2020年石油&SS業界重大ニュース
 新型コロナの需要減、原油価格と国内市況、OP延期他
あなたは12月企画の 番目のお客様です。2020年も気がつけばもう年末。
今年1年は石油業界のみならず、日本がそして世界が新型コロナウィルスに翻弄
された年でした。この問題が厄介なのは、現在も進行形でいつ収束するのか見通しが
つかないことです。このコロナ関連のニュースをどう割り振るかは別として、私はこう
思うという独断のレベルで今年の業界の重大ニュースを振り返りたいと思います。

                           2020/12/04文責 垣見裕司

NO1.新型コロナウィルス世界を襲う
新型コロナウィルスは、近代でもスペイン風邪まで遡らなければ人類が経験
したことがないような世界的な危機でしょう。3月までは中国武漢の話で、
欧米社会は日本のクルーズ船対応すら批判していました。
しかしその米国が世界一感染者と死亡者数の多い国になってしまったのは
皮肉な話です。このコロナの恐ろしさは、決して高くはない致死率から来る
「自分はかかっても大丈夫だ」という慢心なのかもしれません。
トランプ大統領がそのけん引役を果たしていたのも残念です。
そして今日本には、間違いなく第3波が襲来しています。重傷者や死亡者は
医療関係者の独力と対処療法の進歩のお陰で何とか抑えられていますが、
北海道の旭川の基幹病院でのクラスターの発生に代表されるように、医療
崩壊の危機はすぐそこまで訪れているような気がします。
NO2. コロナによる国内需要動向ジェット燃料以外は回復早い
このコロナによる石油業界の需要減は、緊急事態宣言が出た4月から深刻
になりました。下記表の通りピークは4月〜6月でガソリンは約3割減です。
でも本当に感謝しなくてはいけないのは、ジェット燃料を除けば、飲食業や
旅行業に比べて、その回復は意外に早かったのではないかと思うことです。
主力商品であるガソリンは、前年9月に消費増税の仮需が多少あったはず
ですがそれでも前年比93%まで回復したのは、本当にありがたいことです。



NO3.世界の石油需要が大幅減 WTIも初のマイナス
このコロナで石油需要は急減。原油価格も大暴落。下図はNYのWTIで、
マイナス価格は受入基地のタンクも満杯で原油を引き取れず産油国に持って
帰る運賃を負担するなら、お金を払ってでも引き取ってもらう必要があったと
いうことでしょう。この異常価格は直ぐに持ち直しましたが、50〜60ドル/B台
から40〜50ドル/B台に弱含んだような気がします。

NO4.ガソリン末端市況は、4〜6月のみ安定したものの夏以降は再び悪化
この原油価格の弱含みを受けて国内市況がどこまで落ちるか心配でしたが
販売数量が最も落ち込んだ4〜6月は、SS業界経営者にも危機感が走り、
いつものような安値戦争は一時的にせよ影を潜めたような気がします。
しかし、コロナの第一波が収まった夏以降は、それまでの減販を取り戻そうと
いう意識が働いたのか、一部地域で乱売が始まり、その点が線になり、
現在では面に広がった地域があります。
お客様にとっては、安い方がよいのかもしれませんが、全国のSS数はピーク
1994年3月末の60421から本年3月末で29637と遂に半分以下となりました。
 東京に至っては、ピークの3570から今は900を切ってしまいました。
そうなのです。過疎地はもちろんですが、震災時の災害対応等を考えると
東京ですらこれ以上減らしてはいけない数字だと思います。
従って単なる黒字ではなく再投資可能な利益をあげさせて頂く必要があるのです。
NO5.必然的に進んだ働き方改革 SSはエッセンシャルワーカーだった
このコロナの影響で一気に進んだのが働き方改革ではないでしょうか。
少なくとも朝の電車等の混雑を避ける時差出勤は、間違いなく定着しました。
当社では週3日程度のテレワークを実施。出勤日もずらし、2グループに分けて
万一感染しても部全体が機能停止しないようにして8割の接触減を達成しました。
しかしSS現場は、多少の営業時間の短縮と所長会をテレビ会議にしましたが
テレワークは不可能です。要するにSS業務は広い意味でのエッセンシャル
ワーカー(日常生活を送るために欠かせない仕事を担っている人)だったのです。
コロナ患者の受け入れで病院経営がひっ迫し多大なる業務が増えているにも
関わらず、看護師のボーナスがカットされたりして社会問題になりました。
老人介護など重労働を要する介護士も、適正な評価を得られていないでしょう。
その意味では、職場としての社会的評価が高いとはいえないSS現場も同じです。
お客様と接する機会は多く、特に車の室内清掃では捨てられたマスク入り
のゴミ袋などもあるので感染リスクはあります。筆者の会社では細やかでは
ありましたが、全社員に感謝の意を評させて頂きました。
NO6.オリンピックは1年延期
 これもコロナの影響といえばそれまでですがあの東京オリンピックが1年延期
となりました。過去オリンピックは、戦争で中止になったことはありますが、疫病で
延期になったことはありません。ましてや54年ぶりに回ってきた東京開催なので、
延期になったのは本当に驚きでした。
 石油業界ではENEOSが、オリンピックの公式スポンサーだったので、その影響
は計り知れないと思います。しかしこの問題が深刻なのは、来年の7月に本当に
開催されるか。開催出来たとしても無観客ではないか。その保証がないことです。
 日本だけをみればその感染者数を何とか抑え込んでいるので、あとは観客数の
削減で開催出来ると思った時期もあったのですが、今の欧米を見れば、第一波を
しのぐ第3波が来ています。PCR検査を受けた選手だけを派遣するのに留まり、
世界各国から大勢の観客が来るのはもはや無理でしょう。
最後はワクチンに期待ですが、7月までに世界の半分の人に行き渡るのは
かなり難しいような気がします。
NO7.安倍総理電撃辞任
 ご存じの通り安倍元総理は、成蹊学園の出身です。安倍先輩もそして私も、
成蹊小学校から大学まで吉祥寺では有名な同校の欅並木と桜並木を16年も
飽きずに通った同窓生です。年は4歳違いなので、大学ではご一緒していま
せんが小学校ではそのお姿を拝見しているはずです。
 そんな成蹊学園のご縁で、第一期の安倍総理就任パーティーに参加。また
本年2月1日に開催された安倍議員25周年を祝うパーティーにも運良く参加
させて頂き幸いにもお写真を一緒に撮ることが出来ました。
規定上お写真の公開は不可ですが、直接お見せすることは可能なので、
講演等で私を見かけた時は是非お声がけ下さい。

