歴史的転換点を迎えた原油価格
 過去の経験則が役に立たない?、我々は如何に対処すべきか 
あなたは 原油価格並びに末端ガソリン市況関連企画の番目のお客様です。
皆様もご存知の通り、原油価格が110ドル、120ドル、130ドルをあっさり突破し、140を伺う全く予想が付かない
状態となりました。これは、単に石油の値段が上がっているというレベルではなく、20世紀初頭から始まった
石油文明が、実は大転換期を迎え、過去の経験則が、役に立たなくなる領域なのではないかと思います。
しかし日本国内は、あの暫定税率問題の影で、原油価格の史上最高値の更新は余り報道されず、5月に
入ってからは、中期高齢者医療制度や年金問題。そしてスマトラハリケーンと中国大地震のニュースに隠れ、
正にこの異常価格に、驚く感覚すらなくしてしまっております。今月はこの原油価格問題と国内市況、そして
SS業界が取り巻く環境の変化を考えてみたいと思います。更新時 255,000よりスタート。文責 垣見裕司

全く説明のつかないWTI価格。もはや過去の経験則は、役に立たないのではないか
一応の高騰理由は1月企画でも申し上げた通り、中国のエネルギーの爆食を始めインド等の需要増。
OPECの増産余力がほとんど無いこと、ナイジェリア問題、その他地政学的リスクと現物需給的要素。
そして、サブプライムローン問題以降、投機資金が大量流入したという投機要因と相対的なドル安。
しかし、そのすべてを持ってしても、戦争が起こって石油施設が破壊された訳ではないので、1-2月の
90ドルのレベルから、僅か3ヶ月での135ドル。その上昇額45ドル/B。率にして150%は、現業者としては
全く説明がつきません。
 これを私の好きな自然科学的な表現で説明してみましょう。
「水」という物体(液体)の温度が、20度から30度に上がった時は、ほぼ同じ性質を持つ「お湯」と考えて
何ら困ることはありません。また80度から90度に10度上がった時も、高温にさえ気をつければ体積の
膨張は、ほぼ同じです。だからと言って、95度から105度に上がった時も、体積膨張は同じなのか。
小学校低学年なら立派な実験予想ですが、100度手前から沸騰し始めると、そこから先は、液体は
高温の「水蒸気」という気体に変化し、気体の法則に従います。液体の水やお湯しか知らなかったら
沸騰したあとの世界や現象をそれまでの知識や経験のみで予測するはもはや不可能でしょう。
正に原油価格をはじめとするエネルギー資源や更に食料資源までが、正にこのような大転換期を
迎えたのではないかと思います。さて話を現実に戻しましょう。
価格急騰の直接的な要因は、投機筋が買っているからですが、それは一体誰なのでしょうか。
各国各地域の政府系なり民間系なり、色々のファンドがあるようですが、私はひと言で申し上げれば、
「原油が高い方が、より利益が上がり、含み資産が増える人が、買い続けている」という表現が、最も
正しいのではないかと思います。彼らの最大の強みは、現物と先物の両方で利益を上げていることです。
その意味では、この値上げは当分続くと言えるのかもしれません。
またある会社は、「150ドルはもちろん、200ドルになってもおかしくない」とコメントし始めましたが、
これはもはや、「マッチポンプ的な煽り発言」に思えてしまうのは私だけでしょうか。とにかく原油高騰
による被害者は、日本はじめとする資源を持たない国であり、その国民であり、最終的には、その
弱者に負担が行ってしまうように思います。
             
WTI価格推移表 オーバルネクスト社ご提供

原油市場に、本来の現物(スポット)価格は、もはや存在しないのかもしれない
「過去このHPで、WTIは先物、中東原油は現物と申し上げて来ました。しかし、3月企画のドバイ訪問
企画でご報告申し上げたように、現物は1週間で1カーゴしか出荷せず、期日には反対売買で、売り
買いを解消し、現物引取り義務を回避出来るプラッツウィンドウと呼ばれる電子取引が、本当に、
「現物取引」と言えるのか、これは極めて疑問だと思います。
例えば日本のRIM社が発表する、京浜地区ガソリンは、売買後の事後調査ですから、間違いなくその
現物取引は発生しています。しかしドバイ原油は、現物の取引はほとんど無いと言っても過言では、
ありません。この点をHP掲載以来、多くの業界関係者や業界有識者にお伺いしましたが、皆さん
「その通りだ」とおっしゃる方が大半でした。先物価格が「暴走」しても現物市場が電子市場と化して
しまった今、このもはや価格の暴走は、止められないかもしれません。


