ガソリン補助金は大幅縮小され定額10円へ
 今後も下がるかは、原油価格と為替レート次第です
あなたは定額補助金移行問題の番目のお客様です。

5月まで継続されていた激変緩和補助金が大幅に変更されました。しかし
正しい報道は少なく、10円下がるや全国平均は185-10=175円になる。
全国平均は168円になるとの有識者の解説の切り取り報道も見られました。
また資源エネルギー庁の発表も、私の能力不足なのか良く分かりません。
むしろ説明を難しくして、本当は補助金の大幅削減なのに、更に10円下がる
という、選挙対策なのではないかと思いたくなります。

よって本緊急企画は、おしかり覚悟で、辛口でその要点を記述しました。
その一方、私は補助金変更の表現や説明に対しては上記の通り疑問を
感じますが、全国平均185円目標で、過去は42円出ていた補助金が、定額
10円になることは、ガソリン税暫定税率が、法改正することなく、10円下がる
こととほぼ同じなので、基本的には賛成です。
                2025/5/23 文責 垣見 裕司

補助金は大幅縮小 過去最大41.9円から 定額10円補助になりました
まず最初に申し上げたいのは、今までの補助金制度は、全国平均
185円を目標価格にしていたため、原油価格が高騰したり、円が安く
なったり、それが重なった時は、最大41.9円も補助が出ていました。
下記のグラフをご覧下さい。黄色枠の2022年6月頃です。補助金が
無ければ216円になっていた計算なので、国民としては大歓迎でしょう。



一方5月企画の通り、トランプ氏の相互関税で世界経済が減速する
のではないかとの観測から、原油は大幅に安くなり、また円高に
なりました。よって上記グラフの右上記載の通り、5/15〜21の週は
補助金ゼロでも、全国平均は5月19日に182.1円まで下がりました。

変更後の初支給額 基本5円+原油コスト前週比増の2.4円=7.4円 

そして初支給の補助金は基本の5円。そして補助金がゼロだった
前週に比べ、原油コスト(ドル換算の原油価格と為替レート)が
2.4円上昇したので、それも加え7.4円となりました。
尚、この補助金は、我々のSS業者にではなく、元売や輸入商社等
に支給
されるのです。

SSでは、「いつから下がるの」と良く聞かれるのでお答えします。
例えば当社SSの月間販売数量は、約100KLだとします。地下タンク
の容量が30KLなら、月3回しか在庫は回転しないので、少なくとも
1-2週間後からの高値在庫が少なくなってから下げたいのが本音です。
しかし現在のガソリンは、品質にほとんど差が無い市況商品なので
地域最安値店が下げ、自SSの隣のSSも下げたとなれば、在庫評価
は大赤字なのですが、順次下げていかざるを得ないのが実情です。

今後のSSの販売価格はどうなるのか

新しい補助金は最大10円しか出ません。それを最初の週に既に
7.4円も使ってしまったので、あと2.6円しか下がる余地はありません。

従って「今後の価格はどうなるの」と聞かれれば、@原油価格と
A為替レートの二つの要因で決まるとしいか言えません。個人的には
例えばWTI価格が65ドル以下を、為替レートが145円以下の円高
でないと、下がるどころか値上がりしてしまう可能性もあるのです。

ちなみに以上の2点要因を「円/L」に直す計算式は以下の通りです。
1バレルは、159Lです。原油価格は、60ドルと65ドル。円レートは、
140円と145円/ドルで、4つの例で計算します。

65ドル/B÷159Lx145円=59.3円/L
60ドル/B÷159Lx145円=54.7円/L

65ドル/B÷159Lx140円=57.2円/L
60ドル/B÷159Lx140円=52.8円/L


これは余談ですが、ガソリン税は暫定税率25.1円も含め合計53.8円です
エネルギー資源のない日本が、産油国の輸出価格と同じくらい税金を
取っているだけでなく、このガソリン税には、消費税10%の5.4円も加算
されるので二重課税問題はほとんど議論されません。残念です。

WTI原油価格 と 円ドルレートの推移

NY WTI先物価格  ドル/B


円ドルレートの推移


誤解を招きやすい 10円/L 定額引き下げボスター

右のポスターをご覧下さい。SSの店頭
表示を想定したものと思いますが、よく
読まないと5月22日から10円、販売価格が
下がることを想像させるような気がします。
まして車で道路を走るお客様からは、
10円しか見えないでしょう。熟慮の結果、
当社SSでは、末端価格が5月22日比で
10円下がってから掲載することにしました。

185円目標の補助金から定額10円制への変更は賛成です

冒頭でも説明しましたが、今回の補助金改定は大賛成です。
個人的感想ですが、私は政府が末端価格を統制すべきではない
と思います。やるなら電気や都市ガスと同様、一律定額補助です。
また今回の補助金の期間はガソリン税暫定税率問題の結論が
出るまで
とのことですが、暫定税率問題とセットで考えられている
のも評価出来ます。更に本来のガソリン税は道路利用税というか
道路という社会インフラの維持のためのはずです。車体が重く
タイヤの耐用年数も短いことが判明したEVにも、しっかり道路
使用税を取って欲しいです。例えば車検時に、過去2年間等の
走行距離に対し、車体重量別の単価をかければよいと思います。

SS業界人として申し上げたいこと

この補助金は元売に支給されており、我々の仕入価格に内在して
いるだけなのです。従って各SSは、最低限の経費と持続可能な
利益を乗せて販売価格を決めているだけで、政府に末端価格を
指示されている訳ではありません。
しかし以前会計検査院からこんな指摘をされました。要約すると
事業開始前(2021年4月から2022年1月)の卸価格と販売価格の
差は平均1gあたり17.8円だった。開始後(22年2月から23年3月)
は同19.4円で1.6円広がった。22年2月から23年3月に交付された
補助金額と、ガソリン販売数量などから推計した価格抑制額
(1兆2671億円)は交付額(1兆2773億円)を約101億円下回った。
要するにSS業界がネコババしていると解釈出来るので極めて
遺憾です。この時期には、岸田総理は経済界に賃上げを要請して
いました。当社も毎年約4%上げています。電気代も上がりました。
不動産価格も上がり固定資産税も上がりました。従ってこれらを
販売価格に転嫁するのは当たり前のはずなのです。

ガソリンスタンド業界、特に東京都のSSの存続の危機

日本全国のガソリンスタンド数は1994年度末で60421箇所でした。
直近の2023年度末(2024年3月末は)27414SSで半分以下です。
東京都では過去3570箇所あったのに今は900箇所を切って1/4
以下になりました。そうです。全国で恐らく一番地価が高いのに、
それに見合う利益がないのです。勿論、SSの上にビルを作った
例もありますが、ビルの価値を賃貸料で考えると、SSが1階に
ない方が、賃貸量は高くなるのです。国では地方のSS過疎化
問題の対策が検討されていますが、都心こそ、社会インフラと
して必要なSS。その減少を止める施策が必要だと思います。