民主党政権誕生でどうなる石油SS業界
決まる前だからこそ、業界の皆様で理想の姿を考えませんか
12/10更新
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2009年9月16日に誕生した民主党鳩山政権。1955年の自民党結党以来の長い歴史の中で、反自民
の細川・羽田政権がありましたが短命で終わりました。それは、自民党が第一党だったからでしょう。
しかし今度は衆議院の2/3の絶対多数を確保した政権ですので、少なくとも4年間は盤石なはずです。
新政権発足1.5か月で、まだ何とも言えませんが、選挙前に公約したマニフェストを着々と実行して行く
ように思います。そうなると業界人として「ガソリン税暫定税率撤廃」、「高速道路の無料化」、そして
「温室効果ガス1990年比2020年25%削減」の少なくとも3点が非常に気になる問題です。いつもは、
決まったことの解説が多い、本HPでずか、決まっていない時にこそ、皆様に自分のご意見をもって
頂きたく、一個人の私見をご紹介したいと思います。よって、今月は会社の統一した見解ではなく、
間違いや失礼もあろうかと存じますが、寛容の精神でお許し頂ければ幸いです。 文責 垣見 裕司

八ツ場ダム建設中止にみる 鳩山政権のマニフェスト重視の方針
ダム問題について、長野県の田中康男元知事の「長野県にもうダムはいりません」発言が
記憶に新しく、地元等が望んでいない公共工事の中止は大賛成です。しかし既に70%も作り
地元も建設続行というが声が多いと(少なくともマスコミ発表では)伝えられる中、一方的に
建設中止を決めてから「地元住民に会う」と言っても、それは「対話」ではなく、単なる「中止
理由説明」なのでやや強引なのかなあと思います。単に全ての公共工事を一度白紙に戻し
再検討するという方針でも、全国の無駄な工事は、かなり削減出来るのではないでしょうか。
そして地元の方の話と国民世論を良く聞き、場合によっては、建設続行か中止かを投票で
決めるのもよいのでしょう。もし1/2とか 2/3以上の建設続行を望むなら、政権公約でも
「民意はこうだった」のなら「過ちは改むるにしかず」で柔軟に変更すれは良いと思います。
しかしこの八ツ場ダムのような極端な例を別にすれば、選挙前に掲げた公約(マニフェスト)
を粛々と実行していく姿勢は、非常に評価出来ると思います。そして色々な問題について
タイムリーに民意を確認しながら、今までの日本の悪い習慣を改革してほしいと思います。
ガソリン税 軽油税の暫定税率について
石油業界として最も気になるのは、ガソリン税と軽油引取税の暫定税率の廃止です。
現在のガソリン税が道路特定財源となったのは1954年4月で、その単価は13円/Lです。
その後何度か値上げされ、1964年に地方揮発油税と合わせて28.7円/Lになりました。
そして1974年4月「緊急かつ計画的な道路整備」のため、最初の暫定値上げが実施され
その後76年7月と79年6月に上乗せされ、今の53.8円になりました。この1974年は、オイル
ショック時ですので需要抑制効果を狙ったものとも言われていますが、結果的には、道路
建設会社と道路族議員の「利権」になってしまったことは言うまでもありせん。
この暫定上乗せ分の25.1円は、その期限である2008年3月末に終了するはずでしたが、
これに目をつけたのが当時の民主党です。それ以前はマニフェストにもなかったのですが
急遽「ガソリン値下げ隊」を結成。マスコミの追い風と衆参で与野党勢力が逆転する
「ねじれ国会」の影響もあり、2008年3月末に一端廃止されるものの、自民党が優勢な
