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イスラエルvsイラン戦争勃発も停戦合意 原油価格高騰後下落。ホルムズ海峡は? 補助金復活 |
米国とイランの核開発交渉が行き詰まっていただけかと思いましたが
数日前から、大使館員の避難は始まっていました。トランプ米大統領は
イスラエルによるイランへの軍事攻撃について、「起きる可能性が高い。
中東で大規模な衝突の可能性がある。イランとの交渉は難航しているが
イスラエルが攻撃すれば状況を悪化させる。イスラエルの攻撃を望んで
いない」と発言しています。
6月13日(金) イスラエルはイランに対し空爆開始
イスラエルは13日、イランの空軍施設、防空システム、そして核関連
施設などを空爆。またイランの精鋭部隊「革命防衛隊」トップのサラミ
総司令官ら軍高官の殺害を発表。イスラエル軍の発表では、200機
以上の戦闘機によって、イラン全土の100以上の標的を攻撃。
中部ナタンズのウラン濃縮施設や弾道ミサイル拠点を空爆したほか、
サラミ氏と、軍と革命防衛隊を束ねるバゲリ参謀総長、革命防衛隊
空軍のハジザデ司令官らを殺害し、防空システムも破壊したとのこと。
6月14日(土) イランはイスラエルに数百発ミサイル発射
イランもミサイルやドローンで反撃。双方の死者多数となり事実上の
交戦状態。これに対し、イスラエルはイランが更なる攻撃を続ければ、
イランの収入源である石油基地を攻撃すると警告。
国連安保理も緊急会合。双方に自制を求めた。
6月15日(日) から25日(水)まで
6月15日から17日まで
米イラン核協議中止を双方が発表
イスラエル軍は、イランの石油施設などインフラに空爆拡大
イスラエルが攻撃地拡大 イラン当局「死者224人、9割は民間人」
イスラエル、イランの国営放送を攻撃 生放送中断
トランプ氏、G7の2日目を異例の欠席へ 中東情勢対応のため帰国
イスラエルがイランの燃料施設攻撃
イスラエル、イランの地対地ミサイル発射台の3分の1破壊
6月18日
イスラエルの攻撃でイラン地下核施設に「直接的影響」 IAEA発表、
6月20日
トランプ氏、イラン対応「2週間以内に決める」と発表。米軍参戦か
6月22日
米本土からB2爆撃機から超大型バンカーバスター投下し、
イラン核施設空爆 極秘作戦「ミッドナイト・ハンマー」
トランプ米大統領「まだ多くの標的残っている」
6月23日
イラン国会「ホルムズ海峡封鎖承認」 原油価格上昇
トランプ政権高官、相次いでイランに交渉呼びかける 報復攻撃を牽制
6月24日
イラン、カタールの米軍基地をミサイル攻撃 核施設攻撃への報復
但し、事前にカタールや米軍に知らせていたと後から分かる。
米軍に事実上の被害なし。停戦に向けてイランの面子を保つためか
トランプ氏「停戦が発効」と投稿。原油価格は下がるが双方からの
発表無し。その後、双方から停戦違反のミサイル攻撃があったと発表。
トランプ氏激怒するも その後沈静化し、「完全な停戦で合意」とSNS投稿
6月25日
イスラエル首相「歴史的勝利」と発表。(ガザは戦闘継続)
トランプ氏、発言を修正 イランの体制変更は「望まない」
イランの方も歴史的勝利。イランの威光で停戦が実現したと発表
NY WTI価格の推移
NY WTI先物原油価格の推移です。4月から6月は60ドルを挟んで
65ドルまでの幅に推移してきましたが、同地域の緊張感が高まる
につれ、緩やかに上昇。13日のイスラエルの空爆開始で78ドル
付近で一気に上昇しました。
WTIは実需の数百倍の取引がされているいわゆる投機市場です。
従って軍事専門家ではない我々エネルギー業界人が戦争の実態
を知る方法は、このWTIの動きを注視するのがいいでしょう。
