エネルギー輸入大国の日本の円安は国富の流出
電力都市ガス補助金打ち切りVS燃料は延長の訳
 
あなたはガソリン補助金問題の番目のお客様です。

2024年4月29日、一時的ながら1ドル160円突破という歴史的円安となりました。
また電力と都市ガスの補助金は5月で半額となり、6月からは廃止となるにも
関わらず、燃料油の激変緩和措置は、暫定期間延長されることとなりました。
何故、燃料油だけが延長となったのか。今月はこの2点の問題を考えてみたい
と思います。
               2024/5/1 初掲載 4日更新 文責 垣見裕司

160円を突破した4月29日(月)の歴史的円安
日本時間の4月29日、日本は祝日ですが、海外では普通の月曜日です。
この日は朝から円が売られ、一時160円を突破しましたが、そこから
一気に4円近く円高になりました。そしてその円買いが終わると、
再び157円を突破する円安となりましたが、再度2円ほど下げる大規模な
円買いドル売りが入り、155円まで円高となりました。また5月2日にも
大規模介入があったようです。市場関係者は政府が円買いドル売りの
市場介入をしたのではないかと憶測。マスコミは神田真人財務官にインタ
ビューしましたが、「為替介入の有無について申し上げることはない。
ノーコメントだ」との冷静な反応でした
当局のコメントの行間を読む
当局の市場介入とその方法、そしてその発表には、色々な方法や表現が
ありますが、以下は私の勝手な推測とその本来の意味です。

1 価格は市場が決めるもの
   これは政府として問題ないレベルと判断しているのだと思います

2 注視している
  これは「今のレベルは遺憾だが、まだ何もしていない」もしくは
  「今はまだ対策を決めていない≒決められない」のだと思います
3 口先介入(言葉やコメントによる発表)
  財務大臣等しかるべき立ち場の人が「今の水準は円安過ぎる」
  「本来の日本の経済力とかけ離れている」。政府としては断固たる
  対策を講じる」等の発表をすることです。但し、まだ市場介入は
  していないことを認めているとも言えます。
4 実際に市場に介入するケース (但し介入したとは言わない)
  今回なら「投機的変動は看過しない」と言っています。但し、
  介入の規模は明かさないことの方が多いようです。例えば円安に
  誘導したい海外ファンドが連系して、国の介入規模よりも多くの
  資金を用意してる場合は、国が負けることになるからです
5 4のパターンで介入したことを実際に認めるケース
  国の断固たる意思を示せます。その反面、介入資金量が明らかに
  なってしまい、後述のアジア通貨危機のように集中して売りを浴びた
  場合は後がありません
6 協調介入
  1国=日本だけでなく、相手国の政府(今回なら米国)も日本の介入を
  容認するだけでなく協調して介入すること。米国政府の資金力は
  圧倒的なので、ヘッジファンドの動きも抑制出来る。
1990年のアジア通貨危機の時は、米ドルに固定されていたタイのバーツ
に対し、その実力はないと見込んだヘッジファンドは「空売り」の集中砲火
をしました。通貨の「空売り」は信用取引で行われる場合は、実際の資金の
10倍くらいの運用が出来るので、タイのみならずアジア各国通貨は暴落
しました。本人は否定していますが仕掛けたのはJSと言われています。
4月29日から5月4日のでの1時間チャート 
下記の青線の通り少なくとも5回程度大規模介入があったと思われます

日本のエネルギー自給率は僅か11%
日本のエネルギー自給率は僅か11%で、OECD諸国の中でも下から
2番目の低さです。そして一番身近な電気にいたっては、これだけ
太陽光が普及したにも関わらず、75%をLNGや石炭、石油等の
化石燃料に頼っています。そしてごく一部の国内産の天然ガスや
石炭を除けば、化石燃料のほぼ全てを輸入していると言っても
過言ではありません。
下記表は、2024年3月データがまだ確定していないため、2022年度の
データで恐縮ですが、日本の貿易金額とその輸入金額に占める
エネルギーの割合は、何と3割を締めています。
150円の円高をエネルギー業界の私としては容認出来ません。
円安は海外旅行インバウンド効果は確かにありますが、私は
「物価が安いから日本に来た外国人」より「円高で物価は高くなったが、
それでも日本に来たいと思った外国人」の方が遙かに嬉しいです。

