ダブル増税、高度化法の精製設備廃棄の総括
 お陰様で著書「よくわかる石油業界」が、更新増刷となりました
あなたは、「よくわかる石油業界」出版企画の番目のお客様です。
この4月は石油&SS業界にとって、大きな節目になるのではないかと思います。
一つは消費税の5%から8%への大増税です。当然二重課税分も大増税です。
もう一つは、一般には忘れられがちな石油石炭税の2回目の値上げです。
そして2010年の発表以来、元売がその対策に大変苦労して来た 高度化法による
精製設備廃棄の期限を迎えました。元売各社は、その基準をクリヤーしたのか。
その高度化法をもう一度勉強し直し、進捗状況をまとめてみたいと思います。
そしてその大切な節目の時期に、2年前に大改訂した「よくわかる石油業界」の増刷
という誠に嬉しい話も飛び込んで来ました。今月はこの3点の話題でお送りします。
       カウント33000スタート   2014年4月1日更新 文責 垣見裕司 ver1

2012年2月発刊の「よくわかる石油業界」増刷決定 14頁修正までの秘話 

本HPでもご紹介している2013年11月発売の「よくわかるガスエネルギー業界」
その売れ行きが好調なのはご報告の通りですが、その相乗効果なのでしょうか。
2012年2月に震災対応版として大改訂をした「よくわかる石油業界」も、いぶし銀
のような売れ行きで、出版社の在庫が3月末でほぼなくなると話しが来ました。
 で在庫ゼロなら増刷してくれそうなものですが、多くのビジネス書とか業界本は
増刷どころか「初版の在庫がはけて赤字にならなくてよかった」で終わってしまい
「事実上の絶版?」が、実は殆どなのです。
そこで「石油業界に生きた業界本を何とか残して下さい」とお願いしたところ、
増刷を決めて頂きましたが、コストの関係で修正で出来ればしたくないとのこと。
しかし皆様ご存じの通り、石油業界はこの2年で大きなことが沢山ありました。
例えば米エクソンモービルが、日本から大幅な資本引上げを実施するとともに
日本では親会社だったはずのエクソンモービルマーケティングを子会社であった
はずの東燃ゼネラルが逆に子会社化し、親子逆転!。更に今年2月には、関連
子会社であった、三井石油までも傘下に収めたのです。この業界再編問題や
以下の高度化法総括や税金問題も、多くの修正したい頁の一つです。

高度化法の期限を迎え 各社の設備廃棄と削減状況の総括

2010年7月に資源エネルギー庁が告示して「エネルギー供給構造高度化法」。
この通称「高度化法」は、価格が相対的に安い重質原油を効率的に精製出来る
体制を整え、国内の精製業の国際競争率を高めるのが目的」とされていますが、
真の目的は「体質の弱い投資力のない精製元売の精製設備廃棄を強く促す法律」
と私は理解しています。判断基準は以下の式と定め、 現状約10%の装備率を
2014年3月末に、13%に引き上げる目標を掲げただけでなく、精製業者に対し、
現状10%未満なら45%以上、13%以上なら15%への改善を義務付けたのです。
(重質油分解装置処理能力)
÷(トッパー処理能力)重質油分解装置の装備率
精製元売は分解装置を装備すれば良さそうなものですが、このコストは数百億から
規模によっては数千億円も必要とされるため、結果的には、分母であるトッパー
の処理能力の方を減らすのが一番簡単な基準をクリヤーする方法でした。
 
各元売の2010年4月等基準年のトッパー能力と分解装置の設備率と達成状況
グループ名 トッパ―
処理能力
分解装置
処理能力
分解装置
装備率
最低改善
目標率
改善後
装備率
達成状況
JXエネルギー 179.2 20.6 11.5% 30% 15.0% A室蘭閉鎖で達成
出 光 64.0 8.3 13.0% 15% 14.9% B徳山閉鎖で達成
昭和シェル 51.5 8.8 17.1% 15% 19.7% C扇町閉鎖で達成
東燃ゼネラル 66.1 2.8+0.3=3.1 4.2% 45% 6.1% D川崎・和歌山一部削減で達成
コ ス モ 63.5 2.5 3.9% 45% 5.7% E坂出閉鎖、四日市削減でも?
   出所 資源エネルギー庁 各元売HP を元に筆者推定 単位万B/D

製油所の所在地と原油処理能力の推移を特別公開(よくわかる石油業界75頁)

ここで一つ補足が必要なのは、高度化法の設備能力の基準年です。
基本は2010年4月なのですが、前の年に大幅削減を実施してしまった会社等を
救済するため、更に3年遡って、過去最大の時の能力を使ってもよいのです。
その最後駆け込み月である2014年3月は、11日にコスモが四日市の一部削減を
20日には太陽が一部削減を、そして極東石油工業も25日に一部削減発表し、
各社の対応が一気に出そろい、各社3月末までに削減を完了したようです。

以下の図は、本HP発表時点では、業界最新の4月1日付けの各社の製造能力と
基準期間の最大能力からのこの4月までの削減状況を示した圧巻の全体図です。
その能力削減だけをみれば、489万BDから391万BDへの削減なので、元売各社
のご努力には深く敬意を表する次第です。

