処理
工場で処理して、回収したプルトニウムやウランをMOX燃料にして、MOX燃料
対応の原発で発電するというのが、夢のプルサーマルという仕組みです。
しかし六ヶ所村の再処理工場の完成は何度も何度も延期されています。
またMOX燃料製造工場は日本にないので、フランスに委託しています。
そもそも世界でもこのプルサーマルの仕組みを成功させた国は、英国と
フランスのみですが、英国は既に凍結してしまったのです。
そのMOX燃料製造のため、日本の47トンのプルトニウムは、現在英国で
21トン、フランスで15トン合計で36トンを海外で保管してもらっているのですが、
この事実は、隠されてこそいませんが、多くの国民は、知らない事実です。
更に問題なのは、同盟国の米国でさえ、この大量のプルトニウムを問題視
しており、早く削減するようにと迫っています。
 プルトニウムを減らす方法は、MOX燃料にして原発で使用するしかないの
ですが、本来は16-18基ないと、需給バランス上減らせないのに、現在MOX
燃料を使用出来る原発は、関西電力の高浜3号4号と、九州電力の玄海3号
四国電力の伊方3号機の4基にとどまっているので、プルトニウムは、どんどん
増え続けてしまうのだそうです。英国やフランスに買ってもらえば良さそうな
ものですが、お金を払っても引き取ってもらえないのが、現状のようです。
プルトニウムのもう一つの危険性 こちらの方が本当は問題
プルトニウムもう一つの問題は、核兵器への転用問題だけでなく、むしろその
放射性物質としての危険性の方だと私は思います。

原子炉内で人工的に出来てしまう放射性物質は、ヨウ素131(ベータ線)や
コバルト60(ガンマ線)、セシウム137(ガンマ線)ですが、これらの放出する
放射線の半減期がそれぞれ順番に8日、5.3年、30年なのに対し、プルトニウム
239(アルファー線)の半減期は何と24000年なので、万が一漏れ出した時の
被害というか危険性は、1000倍以上といえるでしょう。
もっとも自然界に最初から存在するウラン238の半減期は45億年ですから、
地球誕生というレベルなので比較になりません。
私の提言 原発はソフトランディング 不足電力はLNGと水素で補う
本HPでも申し上げましたが、当初私は、原発問題には、玉虫色の表現でその
回答から逃げてきました。しかし小泉元総理の原発はやめなさい。自身が
総理の時の原発政策は誤っていたという生講演を聞いて私も目が覚めました。

原発は反対です。今すぐ即時全基停止=ハードランディングとは申しませんが
2030〜2040に向け全基停止へのソフトランテイン位は宣言してほしいです。
それと同時に廃炉の決まった原子炉の廃炉作業を全国各地で開始しすべき
です。そして原発反対派の方々に、「ちゃんと廃炉していくので、後10〜20年は
安全の確認された原発は稼働させて下さい、とお願いするのが良いと思います。
 不足する電力は、当面は現在のように天然ガス発電で補うしかありません。
再生可能エネルギーには期待していますが、昼しか発電しない太陽光や変動の
激しい風力発電の導入容量は、それを補う天然ガス発電能力とのバランスで
自ずと決まってきます。
2018年8月ご提案の中小の既存ダムの嵩上げによる水力発電は、日本なら
ではの天然資源なので、これは積極的に進めてほしいです。既存ダムの改修
なので、環境破壊も最小限で済みますし、過疎化対策にもなるでしょう。
そして最後は水素の出番です。
現在の天然ガス発電は、大きな設備変更をしなくても、5〜10%くらいは水素を
混ぜても何の問題もないと、重機メーカーの方からお伺いしています。1台5kg
しか入らないFCVで水素を使うのもよいですが、天然ガス発電所に液体水素
タンクを置いて、徐々に水素を混入し濃度をあげる設備を作ればよいのです。
こうすれば、燃やす段階では水素は環境に良く、最後は技術とコストだけの
問題になり、原発のような将来に亘る危険性や廃炉の危惧は、なくなります。