2014年石油業界重大ニュース
 円安、貿易赤字、原油高、ガソリン価格高と需要縮小、油外収益減
あなたは12月企画の 番目のお客様です。2014/12/1 掲載時 12250スタート
今年も業界は激動の1年。しかし石油業界問題以前に、業界外というか、日本経済全体
に与える色々な問題が多かった思います。今月はそこから私見を申し上げてます。
今年も1年ありがとうございました。そして来年もよろしくお願いします。 文責 垣見裕司

日本経済全体に与えた大ニュース
歴史的な円安と物価高

安倍内閣発足以降、円レートは、80円から100円を突破、12月1日には一時119円
を超えるまで円安となりました。またアベノミクスの第二の柱である財政出動により
消費税UP前の3月までは、確かに景気回復の基調もあり、物価も上がりました。
しかしそれは本来の「消費が増え生産が追い付かず、来月は更に値上がりしそう
だから、今月買っておこうという」デフレ脱却の好循環ではなく、単なる円安による
エネルギーを初めとする原材料費が上がっただけのような気がします。

そもそもデフレが諸悪の根源。デフレさえ脱却すれば、全てがよくなるというという
発想は若干ずれを感じます。景気を良くし、
国民の実質収入を増やし、その結果
消費も増え、企業業績が緩和して、国民や消費者の収入が増えて幸福感が増す
という好循環を作るのが本来の目的であり、この好循環が完成するなら、デフレ
や物価安がそんなに悪いこととは思えないのは私だけでしょうか。


貿易赤字と経常赤字

 その円安の結果、日本の貿易収支で増えたのは輸入だけ。鉱物系のエネルギー
4品だけでも2010年度比、2013年度はプラスの10兆円です。
輸出は全産業を通じても僅か3兆円しか増えていないのです。
2014年度の上期も政府速報で貿易赤字は5兆4千億円。年度上半期としては
過去最大。しかし更に問題なのは、日本企業等が海外に持つ金融資産の配当は、
円安で増えるはずなのですが、それを含めた経常収支でも大幅赤字となっている
ことです。日本経済は大丈夫なのでしょうか。私はかなり悲観的に見ています。


消費税8%にUP

この3%UPは飛んでもない3%でした。満タンにするくらいしか買いだめ出来ない
ガソリンでも3月には前年比+14%の仮需発生。その影響は少なくありません。
そして4月以降、ガソリン需要は大幅に落ち込んだままです。またSS業界に最も
関連のある自動車業界も、新車販売は回復していません。それを認めた政府は
来年10月の10%への増税を先おくりしました。政治改革も含め政府が痛みを
伴う支出削減をすれば、10%もやむを得ないと思っていた私も複雑な心境です。

突然の解散と年末選挙

このHPは政治については、特定の政党を応援することなく原則フラットですが、
今回の解散は遺憾に思います。その費用は700億円。そもそも内閣改造をした
ばかりで、今回任命された大臣にとっても晴天の霹靂でしょう。
もう一つ遺憾なのは、野田前総理と約束したはずの議員定数削減は手つかず。
絶対安定多数を持っているにの何もやらなかったのは政治の怠慢としか、言い
ようがありません。また2013年参議院選挙についても、最高裁で違憲状態の
判決が出ました。15人の判事の内11人が違憲状態。4人は国会の裁量権の
範囲を超えているとして違憲。内1人は、選挙そのものを無効とする見解まで
述べています。自らの職を失うような改革を、政治家自身に任せることは無理
なのでしょうか。(少なくともSS業界は、ガソリンの寿命が短くなってしまう水素
社会への対応はしっかりしていると私は自負しています。)
今回の衆議院解散は、消費費税の増税を先送りも論点ですが、与党でさえ、今
増税出来ない程、消費が伸び悩び、実質賃金が低下し、日本経済が本当に
大変な時に「選挙なんかしている場合か」というのか国民の率直な思いでしょう。

企業業績が回復し、従業員の収入が増え幸福感が増し、消費が増え、中小企業
の収益も良くなり、消費者の収入が増えるという好循環が実現するなら、むしろ
円高やデフレでも良いと思います。


広島豪雨 台風襲来 御嶽山噴火 白馬村地震 等自然災害が多かった


今年は豪雨を始め、自然災害に見舞われたと年だと思います。広島豪雨や1年に
二つの台風が上陸や大接近。8月の気象庁の天気概要によれば、日照時間は
かなり少なく、西日本や太平洋側での日照時間は平年比54%となり、1946年の
統計開始以来8月としては最も少なかったそうです。御嶽山の戦後最大の火山
被害や、白馬村を中心にして震度6強地震。その地域への観光客の減少という
直接的な被害だけでなく、日本全体としての観光やお出かけマインドの減少も
少なからず日本経済に影響していると思います。

