2020年度の電源構成
 再生可能エネルギーはどこまで伸びたか 
あなたはカーボンニュートラル等環境問題の企画の 番目のお客様です。
私にとって今一番気になるのは、やはりカーボンニュートラル問題です。
石油業界やSS業界における課題や対策。現時点での限界は一応把握しつつある
のですが、分からないのは電力の方です。今月は環境エネルギー政策研究所の
https://www.isep.or.jp/
 から有益な情報を入社しましたのでご紹介したいと思います。
                   Ver3 2021/8/30  1130 文責 垣見裕司
2020年度電源構成
まず2020年度の電源構成です。LNGが35.4%
石炭は27.6%、石油は恐らくC重油等が2%
その他火力が9.9%なので相変わらず75%を
火力に依存しています。太陽光は8.5%、欧米
で伸びている風力は日本ではまだ0.9%です。
この二つは、変動性再生可能エネルギー
(Variable Renewable Energy)VREと証され
VREが少ない日は火力や水力等で補うことが
必要です。バイオマスとはバイオ燃料等でなく
木材としての価値が低い間伐材をカットした
チップを燃やす地産地消型の中小火力でしょう
水力は、従来型のダム発電がその多くを占めて
いると思います。以上の再生可能エネルギーを
合計すると21.5%。原発は4.3%しかりません。
大切なのは時系列的な変化把握。再生可能エネルギーの増加割合
下記表は過去4年間の電源構成の推移です。4年間で見ると化石燃料は約5%
下落していること。そして再生可能エネルギーが4.5%伸びたことが分かります。
原発は3%から6%に回復したのにも関わらず、今3.7%なのは意味深いと思います。


東日本大震災以前の2010年から推移と原発割合い
上記表を見れば、もう少し遡って東日本大震災前まで見たくなります。
それを一目瞭然にしたのが下記グラフです。震災前は約25%もあった
原発ですが、2014年に一度ゼロとなり、その後5%まで回復しましたが
規準がより厳しくなったりした等の影響で現在は3.7%になっています。
政府の計画によれば2030年の原発比率は20〜22%。その需要を仮に
約1兆KWhとすると必要原発数は約30基です。 ところが今ある36基は、
2030年時点で40年未満は21基しかなく、 9基足りないのです。従って
本来は特別にしか認められないはずの40年超の運転許可を当たり前の
ように出していく必要があります。 環境問題にすり替えて、核廃棄物の
最終処分場問題が全く解決していない、トイレの無いマンション状態の
まま、原発がなし崩し的に再開されていくことには正直疑問を感じます。

再生可能エネルギー特に太陽光の設備導入容量(累積)推移
再生可能エネルギーは、固定価格買取制度いわゆるFIT以降、太陽光を中心に
爆発的に増加しました。1990年以降の導入容量の推移が下記グラフです。
その総容量は8000万kWにも及び、100万kW級原爆の80基分にも相当します。
しかし太陽光はあくまで最大発電容量です。実際に発電され、更に使われた
量を算出すると全体の8.9%に留まっています。雨の日は下がり、また夜は
全く発電しないので、どうしても火力で補う必要があるのです。


毎年増える再生可能エネルギーの国民負担
では固定価格買取り制度によって買われた電気の総額は、年間でどのくらいの
金額になるのでしょうか。isepによれば、下記グラフの通り、2020年度は
38000億円。その内電気の使用した国民が負担する金額は、約3兆円と読み
取れますが合っていますでしょうか。


資源エネルギー庁発行「日本のエネルギー2020。エネルギーを知る10の質問」
上記isep発行の資料とは少しデータが異なるので、資源エネルギー庁発表の資料で
再度ご紹介します。こちらでは、2020年度で賦課金は約2.4兆円。買取総額は3.8兆円と
なっておりました。また賦課金単価は2.98円/kWh。標準家庭で774円/月とのことです。
しかし2021年5月からこの賦課金が一気に3.36円に上がっています。基本料金も含めて
仮に約28円/kWhという単価で計算すると賦課金は2.98円の時で10.6%。3.36円/kWh
の値上げ後では11.8%にもなります。国民はこれを本当にご存じなのでしょうか。



