政治に翻弄されるガソリン税問題
トリガー条項凍結解除→暫定税率廃止?
あなたはガソリン税&補助金問題の番目のお客様です。
新年、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
さて昨年12月だけでもSS業界にとってとんでもないニュースが多々起きました。
我々業界人でも政治の動きは分かりません。しかしガソリン価格が乱高下して
一番困るのは、ガソリン消費者です。そしてその不満の窓口は我々SS業界の
現場のスタッフに寄せられます。今月はガソリン価格&税&政治を解説します。
                      2024/12/29 文責 垣見 裕司

電気と都市ガスの補助金は2025年1-3月復活
猛暑対策だった電気の補助金は2024年8月に復活しましたが、
10月までで終了となりました。はっきり言って選挙対策でしょう。
しかし自由民主党と公明党の政権与党は大敗し少数与党となりました。
そしてこの「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による補助金は、また
2025年1月から3月まで復活。今度は参院選挙対策でしょうか。もう
カスタネット状態です。その補助額は以下の通りです。
項目 対象 2025年1月-2月  2025年3月
電気 一般家庭 2.5円/1kWh 1.3円/1kWh
高  圧 1.3円/1kWh 0.7円/1kWh
都市ガス 一般家庭 10円/1m3 5円/1m3
大口企業 10円/1m3 5円/1m3

燃料油激変緩和措置は12月と1月に補助額を2回減額して継続

一方燃料油の方は11月20日に発表され12月企画説明の通りですが
電力や都市ガスとは違い何故か補助金はカットされました。その結果
12月19日から約5円。そして1月16日からも今の原油水準なら約5円
カットされると思います。また12月16日の週からテレビ等でやっと値上げ
と報道されるようになり、需要は徐々に増え始めました。市況に敏感な
地域は、値上げ前日の18日は通常の5割増くらい。都心の市況の良い
ところは2割増しという程度で、在庫切れの混乱は起きませんでした。
値上げ幅についても消費税を含めて5〜6円が中心でした。
石油情報センター発表の12月23日の全国市況は、前週比約5円UPの
180.6円なので、日本全体としては便乗値上げになっていないようです。
一方6円以上値上げしたSSもありました。ただSS業界も昨今4〜5%
程度、人件費は上昇。その他電気や地価上昇等コストもUPも含めて
値上げさせて頂いたのだと思います。そもそも激変緩和措置でガソリン
価格は全国平均で約3年間、175円前後に固定させられ、人件費等の
経費UPの転嫁はしにくい状況だったので、ご理解頂ければ幸いです。

ガソリン税はトリガー条項凍結解除から暫定税率の廃止合意へ

さて我々石油業界は、どちらかと言えば、自民党の一党押しでした。
その自民党は安倍政権時代に代表されるように一党独裁状態でしたが
我々石油業界が求めて来た、ガソリン税の暫定税率廃止は、議論すら
されてきませんでした。
しかし昨年の衆議院選挙で、自公与党が過半数割れとなり、立憲民主党
ともに議席を7から28に4倍増した国民民主党が躍進しました。
この国民民主党が主張していたのが、103万円の壁撤廃と、ガソリン税
のトリガー条項凍結解除でした。少数与党としては過半数確保の為に
国民民主党の意見を受け入れることとなり、12月11日、三党の幹事長
合意に「一いわゆる「ガソリン暫定税率」は廃止する」と明記されました。

「えっトリガー条項凍結解除ではなく、一気に暫定税率廃止なの?」。
石油&SS業界としては長年求めて来たものが、一党押しの自民党ではなく
民意を得て議席を伸ばした国民民主党のお陰で、1歩前進したことは
大歓迎であるとともに、今までの自民党は何だったのかと 考えさせら
れた次第です。
但しその時期については前月企画の通り、「2026年4月末のエコカー
減税の期限到来時 までに」ということなので、今後の国会審議を注視
したいと思います。と12月に解説させて頂きました。