ここからは 石油&SS業界の重大ニュースです

1.原油価格 高値BOX圏からの大幅下落
下のグラフをご覧下さい。これはNYNEMEXのWTIの期近ものです。
やはりウクライナ問題や直近ならイスラム国問題等、地政学的リスクの高さから
下値を支える一方、シェールオイル開発は、原油価格の上値抑制要因として、
90ドルから110ドルの高値BOX圏でも、長らくもみ合って来ました。
 しかし10月以降、ここまでの急落は、プロでも予想出来ないでしょう。
原油価格の下落はエネルギー輸入国の日本にとっては良いことですが、商社や
大手特約店、或はツワモノ販売店の中には先物を買い、安売りの財源にしていた
人も中にはいるでしょうから心配しています。某商社がシェールガス投資で多額の
特別損失を計上しましたが、それがシェールオイルに広がらないことを祈ります。

また11月28日に開かれたOPEC総会では、結局減産決議はなされませんでした。
それは米国のシェールオイル潰しとなる訳ですが、OPEC諸国が一致団結して
シェールオイル潰しをしているというよりは、何も決められず結果としてそうなった
が事実に近い気がします。しかし翌日以降、WTIの先物は62.8ドルまで大暴落。
一日本の消費者としては嬉しいことですが、これにより先物を買っている業者が
倒産しないか心配です。ちなみに自慢話になるかもしれませんが、私は以前から
あるべき姿は70ドルと株式新聞でもはっきり宣言しております。12/9グラフ更新



2.ガソリン価格の歴史的高値と大幅需要減
少なくとも原油価格が急落するまでは、ガソリン価格は、年ベースでは、歴史的な
高値でした。2008年に原油価格で147ドル/B。国内市況も同年8月の185円が
週間価格では最高でしたが、年平均や年度平均でみれば、今年が最高値となる
でしょう。その結果起きたのが大幅な需要減少だと思います。

消費税での仮需があった3月以降、4月から9月の全国需要は、92.6%にまで
落ちました。弊社直営は約9割です。原因は前述した消費税、天候不順、そして
戦後最大の火山災害となった御嶽山噴火も秋の行楽シーズンに少なからず
影響を与えたと思います。この0.926の9乗、要するこの減少率が続けば、
僅か9年で需要は半減なのです。この現実から目をそらしてはいけません。

3.精製設備廃棄進み精製元売マージン大幅改善

今年の3月末は高度化法による精製元売の設備廃棄の期限でした。私は、
基準年である2008年4月の489万BDから、本年4月の391万BDまで、
20%も削減したことを高く評価しております。但し今後の削減も国主導でよいのか
は何とも言えません。
この設備廃棄と元売が一時期地獄を見た学習効果なのかは分かりませんが、
元売の少なくともガソリン粗利は大幅に改善しました。すなわち元売にとっての
仕入である原油CIF価格から、業転価格や元売指標価格、更にはエネ庁発表の
卸価格までの、精製と販売元売にとってのガソリン粗利は、昨年の10月から12月
の最悪期に比べれば劇的に改善しました。
元売収益も4月から9月までの上半期の業績は決して良くありませんが、それは
ガソリンマージン幅以外の要因です。
4.SSマージン益々低下 落ち込む油外収益 何故SS倒産が拡大しないのか
その一方、SSのマージンは全く改善していません。石油情報センター発表の末端
価格から消費税を抜き、エネ庁発表の卸価格を引いた価格は悪化しています。
そもそも石油情報センターの価格は、SS業者としてはありがたいのですが、
激戦区の実場価格より高いと思います。
反面現実的なのは、ネットで有名なgogogsです。
しかし本当に驚くのは、ジョイフル本田等の異業種が安い業転を買い安く売るのは
当然ですが、その価格は一般的なSSの仕入れと変わらないにも関わらず、元売
販社等が平気で追随していることです。
当社にとって本当に深刻なのは、洗車関連収益の落ち込みが、ガソリン以下の
前年90%を割り込んでいることです。その理由は10月号で述べた通りです。
同様にレンタカーも不調で経産省によれば9月96.2%、4-9月は98.6%だそうです。
5.トヨタFCVMirai 発売決定 東京水素戦略会議で東京では最大100%補助へ
小泉総理の頃から次世代自動車は、燃料電池自動車(以下FCV)と言われて
来ましたが、今年の1年は 過去10年の中で最も進んだ年と言えるでしょう。
 その一つは「水素社会の普及に向けた東京戦略会議」が舛添知事自らの主導
で5月より始まったことです。東京電力、東京ガス、トヨタ、日産、ホンダ、JX等の
大企業委員の中、都石代表として私も参加させて頂いたは大変光栄なことです。
 今回は、2020年のオリンピックに向け「水素社会東京を世界にアピールする」
という絶対的なタイムスケジュールがあり、舛添知事自らが強い意欲を持って推進
してます。5月16日より月一回ペースで開催され、11月18日には具体的計画や、
東京都としての平成26-27年度の補正予算とありがたい補助金も発表されました。
 その反面10月25日発売の週刊ダイヤモンドでは、このFCVと水素スタンドの
記事が32頁にもわたって特集されています。しかしこの記事では、石油業界は、
一律に反対抵抗勢力とされており、私としては極めて遺憾です。また11月下旬には
エネ庁から大幅な規制の緩和を発表され、刻々と状況は変化しています。
このFCV+水素STの話は、1月新年号で特集しますが花とミツバチは浸透中です。
6.太陽光買い取り中断から 条件付き再開へ
弊社10月企画でもご説明した内容ですがその後の追記です。
九州電力は若干条件を厳しく、すなわち1年間を通して、最大30日は、電力を購入
しなくてて良い日を設けるなどの付帯条項をつけて再開するようです。
原発再稼働せず
エネルギー業界人として、原発未だに再開せずは、やはりニュースです。
核廃棄物問題があるので私はソフトランディング派ですが、LNGの輸入価格
低減のためにも各国のLNGプラントが立ち上がる2019年頃、すなわち
オリンピック前年までの限定再稼働はよいでしょう。