標準家庭の平均的な電気り料金

ちなみに総務省発表の平均的な電気使用量と電気料金は以下の通りです。
各地域でかなり使用差があります。また集合住宅か1戸建てかでも、全く
違いますのであくまで目安として下さい。
世帯人数 電気の平均使用量と月額電気料金 
1人世帯 1日 6.1kWh・月185kWhで 5,200円 (季節差4,700〜6,200円)
2人世帯 1日10.5kWh・月320kWhで 8,900円 (季節差8,000〜10,700円)
3人世帯 1日12.2kWh・月370kWhで10,400円 (季節差9,400〜12,500円)
4人世帯 1日13.1kWh・月400kWhで11,200円 (季節差10,100〜13,400円)
5人世帯 1日14.8kWh・月450kWhで12,600円 (季節差11,300〜15,100円)
6人以上 1日18.4kWh・月560kWhで15,700円 (季節差14,100〜18,800円)

原発5基分のLNG火力や石炭火力発電が、既に削減されている事実

近年火力発電の休廃止が相次いでいて、実は供給力は減少傾向にあります。
その理由は、電力の自由化の中で卸電力市場の取引の拡大とFITで支援する
再エネ電気の量の拡大で、卸売市場の取引価格が10円以下と低迷し、発電
事業社の収益が悪化しているからだと思います。 下記表をご覧下さい。
2021年の2月から4月の僅か3ヶ月間で何と500万kW以上の火力発電所が
廃止又は長期停止されるのです。 石炭火力の廃止なら分かりますが、まだ
新しいという印象を私は持っていた多くのLNGが廃止されるのに驚きました。

でも運転開始が1971年ならもう50年も経っていたのです。 単なる老朽化対策
だけでなく、熱効率の差も廃止の理由でしょう。 初期型の42%対し最新型は65%。
これだけでもCO2の排出量は35%も削減出来るのです。
その結果、次の冬の来年の2月の特に東京の予備率はマイナス0.2%という
危機的な状況となっています。では、本当に足りない時だけ、休止している火力
発電所を再稼働してもらえば良さそうですが、それでは虫が良すぎると思います。
1年の内の1〜2ヶ月の運転ならまだしも、不足時の1日ほんの数時間のために
人員を確保し続け、設備もいつ緊急運転をしても良いように維持し続ける事は、
莫大なコストがかかるだろうと素人でも想像出来ると思います。



https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/035_03_01.pdf

何事もベストミックス

最後に私の申し上げたい事をひと言で表しているグラフを見つけましたので
ご紹介します。

日本エネルギー経済研究所の松尾雄司様が2020年12月14日発表された
 変動性再生可能エネルギー大量導入時の電力部門の経済性評価
  −モデル分析からのインプリケーション−  です。

例えば、石油火力を仮に20円で全ての電気需要をまかなっていたとして、
それを最新の太陽光をコスト20年間で1kWhあたりの円で導入していくとします。

最初は、20円の石油火力が8円の太陽光に置き換わるのですから、総費用は
安くなりますが、石油火力の20円の内訳を考えると、設備維持のための固定は
発電量に関係なく発生するので、削減出来ていたのは、燃料費だけということに
気がつきます。仮に20円の内訳が固定費、10円燃料費変動比10円だとすれば
全需要の半分を太陽光に置き換えた時の石油火力の固定費は20円と倍になって
しまうのです。前述の例にも書いた通りですが、1年の数日の数時間の発電の
ために、その老朽化した発電所の全体を維持し続けなければいけないからです。

要するに、VREの本当のコストは、発電出来ない時の、バックUP電源のコストも
考えて導入する必要があるという事だと思います。

下記グラフは、コスト最小点を過ぎても、VREを導入し続けると、全体としては
バックアップの電源コスト維持費用の方が大きくなり、総費用はむしろ上がって
しまうということをイメージしているのだと思います。


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