自民公明と国民党の亀裂?に維新が現れる
これで気を良くしてしまったのが、国民民主党でしょう。キャスティング
ボードを握ったと勘違いしたのか、103万円問題で強気に出すぎたよう
です。103万円問題で自公の提案した123万円を少なすぎると一括して
交渉の席を立ってしまったのだそうです。
そんなとき、高校授業料無償化(6000億円)と小中学校給食費無償化
(5000億円)を主張していた維新が現れたのです。そして12月12日
自民と公明と維新は、日本維新の会が訴える教育無償化の制度設計を
話し合う実務者協議の設置で合意したと発表しました。
予算の大小から言えば、103万円を178万円にするのには7〜8兆円。
暫定税率廃止には約1.5兆円もかかるので、単に過半数を確保する
だけなら、衆院で35議席を要する維新と組んでも予算は通せるのです。
これを聞いた玉木氏は「自公は維新と握る算段がついたのか」と疑念を
表明をする一方、維新の前原共同代表も「我々はてんびんにかけられる
積もりはない」と微妙な駆け引きが続いていました。

自民、公明、国民の三党幹事長合意は何とか生きていた?

国民民主党としては103万円の壁問題で「123万円では低すぎる」と交渉の
席を立ってしまった訳ですが、維新の登場により、補正予算は成立する
運びとなりました。
では自公国の3党合意はどうなったのでしょうか。これも一部報道では
自民の方が、国民民主党の振り上げた拳を下ろす場所を設定したようで
一応三党合意は生きていることが確認されたようです。しかし当初の
国民民主党のパワーはなく、123万円で譲歩せざるを得なくなるとともに
ガソリン税の暫定税率廃止や減税はかなりトーンダウンしたようです。
自公が12月20日に纏めた「与党税制大綱」では、少なくとも2025年度の
改正事項に「ガソリン税」の減税等は盛り込まれず、「中長期的な視点から
車体課税・燃料課税を含め総合的に検討し見直しを行う」に留まりました。

独裁政党のいない、これが本当の国会議論なのかもしれない

過去の政治は自民と公明で絶対過半数を持っていましたので、事実上
2党が決めたレールの上のシャンシャン国会だったのかもしれません。
しかし今は、少数与党です。そして細川政権が誕生した時のように、
反自民で纏まっている訳でもありません。
従って時には国民が、時には維新が、キャスティングボードを握るという、
先の分からない国会運営なのかもしれません。
それはそれで国民の選択なので良いとは思いますが、私としては、
ガソリン税を政争の具にしないで欲しいということと、駆け引きではなく、
真の議論により、物事を決めて欲しいと思います。
例えば私は賛成なのですが、「選択的夫婦別姓問題」は、各党は党議
拘束などかけず、各議員の個人的信念で議論し決めて欲しいと思います。

垣見油化HPの今年の予定

実は昨年12月はエネルギー業界にとってかなり重要なことが、発表
されているのをご存じでしょうか。
私の調べる時間がないのと、今月は誌面が限られているので、以下は
紹介だけにさせて頂きます。

A 日本のエネルギー基本計画素案発表 
  再エネ4〜5割と簡単に言っていますが、水力地熱バイオマスは
  良いとしても、太陽光と風力は変動エネルギーであることを忘れて
  います。夜や風の無いときは発電しません。よってそのための
  火力は確保し続ける必要がありますが、その火力の維持コストは
  火力が持つべきなのでしょうか。むしろ太陽光や風力が持つべき
  なのではないかと思います。
  また原発2割と言うのは簡単ですが、福島のバックエンドコストが
  事実上、無限大なのにも関わらず、原発は安いと言えるのか
 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_
 subcommittee/2024/067/067_005.pdf



B 温室効果ガス2050年ゼロに向けた 2035年 2040年目標発表
 この表を見て国民はあーそうなのかなと思うでしょう。そして誰も
 反対しないと思います。それはコストが掲載されていないからです。
 「もしこの60%や73%の達成のために、2035年の電気代は現行の
 例えば約3倍。40年の73%の時には4倍になるかも知れませんが
 国民の皆様はこれを了承頂けますか」まで政府は書くべきでしょう。
 欧州では今の電力でさえ数倍になっています。逆に日本では
 補助金を出している国民に真実を伝えない政府なので、本末転倒
 というか、実に心配です。
以上のようなことを今年も深掘りして行きたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いします。   垣見 裕司