アルバイト等の人件費高騰も深刻な問題
パートアルバイトを含み、正社員等を含まない有効求人倍率の話です。
全国平均は、2013年3月の0.87から2014年10月には1.07まで上昇しました。
東京に限ってみれば同期間で、1.21から1.59まで上昇しています。
東京のピークは7月8月の1.62でしたが、そこからは若干減少しています。

読者の皆様もこのあたりの情報や数字はご存じと思いますが、恐ろしいのは
東京を職安別に見た場合の詳細な数値です。
八王子、立川、青梅がそれぞれ 0.42 0.60 0.62と低いのは驚きですが
渋谷は2.09 そして都心等を地域とする飯田橋では、4.71まで上がります。
そしてなんと言っても驚きは 品川ですが5.89で未だに上がり続けています。
よって全国平均や東京の平均1.59で考えていると、都心部のSSには、1300円
出してもアルバイトは来ないと言ってもいいでしょう。ではどうするか。その対策
月刊ガソリンスタンド2014年4月号に期しましたのでよかったらご覧下さい。
その他SS業界で抑えておくべきニュース
その他SS業界で抑えておくべきニュースも色々ありました。
「流通証明」は、大山ならぬ小山鳴動しても何も変わりませんでした。
元売関連では、昭和シェルが12年ぶりに新ハイオクを発売しました。まだ業界全体
のハイオク比率を上げるまでには至っていませんが、今後も注視していきます。
昨年12月に発表された三井物産が所有していた三井石油株の東燃ゼネラルへの
売却も本年2月4日に予定通り実施され、社名も三井石油からMOCマーケティング
となり、7月にはその石油販売事業は、EMGマーケティング社に譲渡されました。
ここまでは、昨年末の発表から推測できることですが、精製専業会社含めて、
それ以外の再編がなかったのも、逆な意味でニュースかもしれません。
弊社そして私のニュース
弊社としては、全直営2年連続JXトリプルクラウン達成は朗報で、その確率は
25%の10乗(5ssが2年)は約百万分の一なので社員とともに大変喜んでいます。
ガス部門では、10月企画でご報告した「東京都の充填所では初めて、全国でも
三番目の事例となる充填所屋根の太陽光パネルの設置成功
」でした。

私、個人としては、実は人生初めてという講演が多かった年です。
@舛添知事のご要請で 東京水素戦略会議の委員を拝命したこと。
A元売の団体である石油連盟様から北海道と東北で5講演を拝命したこと。
 過去の各地石商様のご依頼とは、意味が違うので、身の引き締まる思いです。
B11月14日の名古屋での日本自動車販売連合会様のご講演依頼にも驚きです。
Cよくわか石油 ガスとも 4月と6月に改訂増刷させて頂いたのも感謝です。
 発行から2年と1年経つにも関わらず2014-12-2のアマゾンランクは1-2位です。

D私の「水素社会は花とミツバチ」の主張が日経産業と日経新聞に載りました。
  気愛を入れ ご縁を大切に 感謝こそすべて 来年もよろしく 垣見 裕司