LNG等他のエネルギーは、どうなっているのか、鉱物資源はどうなのか
まず液化天然ガス(LNG)を考えて見ます。LNGは開発から液化して出荷するまで、莫大な設備投資
がかかるので、通常長期契約です。そしてLNG価格は、原油価格とある程度連動させる方式ですが、
一定の価格帯を超えて油価が上下すると、LNG価格の変動が抑制されるる「S字曲線」と言われる
関係式で決まっています。しかし昨今の原油価格が、その想定範囲を遥かに超える水準となったこと
そして資源をもつ売り手側が、価格決定方式の変更を強引に迫っていることから、今後のLNG価格は
かなり値上がりが予想されると思います。ちなみに日本のLNGのCIF価格の推移は以下の通りです。
S字曲線なので、そんなに上がらないと思っていましたが、2005年1月の282ドルから、2008年4月は
593ドルと2倍以上です。この間原油は、輸入CIF価格ページの表の通り、2005年1月の38ドル/Bが、
2008年4月は100ドル/Bで、こちらは2.5倍ですから、LNGもそこそこ上がったと言えるでしょう。


1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2005 円/T 29,226 30,142 30,487 31,599 31,650 31,897 34,698 35,962 36,602 38,209 40,678 40,325
$/T 281.94 290.30 290.82 294.90 298.53 295.61 313.73 322.41 332.11 337.11 348.66 337.39
2006 円/T 39,318 42,679 43,503 40,974 40,727 41,536 41,045 43,585 46,353 44,169 44,285 44,564
$/T 338.66 365.02 370.27 348.56 358.80 368.53 355.89 376.09 396.92 374.51 374.79 382.43
2007 円/T 44,031 43,356 42,269 43,555 44,896 44,987 46,392 47,643 47,340 51,557 54,012 52,710
$/T 369.39 358.43 356.88 368.48 375.41 369.86 377.23 400.30 411.05 444.61 475.04 477.49
2008 円/T 57,094 58,131 59,539 59,773
$/T 516.82 543.79 569.97 593.93


更にLNGも先物スポット市場がありました。ICEというのは、ロンドンの電子市場でしょうか。
ICE天然ガスは下記の通り暴騰しておりました。 

  単位 1サーム(therm)=100000BTU=25,200kcal当 通過はボンド補助通貨ペンスです。




エネルギーだけでなく、レアメタル等鉱物資源も暴騰している
下記グラフは、NYの白金の先物価格です。原油がまだ40ドル/Bだった、2005年1年には、800ドル/オンス
でしたが、昨年秋から暴騰し現在2250ドルの最高値更新のレベルまで来ました。2005年1月比の実に
2.7倍となっています。この倍率比較からみれば、決して原油だけが独歩高とは言えないでしょう

先物市場に一言苦言を
先物市場の本来の目的は、リスクヘッジであった筈です。お客様と電気と熱を供給する契約をした。
その電気と熱は5年間据え置きなので、発電エネルギーとして使う石油も今の価格で固定させたい。
或いは、航空業界なり運送業界なり、競争が激しく、燃料コスト増を即転嫁出来ない会社が、事前に
購入し、リスクヘッジする。このような目的で先物市場が使われるなら、先物市場はすばらしい機能を
果たしていると思います。
しかし現在は、どう考えても巨大マネーゲーム場と化しているのではないでしょうか。
ある有識者のお話を聞いて、改めて驚いたのは、証券市場が、インサイダー取引や風説の流布等
を厳しく規制し、取り締まっているのに対し、先物市場は、殆ど野放しに近いそうです。
150ドル200ドルは当たり前の根拠を聞けば、今にも戦争が起こるような内容が多いのですが、
幸いにしてイラク戦争以降は大きな戦闘は起きていません。ということはあれは不安を煽った風説の流布。
更に為替市場でも、国家の要人が「今の自国通貨は売られすぎ、これ以上変動したら徹底介入する」
と言っただけで、実際は様子見だけの「口先介入」は日常茶飯事ですから、よくよく考えれば恐ろしい
世界です。
本気で何らかの規制を検討すべき時ではないか
時も折り、青森で、日米中韓印のエネルギー相会議、そしてG8、更にG8ブラス中国、韓国、インドの
エネルギー大臣会議が開催されました。結論としては
 @「現在の価格は異常、深刻な懸念を共有する」
 A短期的な対策としては、省エネルギーや代替エネルギー開発の促進
 B長期的には、上流下流の投資環境を改善し設備投資を拡大する
 という決定はされたものの、肝心な事は
 CG8財務大臣会議で議論することを歓迎する
との共同声明に留まったことを極めて残念です。というもの議論としては、
 「先物市場の投機的な動きは極めて問題、何らかの規制を検討すべき」という議論がなされたそうです。
規制賛成は中国、反対したのは米国、そして煮え切らない日本という構図であるという話を聞きました。
折角投機規制が議論されたのに、各国の利害の対立で纏まらなかったのは極めて残念です。