衆議院の再可決で2008年5月から復活するというドタバタ劇が起き、SS業界は高値在庫
の安値販売や4月末の在庫切れ等多大な損害を受けました。
暫定税率廃止は大歓迎、そして今後も作るべき本当に必要な道路とは何か
小泉改革で道路財源は結果的に余るようになったのなら、その余剰分は国民に返すのが
本筋でしょう。しかし現実は、その余った財源を消化するため、国土交通省職員のカラオケ
セットやマッサージ機、豪勢な慰安旅行やタクシー券、更には「道普請」とかいう誠に不審を
招くミュージカルに化けていました。 しかし皆様も本当に必要な道路を作るなら賛成でしょう。
では本当に必要な道路とは何か。 それは「国民や県民や地元民」が必要とする道路であり、
「道路建設会社」が「公共事業」のために作りたい道路ではないということです。
ではどの道路を先に作るかの優先順位やその基準が大事ですが、私はその投資で渋滞が
解消し、利用者の時間短縮が図れ、コスト削減となり、結果として日本全体としての競争力が
上がるような道路だと思います。また渋滞解消は燃費向上に繋がり、環境にも良いことは
明らかです。従って大都市圏や地方の幹線道路のボトルネック的な渋滞解消に重点配分
するのが良いでしょう。その一方、交通量は少ない地方でも、生命線とも言える道路は必要
なので、正にこの優先順位を議論すべきと思います。

暫定分は、既に一般財源化されている。この事実をどのくらいの国民が知っているのか
実はガソリン税の暫定税率分は、20094月から一般財源化されているのを皆様はご存じで
しょうか。道路族議員に配慮し「必要と判断される道路は着実に整備する」ことも明記、一般
財源から今まで通り、道路予算に回すのは、国民をごまかしているとしか言いようがありません。
では何故、一般財源化がおかしいのでしょうか。消費税は5%、その総額は、約10兆円で、これを
国民が購買金額に応じて等しく負担しています。一方ガソリン税と軽油税の総額は、約4兆円。
その半分を暫定とすると約2兆円。要するに全国民の納める消費税の1/5すなわち1%相当分を
車に乗る人だけが、購買する時の消費税が高いことと同じではないでしょうか。そしてこの一般
財源化の事実を多くの国民が知らないのもまた問題です。民主党には、この問題を根本的に
改善して頂けるものと信じています。

暫定税廃止の時は「手持品の直接還付」等何らかの対応を
暫定分を一気に全部下げるか、段階的に下げるのかによっても違いますが、もし一気に
下げるなら、来年の3月末時点のSSのタンク内にある高値税金在庫は「手持ち品の還付」を
して頂きたいと思います。 2008年3月、民主党の菅氏が、酒税減税を例とした「みなし返品」
方式を提案していました。 当時は「廃止はない」とする自民党の抵抗で実現しませんでしたが
今回は絶対多数を持っているので、手持ちの高値税金在庫を還付する制度をしっかり構築
して頂けるものと信じています。 その一方、例えば毎月2円ずつ1年間、段階的に下げるよう
な方法もありうるでしょう。2円程度なら、毎月の値上げ値下げの範囲内で対応出来ると思い
ます。正しこの場合でも、少なくとも国と元売間のレベルでは対策が必要です。昨年4月、
例えば離島の油槽所には高値在庫を多く抱えていたケースがあり、価格を下げるまでに
半月以上かかった話もありました。そしてその対応が、元売によっての分かれたことも
大混乱の原因でした。今回は、まだ時間がありますので、国と元売との間でもよくよく議論
して、混乱の起きないようにして頂きたいと思います。
温室効果ガス1990年比2020年25%削減発表で、温室効果ガス削減対策税の創設もある?