私として記憶に新しいのが、1990年8月にイラクがクウェートに
侵攻したことをきっかけに勃発した湾岸戦争です。原油価格は
急騰しましたが、アメリカを中心とする多国籍軍がイラク軍に攻撃
を開始、戦車同士の地上戦はあっという間に終結したので、原油
価格も初日に暴落です。投機市場の怖さは、今でも忘れません。
日本の高い中東依存度、ホルムズ海峡依存度
ところで日本の原油輸入における中東依存度は何%かご存知で
しょうか。第1次オイルショックの1973年は77.8%でした。その後は、
中東依存度を下げるべく購入先をインドネシアとかロシア等に
拡大し、多角化を図ったのですが、2023年度の中東依存度は
約95%です。この中でオマーン原油他の一部はホルムズ海峡を
通過せず、出荷出来る施設もあるのですが、そもそもオマーンの
比率は1.1%しかないので、残念ながら中東依存度=ホルムズ
海峡依存度だと思っておけば、間違いないと思います。
ではもう一つの心配。イランによるホルムズ海峡封鎖はあるのか。
ずばりないでしょう。もしやれば、サウジ他、下記地図のペルシャ湾
(アラビア湾)にしか原油出荷設備を持たない産油国を全て敵にして
しまうからです。イラン国会で6月23日のホルムズ海峡封鎖決議が
されましたが、それは脅しのみで、実際には出来ないと思います。
中東依存度(円グラフ)出所エネ庁 中東地図(著作権フリー)
本稿は業界人向けのマニアック解説です。
1 サウジには、その国土の東西をつらぬくパイプラインがあり、
紅海側のヤンブーという港からも、原油の出荷は可能だか、その能力は
限定的。万一ホルムズ海峡封鎖なら原油価格は、2倍3倍のレベル。
2 我々日本人にはペルシャ湾だが、過去ドバイとUAEを訪問の際には
アラビア湾と事前レクチャー。ペルシャとアラブとの長い歴史がある。
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今後の世界やロシア他に与える影響 (全くの私見です)
今回は私にとって驚きや疑問の連続でした。以下端的に記述します。
国連決議もないのにイスラエルのイラン攻撃。自国で地下各施設を破壊
出来ると表明しているのに、米国は2週間で決めると言いながら僅か2日で
参戦。B2がバンカーバスターを搭載し米国本土から空中給油を繰り返し、
米国とイランの1万kmの距離の往復。親イラン国やロシアはステルス機
とは言えこれに気がつかないのか。イスラエルの最初の攻撃でイラン空軍
は壊滅したのか。戦闘機を発進させ抗戦したというニュースがない。
映画『トップガン マーヴェリック』では、アメリカ海軍が攻撃した敵国が
F-14を運用しているという設定だった。イランは革命以後、米国との
関係は悪化し、部品供給は受けられないのに、今回のイスラエル
空軍の最初の攻撃で、イランの空軍基地に止まっていたF14を破壊する
動画が公開されていた。偽造AIで動画でなければ、イランは本当に
革命以前のF14を使っていた。本年1月には、イランはロシア製の
最新戦闘機スホイSUー35を50機?購入する契約が締結し、その内
2機が出荷されたとイラン革命防衛隊が発表。しかしロシアは
ウクライナ軍の蜘蛛の巣攻撃で航空戦力をかなり失ったもよう。
それで新型機が納品されなかったのか。一時、険悪となったトランプ
大統領とNATOの関係も、NATOがGDP比5%を約束したので関係改善。
イランの大敗で一番マイナス影響を受けるのはロシアかも知れない。
北朝鮮、ロシア、中国に接する日本の防衛費増はどうするのか?!
(万一ホルムズ海峡封鎖で大変なのは実はLNG。これは別の機会に)
(政府は補助金を復活させたが都議会自民は大敗。どうなる参院選)