では、もし先物市場を正常化させるならどんな手法があるのでしょうか。あくまで私見ですが
 1. 購入枚数制限を制限する。(株式市場で言う、空売り防止的な対策)。
 2 .市場参加者を制限する。(実際に石油を消費している運輸会社とか石油販売会社等に限る)
 3. 前項2の購入数量も、前年同月の消費数量を上限とする。
このような規制を公的権力をもって行えば、投機分が先物市場であぶり出されることとなり、価格は
沈静化に向かうでしょう。それこそ、「2010年からこの規制を段階的に始めます」と発表するだけで、
先物市場から投機マネーが逃げ出すでしょうから、それこそ口先介入だけで大きな効果があると思います。
心配なのは、大幅な需要減、2008年度の短期だけでなく、2020年 2030年はどうなっているのか
前月企画の総括でも申し上げましたが、5月の需要減というか需要収縮は、予想を上回るものでした。
「お客様のお車の燃料タンクは一杯なのだから、5月は当然減るでしょう」と楽観している業界人も
いますが、「4月は安く買えたので、ドライブに行こう」というお考えよりは、「益々上がるから大切に使おう

と意識されていることを、ご来店されるお客様から肌で感じております。
しかし、業界として本当に考えておかなければならないのは、むしろ長期の方でしょう。
例えば、経済産業省が2006年5月に発表した新・国家エネルギー戦略では、日本のエネルギーに
おける石油依存度を、2003年度48.3%、2004年度46%を、2030年には40%にまで下げるとしていますが
あと6%、割合を減らすのにそんなに時間がかかるでしょうか。あと20年も必要とするでしょうか。
すなわち、2006年3月発表の新エネルギー国家戦略策定当時の前提条件が、この2年で大幅に変わった
と言わざるを得ないでしょう。この2年間の激変要因を挙げてみます。
 1.原油価格の高騰並びに国内石油製品価格の高騰
 2.A重油等の燃料油のLNG等への燃料転換。需要収縮等による販売数量の大幅減少。
 3.車の省燃費性能の向上。原油価格の高騰に伴い、より技術革新の速度が向上する。
 4.新車販売台数の前年割れのみならず、絶対保有台数(登録台数)の減少が始まる。
 5.若者の車離れ、少子高齢化社会の進行による運転可能世代の減少。
基礎データの前提条件が激変した今、早急なる需要想定の見直しが必要でしょう。
来月の末端価格は170円以上か  それは日本国内の過去最高価格を意味する
5月27日現在、元売各社は、6月の値上げを11-13円と発表しています。
5月のガソリン税復活の25円+製品代を別にすれば、製品代値上げとしては、過去最大です。
まさか4月末のような月末3日間で9日分売れるような大混乱は起きないと思いますが、一昨年夏の
5円値上げ時は、小パニックが起きましたので、やはりそこそこの大型仮需要はあると思います。
5/23、当社系列の新日本石油は、5/30と31には早くも計画配送にすると発表しました。
そして肝心の6月価格ですが、直近の5/27が160円なので、間違いなく170円は超えそうです。
そしてこれは、今の石油情報センターが始まって以来の最高値であるだけでなく、当社調査による
高速道路価格の過去最高である1985年11月の171円に迫るか、場合によっては突破するかも
しれません。正に日本史上ガソリン最高値となりそうです。
SS業界の生き残りマージン7円/L 固定論は、もはやおかしい
SS業界で使われ、SSの価格&数量競争力を表す数字として、損益分岐点ガソリン粗利単価が
あります。元売によって色々な呼び方がありますが、新日本石油では、T指数と言っております。
その目標値として「念仏」の如く、唱えられているのが、T=7円、ティーセブンです。この指数は、