その一方何らかの環境対策増税も覚悟しておく必要もあるでしょう。鳩山総理は、国連の気候
変動サミットで、日本のCO2削減目標を1990年比2020年に25%と世界公約してしまいました。
産業界のみならず、国内議論を全く抜きにしての発表は遺憾に思いますが、「全主要国の
参加による意欲的な目標の合意が前提」とありますので、米国はもちろん、中国やインドも
参加するなら、日本も本気で取り組まなければならないでしょう。 ではその25%の削減のため
に一体いくらコストがかかるのでしょうか。
この問題は改めて別の機会に取り上げたいと思いますが、例えば太陽電池普及のために、
余剰電力の買取単価を売電と同じ24円から、一気に倍額の48円にする訳ですが、そのコスト
は全世帯の電気料金を一世帯当たり、例えば500円程度上げれば対応出来るようなので、
電力会社の懐は痛まないようです。 石油分野に多くかかっていた税金を電力利用者からも
取る話なので、石油業界として文句は言えないでしょう。仮にガソリン暫定税の24円が公約
通り全額廃止されたものの、例えば炭素税が12円、年間総額1兆円が増税されるならやむを
得ない範囲でしょう。しかしそうなると灯油、A重油C重油や石炭にも課税されることになり
ますから、既に燃料転換で総合的競争力を失っている灯油やA重油等にとって、深刻な重荷
となることは間違いないでしょう。石油業界としては、安易な炭素税には反対しています。

しかしガソリン税だけを見れば、世界的には日本の税金は高くないのです。OECD29カ国中、
アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアに続き4番目に安い (2006年第2四半期
財務省発表)ことはあまり知られていませんが、米国も中国もインドもやるなら、個人的には
納得出来るレベルと思います。下記図参照。
OECD世界29カ国のガソリン価格税負担率表 2006年第2四半期 財務省調査版

ガソリン税、軽油税と言っても道路使用税、電機自動車も負担する「走行税」は賛成
今までのガソリン税軽油税は、道路を作る為の目的税ですから正確には道路利用税です。
しかし電気自動車は道路を走っているのに、この道路利用税を今は全く払っていませんが
これはやはりおかしいでしょう。もし道路利用税なら、ガソリン車も電気自動車も、重量と
走行距離で課税されるシステムが必要です。カーナビとETCで「走行税」を取ったらどうか
という話があり、発想としては正しいと思いますが、莫大な費用がかかるのは問題です。
ETCメーカーも「高速道の無料化でETCは必要なくなる?」と心配しています。そこで私は、
車検時に累積走行距離で課税すれば、ローコストで出来る公平な課税方法だと思います。
例えば3万Km走ったら普通車で3万円。軽自動車なら2万円、大型なら4万円等を徴収する
ので、新たなハードやソフトの投資は皆無です。 道路走行税ではなく、炭酸ガス排出税なら
電気自動車は、その課税を免れ、ガソリン、軽油、LPGタクシー、天然ガス等の化石燃料が
狙い撃ちされてしまいす。石油業界としては反対していますが、道路を作る為の税ではなく、
炭酸ガス削減を目的とした環境対策税なら、最低限の理論としては通っていると思います。
高速道路無料化は本当に良い政策か
高速道路の1000円政策で、土日祝祭日の高速は大渋滞となりました。また1台あたりの
走行距離も伸びたようですが、CO2増加を考えても環境には良いとは言えません。また
バスやトラック等の営業・業務用は、安くならないばかりでなく、走行時間が増え効率が
悪化し、コストUPになるのは明らからに不公平です。ではどうすればよいのでしようか。
私は、自家用も営業用も等しく、そして平日の休日も関係なく、まずは上限を例えば5000円
4000円、3000円とする一方、割引も10%20%と、その渋滞をみながら段階的に変更して
いくのが良いと思います。そして既にある高速道路の維持費くらいは、高速道路の利用者
からの収入でまかない一般財源に頼らないのが、税の公平性の観点からもよいと思います。
しかし驚いたのが、来年度の予算でこの高速道路無料化の為の試験費用が6000億円?