しかし4月最初の業転市況を見ても、精製元売があるべき利益を出すには、程遠い
市況と言わざるを得ないでしょう。数年前のように、海外の製品市況が安く輸入玉
が入って来てしまうならまだしも、海外高の今でもこの市況では、精製業界に
明日はありません。やはり早急な第二弾の設備廃棄が必要だと思います。


消費税5→8% 石油石炭税も2040円→2290円→今月から2540円/KLのW大増税

消費税は、4月1日より5%から8%に上がりました。駆け込み需要は、最後の
4日間だけで、28日29日が2割、30日5割。31日はSSにもよりますが、5-10割。
すなわち前週月曜日の倍となりました。但し1か月全体でみれば、当社5SSで
9-10%程度のUPでしたが、今本当に心配なのは、4月以降の減販です。


さてこの消費税増税。前回よくわかる石油業界で書いた3年前の平成23年試算と
今月から8%にあがり、かつ高騰している石油製品本体にかけられ、石油業界と
その消費者がご負担される絶対額が、どのくらい増えているのか。総額というか
グロス数字で、正確に答えられる業界人も実は少ないので、改めて紹介します。
以下、平成23年度試算値と平成26年度を消費税8%試算値との比較です。
いずれも石油連盟発行の今日の石油産業2011と2014からの引用です。
 @石油の税抜き売上高 14.9兆円→20兆円 円安原油高が原因
 A上記本体にかかる消費税 7500億円→16000億円 倍増。@及び3%UP効果
 Bガソリン税、石油石炭税、その他の税の総額 約34500億円 ほぼ変わらず
 CBに対するTAXonTAX消費税 1700億円→2800億円
 D石油の売り上げにかかる消費税 A+C 9200億円→18800億円
 E石油石炭税は 単価2090円→2540円で 総額5120億円→6130億円
石油業界における税金問題色々ありますが、私が最も遺憾に思うのは、ガソリン
税や石油石炭税にも消費税がかかってしまうという「二重課税問題」です。
過去消費税が導入された時に、個別物品税の多くは廃止されました。
数少ない二重課税だった酒税やたばこ税は消費税分を調整して併課されました。
また自動車取得税は、消費税10%になるときに廃止されることになっています。
地方税である軽油引取税は、軽油価格のみに係るので「計算が面倒だから」
という事情は、SS側にはありません。従って国が本体価格のみでよいと、法改正
なり、省令改正なり、通達なりを出せはよいのです。
そもそもガソリン税は本来道路建設目的税だったはずなのに、福田総理の時に
いつの間にか一般財源化されましたが、余ったなら減税するべきでしょう。
 もう一つ遺憾なのは「温暖化対策」という美名のもと、大した議論もないまま、
その使い方すらちゃんと決まっていない「石油石炭税」の増税です。2012年10月
2040円から2290円となり、この4月から2540円になる二回目の増税が始まり、
平成28年(2016年)4月からは2800円/klへの増税まで決まっているのです。

日本実業出版社様 修正&更新お認め頂きありがとうございました

業界人として、生きたそして時節に即した内容に逐次更新している業界本
を残したいと真摯にお願いしたところ、「私が増刷分の一定割合を販売する」
というお約束の元に 10数ページの内容の修正が許されました。
出版業界の収益が厳しい中、日本実業出版様には御礼申し上げます。
その他、修正更新が許された頁は以下の通りです。
2015年度に販売開始予定の燃料電池自動車や水素スタンド関連。
この話題は旬なので、用語説明も追加しました。例えば
FCV と FCHV と FCEV の 違いってお分かりになりますか。
その他の目玉は、業界再編図も大幅更新です。是非ご覧下さい。

最新{業界の常識}よくわかる石油業界 の履歴は以下の通りです。
業界ビジネス書として、生き残って来たのも皆様とお陰と深く感謝します。
1997年4月10日 渡辺昇先生が書かれて 初版を発行
2009年4月20日 渡辺昇先生と垣見裕司との共著で、大改訂版を発行
2010年9月01日 第2刷 増刷 修正なし
2012年2月01日 震災対応版として大改訂 垣見裕司の単著となる
2013年3月10日 第2刷 増刷 修正ほぼなし
2014年4月10日 第3刷 増刷 14頁修正・更新が許される

よくわかる石油業界の最新版のご購入について  

書店に並んでいるものは 2014年4月10日発行の第3刷であることをご確認の
上お買い上げ下さい。アマゾン等もいつから最新増刷版になるか、私の方では
わからないので、暫定期間、2冊以上は送料無料で対応させて頂きます。
こちらよりメールまたは、 弊社総務 本間、田辺まで、ご連絡下さい。
 垣見油化株式会社 総務部  電話 03-3263-0811代表 
 10冊以上も大歓迎。何か御礼企画を考えたいと思います
アマゾンでの売れ行きも好調です。
1位と3位 ビジネス・経済 > 産業研究 > 資源・エネルギー
 こちらは石油だけでなく原発を含むエネルギー全般です。
3位 ビジネス・経済 > 経営学・MBA > 資格・就職・MBA > 学生の就職 > 業界研究
 こちらは学生の就職、エネルギー業界だけでなく、正に全産業なので光栄です。
 都知事選でもエネルギー問題の関心が高まり、 斜陽気味だった石油業界
 の復権にささやかな貢献が出来たと、自己 満足ながら嬉しく思う次第です。
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