ガソリン販売数量に反比例して下がるので、見かけ上競争力が強くなるのですが、、量販志向が
強まり、結果的に価格のみの過当競争体質を生み出したので、私は必ずしも好きではありません。
さてガソリン価格が100円の時は、売り上げ粗利7円は、7%です。小売業界としては、通常粗利は
20-30%以上なので、我々SSもその位の割合は欲しいところですが、100円当時、半分以上が
税金であることを考えると、100歩譲って仕方がないのかなあと思っていました。
しかし6月に170円まで市況が上がると、粗利7円は、もはやたったの 4% です。
その170円のお客様が、もしクレジットカードで購入されたとすると、元売によっても違いますが、
その手数料は、1-2%、すなわち1.7円から3.4円を、貴重な7円から取られることになります。
更に、SSの土地や建物を元売から借りていれば、その賃貸料(営業料)は、最低4円以上。
すなわち、カード手数料とハード代だけで5.7円から7.4円かかるので、人件費などは、洗車等の
油外商品から稼せがなければならないのがお分かり頂けると思います。
そしてもし不幸にして貸し倒れでも発生したら、利益率4%では、大変なことになります。
従ってガソリンがこれだけ高くなった今、競争力の指標としての損益分岐点ガソリン口銭は、
幾らでもかまいませんが、SS業界としてのあるべき口銭は、最低10円以上をお願いしていく
必要はあると思います。
我々SSは、どうすれば良いのか
ひと言で申し上げれば、ガソリン数量に依存せず、そのSSならではの付加価値サービスの提供と
そのサービスが売り手側の自己満足ではなくお客様の感動を伴っていれば、そこに利益が生まれ
結果として生き残るすべはあると思います。「生き残るために、あとこれだけの売り上げと粗利が
必要だから、販売しろー」というのは、実は本末転倒なのです。
しかしこのような綺麗ごとだけで、全てのSSが生き残るのは難しいでしょう。誠に辛い予想では
ありますが、数字だけで言えば、現在45000箇所あると言われるSS数が、4万になり3万にまで
減るのは時間の問題でしょう。更に言えば3万で止まるという保障もありません。
新日本石油の約10000SS中 覆面による 顧客満足度調査 第一位
さてこのような誠に厳しいSS業界ですが、本当に嬉しいことがありましたのでご紹介します。
新日本石油が企画されている全国の特約店SS表彰において、弊社のオートジョイ八王子と
オートジョイ西八王子が、CS(顧客満足)部門で表彰されることとなりました。
新日石の東京支店の約500のSSがあるので、その東京代表の4つの狭き枠の中で、弊社SSが
50%の高確率で二箇所も入選しただけでも快挙なのですが、集計の結果、全国約1万箇所の
新日石SSの中で オートジョイ西八王子SSが何と第1位となりました。昨今 
 
 真の顧客満足は従業員全員の心からのやる気と満足度から生まれる。
 従って会社は、その従業員満足度の向上への継続的な努力

を実践した来た弊社にとっては、最も嬉しい賞を頂いたと思っております。
そして、去る6月11日、東京のホテルニューオータニにて、表彰式と感謝式が行われました。

西八王子SSの田中浩二所長、(川浪副所長)、そして坂本譲二前副所長。
また同じくCS部門で表彰された八王子SSの福高志所長、本当におめでとうございます。
これらは、従業員の皆様の地道な努力と成果の積み重ねだと深く感謝するとともに、皆様と
同じ会社で仕事をしていることを本当に嬉しく、そして誇りに思います。
これからも、CS第1位SSとして、その運営特約店として、社会的役割を果たして行きたいと
思います。



 


       ご意見ご要望ご感想はこちらから 垣見 裕司 2008年6月13日更新 Ver3