とのこと。上記の 割引率と上限価格を段階的に変動出来るようなシステムに変更する
だけでいいので、常識的には数億円もあったら、十分と思いますが如何でしょうか。
ガソリン税のタックスONタックスの見直しと、貸し倒れ時還付制度の創設を
古くて新しい問題ですが、ガソリン税にも5%の消費税がかかっているのは、国民感情的に
おかしいので、例えば軽油取引税(税抜き単価に5%を課税)のような徴税システムに変更
して頂きたく思います。またもう一つ納得が行かないのは、我々は、国に代わって税金を
徴収しているのに、不幸にして起きた貸し倒れは、倒産した人がガソリン税を納めなかった
訳ですが、現在はこれを当たり前のようにSS業者が納めている事実です。
法人税も固定資産税も倒産した会社からは、国も自治体も取れない訳ですから、ガソリン
税も倒産時は、還付制度があってよいと思います。
モラトリアムは無理がある?今後のために投資する人とやむなく撤退する人に補助を
中小企業重視は大歓迎ですが、関東大震災直後でもないし、救済すべき企業とそうでない
企業の差が不明なので本制度の実現はむずかしいでしょう。よって中小企業が多いSS業界
へのご支援を頂けるなら、SS業界が今後も社会的責任を果たすべく、現在黒字でもその
投資が出来ない、地下タンクの入れ替え工事等をする「やる気のある会社への補助」と、
業界から撤退を余儀なくされた会社の、タンクの撤去補助とその後不幸にして土壌汚染が
見つかった時の土壌改良費への補助等は、今までも素晴らしい政策ですので、民主党政権
でも、今後とも継続して頂ければと思います。
本当に必要なのは資源確保の為の国家戦略
日本は事実上無資源国です。原油は99.6%を輸入に頼り、天然ガスや原発用のウラン鉱石も
同様です。資源が有限である以上、また手の届かない高値になる可能性はあるので、今の
日本に一番必要なのは、石油や天然ガスやウラン鉱石等のエネルギー資源と、技術立国
日本を支えるレアメタル等の希少金属などの資源獲得のための「財源」ではないでしょうか。
これは私の夢に近い案ですが、元売を含むエネルギー供給会社の税引前利益の半分を
「原油等資源開発投資損失引当金」として積み立てるのです。その総額は例えば1社1兆円。
更に電力会社のウラン確保や都市ガスの天然ガスも含めエネルギー業界全体で少なくとも
10兆円くらいの財源を、引当金という損金で、無税で、事前に積み立てるのです。
それを財源として5年以内に投資する。成功すれば、企業の利益となって現れるでしょうから
その時点で課税すればよいのです。先に損金として計上しているので、経営者も安心して
タイムリーな積極投資が出来るでしょう。既に「海外投資等損失準備金制度」はありますが、
この規模は国全体で年間40億円程度の単なる減税制度なので「資源エネルギーの確保の
為の国家戦略」とは全く違います。 これは石油業界だけでなく、電力ならウラン、都市ガス
ならLNG、また技術立国日本を支える希少金属(レアメタル)の資源確保に至るまで、その
適用枠を広げる必要があると思います。 バブル崩壊以降の失われた10年で、国が金融
機関に支援したと言われる金額は約70兆円。産業の血液とも言われるエネルギーの確保
ですから、民主党政権も本気で考えてほしいと思います。
その後の追加情報  12/8 12/10 更新
化学原料用のナフサへのガソリン税課税は、ほぼ見送りへ。
 ガソリン税は、本来道路使用税。ナフサは化学原料。燃やしている訳ではありません!
ガソリン税暫定税率は、財源不足の中、見送り論、段階論もあるが、廃止でほぼ決定?
環境税(温室効果ガス削減税)の具体案が浮上 2009/11月
 1.原油や石油製品に 2780円/kl 課税 現行 2040円/kl に加算
 2.天然ガス、LPGには 2870円/t あたり
 3.石炭 2740円/t    現行700円/t に加算
 4.電力 0.52/kWh     現行0.52円/kWhに加算し 計 1.04円/kWh
 5.ガソリンには更に 17320円/kl加算 し 1と合わせ 50,840円/kl
実施時期だが、ガソリン税廃止と同時に課税では 公約違反との声が出ているが、
現時点では、極めて微妙。12月11日の税制調査会で方向性が決定される見込み。
税制調査会での決定は15日までずれ込むらしいとの情報が入りました。12/10