2020年度日本のエネルギー需給実績
 貴重な8表から分かる期待と現実
あなたはエネルギー問題企画の番目のお客さまです。
新年、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくです。

さて昨年暮れに資源エネルギー庁から2020年度のエネルギー需給実績。
そして環境省から速報ではありますが、2020年度の温室効果ガスの
排出量データが発表されました。新年のスタートはこの二つの発表資料の
データと図表を何点か紹介しながら、現実的な環境とエネルギー業界のこと
を2ヶ月に亘って考えて行きたいと思います。
                  2021/12/30 文責 垣見 裕司

エネルギー源別の最終エネルギー消費量 第1表
まずは下記のエネルギー源別の最終エネルギー消費量の表です。


表の数字の単位は熱量である「ジュール」で、Pはペタ、すなわち10の
15乗(1000兆)となります。ちなみに1ジュールは1ニュートンの力で
物体を1メートル動かすときの仕事量で1ジュールは約0.24カロリーです。
このエネルギー量を原油換算百万KLにするときは、PJ単位の数値に
0.0258を乗じるので、12089PJは原油換算で311百万KLとなります。
普通の(カッコ内)は前年比です。コロナでの経済活動の縮小もあり、
軒並み減少しているのが分かります。[こちらのカッコ]の方は、全体の
構成比(シェアー)です。石油が47.3%。二番目が電力で27.0%。三番目が
石炭で9.2%となっています。都市ガスが8.2%しかないのには驚きました。
何だかんだ言っても、そして言われても、石油が47.3%とトップで現在の
日本の経済や国民の生活を支えているのです。それをESGの美名の下
化石燃料会社から資金を引き揚げられたら、近未来への投資は出来ず
結果として直近の化石燃料価格が上がってしまうのは必定なのです。
尚下記にある電力は二次エネルギーです。発電源は後ほど説明します。

そのエネルギーは何の為に使われたのか 第2表

この12089PJのエネルギーが何の為に使われたのかが分かるのが
下記表です。企業、事業用が一番多く61.9%です。運輸部門は22.3%。
これは自動車系だけではなく、船舶や航空機も含みます。一般家庭用
は15.8%となっています。

石油精製量はKLではなくPJで表されている  第3表

我々石油業界人にとっての数量は昔も今もKLという数量でした。
原油なら年間でピークは25000万KLが今は2億KL、ガソリンなら
年6000万KLが今は5000万KLという感じです。
更に申し上げれば、他の1次エネルギーも原油換算して記載されることが
多かったのです。今回原油精製量や各石油製品の数量もPJで書かれて
いたので正直戸惑いましたが、そのままPJで掲載させて頂きます。
この表を見るとコロナでの自粛生活が本当に石油需要を激減させたこと
が分かります。前年比で20%減、2013年度比で31%減になっています。
石油業界だけでみれば、温室効果ガス2013年度対比2030年で46%減の
達成にかなり貢献しているとも言えます。
尚、熱量のPJではなくKLが良い方は、石油連盟HPの資料編をご覧下さい。

電源構成と最終電力消費量とその推移 第4表
最初の表の中の電力に絞ったものが本表ですが、これにはKwhとPJが
混在しているのでご注意下さい。


上段が年間10013億kWhを何のエネルギーから発電したのかですが、
天然ガスが39%、石炭が31%、石油が6.4%で化石燃料割合は76.4%です。
水力は7.8%、太陽光は善戦し7.9%ですが、風力はまだ0.9%です。従って
本表から算出出来る再生可能エネルギー割合は、19.8%となります。
原子力は3.3%と諸問題から前年比より大幅に低下してしまいました。
何度も申し上げますが、太陽光の固定料金買い取り制度FIT等を
10年間あれだれやってきましたが、それでも7.9%ですし、発電しない
夜のためには同等の火力発電を残す必要もあり、コストはむしろ
どんどん上がるっているのですが、それが国民にちゃっと知らされて
いないのが心配です。
中段は、上段表の電力を発電するのに投入した源燃料のエネルギー
総量だと思います。最新の天然ガスの発電効率が50%とすれば、倍の
エネルギーを投入していることになります。
ここで改めて発電源燃料割合を計算し直すと、天然ガス35.4%。
石炭33.2%、石油他が6.5%で化石燃料割合は75.1%になりました。
太陽光や風力に関してのエネルギー投入量という意味が、今一つ
理解出来ません。
下段は、その電力が何に使用されたかの最終電力消費量ですが、
9074万kWhしかないので、本項冒頭の10013kWhからすると、送電ロスの
他にも色々ロスが10%近くもあるのでしょうか。

エネルギー源別、1次エネルギー国内供給 第5表

さて第5表がある意味、エネルギー資源のない日本にとっては一番重要な
一次エネルギーの国内供給の推移表でです。


上記表の通り、2020年度の総供給量は18674PJです。冒頭の第1表
の消費量は、電気等の二次エネルギーを含んでいますので、使う側
としては12089PJしか使っていないのかもしれませんが、電気を筆頭に
2次エネルギーに変換したり、原油から各石油製品を作るためには、
どうしてもエネルギー変換時のロスがあるので、全体としては
18674PJが必要で、そこには、12089/18674=0.647 すなわち、35%
近いロスが発生していると言えるのでしょう。

化石エネルギー依存度と石油依存度 第6表

1次エネルギーの使用割合は、今の日本のエネルギー事情を正確に
表していると思います。


石油36.4%、石炭24.5%、LNG23.8%、化石エネルギー依存度84.8%。
何度も申し上げますが、再生可能エネルギーが発電しない時も含めて
真の実力をつけ、そしてコストも化石燃料と同等以下に下がるまでは、
我々日本国民は化石燃料に依存しなくてはいけないのです。

実質GDP当たりと国民一人当たりの1次エネルギー 第7表



温室効果ガス排出量の目標で中国が言うのは、GDP当たりの削減で
2025年までの5年間でGDP当たりの排出量を18%削減するそうです。
しかし経済成長を年率5%とすると、CO2排出量は10%近く増大し年間
136億トd達し、現在の排出量124億dから12億dも増加します。
では日本もこのような表現をするとどうなるのか。そのデータは
2005年対比の15年間で、GDP比は77%すなわち23%の削減、
そして一人当たりでは79%、すなわち21%削減したと言えます。
この数字が世界的に優れているのかは、今後調べてみます。

エネルギー受給率(IEAベース)の推移 第8表

先月企画でも触れた通り、有事は自主開発比率ではなく、受給率が
大切です。幸いこの表もありましたので掲載しておきます。

環境省発表の2020年度温室効果ガス排出量の推移

今月もまた枚数オーバーになりましたので、来月以降掲載させて頂きます。
最後に昨年12月17日、IEAは今年の世界の石炭火力発電量は米国も欧州
も約20%増で過去最高になると発表しました。COP26で最後の採択寸前に
インドが石炭火力の廃止ではなく段階的削減に変更しようと反対。各国は
非難しましたが嘘はつきたくないインドの方が誠実なのかもしれません。
皆様。とにかくこれが世界とそして日本の現実なのです。

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   2030年 2050年CNとガソリン新車販売禁止問題をどう乗り切るか
   どうなる・どうするエネルギー業界2021〜
   コロナ禍の需要減や人手不足、採用、人材育成にどう対処するか〜