円ドルレートの本来あるべき価格  私は120円

根拠のない私の希望としては1ドル120円程度がよいと思います。
基本的には円ドルレートは、日米の1金利差、2経済の成長の差、
3貿易収支、4国の借金 5その他の複合要因で決まると思います。
1は日本の借金は1100兆円もあるので安易にあげられません。
2の経済成長も人口減の中、毎年5%成長という訳にもいかないでしょう。
そうなれば、私は3の貿易収支の大幅黒字しかないと思います。
2023年度の速報値は、102兆円の輸出に対し、108兆円の輸入で5.9兆円
の貿易赤字です。しかし良いニュースは3月の単月で見ると貿易収支は
3870億円の黒字なので、この分は円高要因として寄与すると思います。
一方一番私が恐れているのは、4の国の借金です。国民から借りている
から大丈夫とか、日銀から借りている550兆円は返さなくてもいいという
意見もあるようですが、そういう楽観論が海外からの見て、日本の信用
低下に繋がり、実際の数字以上の円安になっているような気がします。

読者の皆様。以上の通り、行きすぎた円安は、エネルギーの輸入や食料の
輸入を通じての国富の流出に他なりません。是非一度真剣に考えて頂いて
日本の国力や経済力を付け、財政を健全化して、あるべき円ドルレートに
戻したいと思います。

電気とガス価格は5月末で終了

皆様もご存じの通り燃料油の価格抑制策同様、電気と都市ガスにも補助金
が出ておりました。 この補助金が燃料油の補助金と異なるところは、燃料油
の方は、ガソリンの全国平均価格175円/Lに誘導すべく補助金の単価が
増減するのに対し、電気は一般家庭用なら一律3.5円/kwh。都市ガスは
15円/m3を下げているので、善し悪しは別としてわかり安い制度です。
本制度は2023年1月より開始されていました。
この電気と都市ガスへの補助金は本年3月、4月末を持っての打ち切りが
発表されました。 5月中は半額補助とソフトランディングを図りますが、
1ヶ月間でサクッと終わるのは誠に見事です。
では何故、電気代と都市ガスへの補助金は、1ヶ月間の猶予を持って
廃止が決まったのか。
私は、ロシアとウクライナの戦争。そしてイスラエルとパレスチナ紛争が
続いているにも関わらず下記グラフの通り日本LNGの輸入CIF価格は、
22年9月に1d当たり18万円の ピーク以降は、昨今の円安にも関わらず、
一応落ち着いているからだと思います。
LNGの輸入CIF価格が安定しているのは、電力会社が一時の安値
スポット価格の誘惑に惑わされず、長期契約をしているお陰です。
原油価格の方は自主開発でもしない限りそうはいきません。燃料油の
仕入れ価格の推移は激変緩和のHPから引用します。このグラフの通り

23年の年末の頃は補助金額も13円程度まで下がり、補助金を卒業するには
良いタイミングだったのですが、一向に終わらないイスラエル・パレスチナ
紛争。そしてイスラエルがシリア国内のイラン大使館を空爆するなど、
地政学的なリスクはむしろ拡大し、一時70ドル台まで下落した原油価格も
WTIの4月は86ドル/Bまで上昇。また日銀のゼロ金利解除にも関わらず
事前の円高予想を裏切り、160円突破の円安になってしまいました。
これに伴い、5月2日からの補助金は約30円。補助金なしでは200円
突破は確実なので今は卒業出来ないという判断でしょう。
政権与党の選挙対策だという声もありましたが、衆院選補選は自民党
3戦全敗なので、どちらにしても選挙には関係ないと思います。