ジメチルエーテル(DME)とは何か?
期待される新燃料の紹介とその今後を考える
拝啓 あなたは5月企画の 番目のお客様です。
皆様ジメチルエーテル(DME))という言葉を聞いたことがありますか。石油でもガスでもないのですが、
次世代の燃料として昨今注目が集まっています。今月はこのDMEをご紹介したいと思います。
例によって専門分野ではないので、文中に誤り等がありましたらご指導下さい。文責垣見裕司

ジメチルエーテル(DME)とは何か

分子式で書くとCH3OCH3で、メタンCH4のHを一つとって酸素Oで繋げた感じです。
一般に酸素原子にアルキル基が2個結合したものをエーテルといいますが、CH3-が二つ
(ラテン語で1はモノ、2はジ、3はトリ)結合してますので、ジ−メチル−エーテルとなります。
常温では、無色無臭の気体ですが、6気圧に加圧すると容易に液化するところは、当社の
得意とするLPGに物性が似ています。
 現在の用途は塗料や農薬、化粧品用のスプレー用噴射剤として多く利用され、国内で
年間約1万t、世界で15万t程度の需要です。
 フロンガスにかわる噴射剤の代替品として利用が検討された際、毒性が研究されましたが、
メタノールより極めて低く、LPG並の超低毒性といえます。
 またフロンの代替品とされたことからも分かる通り、大気中での分解時間は数十時間程度で
温室効果やオゾン層破壊の懸念は無いとされています。

DMEは、どうやって作るのか

 DMEの製造技術は、「メタノール脱水法」と水素と一酸化炭素から直接合成する
「直接合成法」です。後者は、水素と炭素があれはDMEを合成出来るので、天然ガスを始め
石油残渣や家畜糞尿などの有機物、更に一般にはイメージし難いのですが、石炭からも
このDMEが合成出来ます。
 この様に石油に比較し埋蔵量が豊富な天然ガスや石炭等からDMEが合成出来ることは
今や古い言葉になりましたが、脱石油燃料としても期待されています。
結果としての反応式は、以下の通りです。
  3CO+3H2→CH3OCH3+CO2
 4月11日一部新聞で、三菱ガス化学がDMEの生産や販売会社を設立し、年間50万tを
2005-6年から供給開始?との記事が掲載され話題になりましたが、同社やNKKなどの生産は、
関係者には広く知られています。

主な特徴をLPGとの比較で考えると

ではDMEの特徴はどのようなところでしょうか。詳しくは下記表の通りですが、
これを弊社の得意とする、LPGとの比較において考えて見ます。
1.重量当りの発熱量(kcal/kg)での比較では、メタノールより高いがプロパン、メタンより低い
  これは容器に充填して同カロリーを運ぶとすると1.6倍のコストUPとなる。
2.気体状態の発熱量(kcal/Nm3)は、メタンより高くプロパンより低い。
3.DMEはプロパンより沸点が高い。
  これは同条件ではプロパンより気体発生量が低いことを意味し、寒冷地等では
  プロパンの2倍程度の設置本数が必要になると考えられる。
4.火炎はメタノールとは違い可視青炎であり、天然ガスのコンロが一応使用できる。
  ウォッペ指数(総発熱量をガス比重の平方根で割った値)や燃焼速度指数等から考えられる
燃焼特性としては、都市ガス用のガス種で表すと12Bあたりになりそうです。
従ってLPGの器具は使えません。また都市ガス13Aも使えないことはないのでしょう。
理論的には、可変式空気取込用ダンパの開度を6−7割に絞れば良さそうですが、
燃焼実験をした訳ではないのでなんとも言えません。将来DMEが商品化されることがあれば
器具メーカーから対応マニュアル等が出ると思いますのでそれに従って下さい。
安全性は、完璧を期す必要があり、調整を要することは言うまでもありません。

しかしこの燃焼特性以上にメタンやプロパンに無い性質としてゴムなどに含まれる可塑剤を溶かす
という性質があります。アルミや亜鉛等まで腐食させてしまうメタノール程ではないにしろ、ホースや
メータ内部等該当するゴムを使用している場合は対応を考えないといけないかもしれません。

DMEと関連燃料の物性表

期待される用途は軽油の代替か

対LPGではあまり長所がなかったDMEですが、メタノールやその他ガス燃料にはない、
セタン価55〜60と軽油より高いというすばらしい性質があります。
 市販の2t積みトラックのエンジンはそのままの状態で、燃料噴射装置のみを一部改造
しただけで走行が可能だったとのことです。試験結果は、
1.排気黒煙が全く発生しなかった。
2.20%程度のNOx削減効果が得られた。
3.軽油よりも静粛性が認められた。
4.軽油と同等の走行性能を有した。
とのことなので、軽油代替燃料としては、十分期待出来そうです。

今後の課題と将来性

以上のようにDMEは、石油やLPGのように中東に依存しないだけでなく、天然ガスを始め、
水素と炭素を含むものなら色々なものからの合成が可能という意味で、資源の無い日本に
とって大変魅力的な燃料であることは間違いないでしよう。
 今後は、現在のパイロット的なプラントより遥かに大きい規模での生産体制と価格低減を
図ることが重要でしょう。しかし現在のコスト優先の経済社会では、更には石油価格がこれだけ
乱高下する環境では長期の大型投資は難しいのかもしれません。
 そこで当初は火力発電のように大型のニーズを一定期間法律で確保してDMEという商品を
育成することが必要なのかもしれません。
 一方、今の天然ガス等も供給出来るエコステーションですらスムーズに全国に普及しない中で
このようなことを申し上げるのは、かっこ良すぎるかもかもしれませんが、我々流通レベルの
インフラ整備も必要でしょう。現在の業界環境下でこれらの投資リスクを負担することは全く
考えられませんので、新エネルギーの誕生と保育器生活間だけは、ご当局の中長期の戦略と
確たるご指導が必要なのではないかと思います。