第二次安倍政権のエネルギー的総括
さて第二次安倍政権のエネルギー面から見た総括をしておきましょう。政策の柱は
アベノミクスです、端的には異次元の金融緩和と財政出動と三本の矢でした。
三本の矢がどのくらい経済回復に寄与したかは私には分かりませんが、為替は
80円から120円の大幅円安となりました。しかし輸出は微増で、むしろ輸入の方が
激増したのです。そして東日本大震災による原発の停止で、発電用の原油やLNG
の輸入が激増しました。ピークは2013年で総輸入額に占めるエネルギー割合は
34%に激増。国内GDPに余り寄与しないエネルギー。貿易収支も大赤字では国は
持ちません。しかしそれを救ったのがシェールオイルやガスの資源価格安です。
この恩恵がなければ、安倍政権での経済や株価はここまで回復しなかったと思い
ますが、運も安倍総理の実力の一つでしょう。


NO8.菅総理は無風で誕生 しかし2050年温室効果ガ実質ゼロを発表
 本の興味の一つは、選挙や政治というか政権交代等の変化です。あの佐藤栄作
総理以降の総理の交代劇は、次は誰かどう変わるのかを注視していました。
特に自民党のいわゆる55年体制が崩壊し、弱小野党の連立で細川政権の誕生
などは手に汗握りながら、日本の政治の変化を実感したものでした。
しかし一番失望したのは、ある政党の党首が、政権を取る前に沖縄でした選挙
演説の時の無責任とも言える発言でした。沖縄基地問題で解決出来もしないのに
「最低でも県外」と耳に優しい言葉を連発したのです。
もしそれを言うなら政権獲得前に米国に言って、沖縄の米軍基地を半減させる
約束を取り付けてから言うべきです。その意味では、今回も少しは荒れて、緊張感
ある総裁選を期待したのですが、ほぼ無風の菅総理で決まってしまいました。
NO9 石油&SS業界におけるSDGsとESG、そしてカーボンフリーの機運高まる
 私自身真剣に向き合うことを避けてきたのですが、もう逃げられません。そう化石
燃料を扱う我々エネルギー業界におけるSDGsとESGの問題です。本気で考え
その対応策や少なくとも我々の主張を準備しておく必要があると実感しました。
例えば昨年12月27日に東京の小池都知事が東京ゼロエミッション戦略を発表
しました。2050年に東京を走る車は全てZEV(EVかFCV等の車)にするとのこと
ですが、この時は「希望の表明に過ぎない。出来るものなら勝手にやって」という
程度の認識でした。
 しかしバブル以降の日経平均最高値更新でもENEOSの株価が一向に回復
しないのはESG投資が既に世の中に浸透しているのだと思うようになりました。
 そして菅総理が2050年カーボンフリーを表明して決定的となりました。
本HPでは来年の1月企画2月企画で特集したいと思います。
No10 遂にENEOS誕生 出光もアポロステーションに統一
 旧日本石油系列の特約店で、1980年に業界に入った私にとって、この40年は
日本石油の合併の歴史とも言えるでしょう。三菱石油、興亜石油、東北石油、九州
石油、JOMOそして三井石油やエッソ、Mobilを含む東燃ゼネラルを、経営統合と
言いながらも、事実上飲み込んで来たからです。それぞれ合併直後は特約店同士
でも色々な思いはありましたが今勝ち残っている系列特約店は、ENEOSのマーク
の下、各特約店の個性を大切にして頑張っていると思います。
 そしてJXTGもその社名を本年6月、遂にENEOSに改め、ここに真の統合が
完成したのです。また出光昭和シェルもSSの新ブランドを来年4月にアポロステー
ションにすると発表。旧昭和シェル系の中には一部安売りを続けているSSが未だ
にありますが、新ブランドの下では価格ではなくCS等で競争したいものです。

その他番外編 石油連盟のWEB講演会の講師拝命

 最後に上記以外の気になった話題を挙げてみます。
昨年10月より消費増税となり、キャッシュレスポイント還元は元売系カードしか対応
出来ない事を心配しましたが結果としては何のクレームもありませんでした。
お客様はその程度の還元差は気にされなかったようです。
またキャッシュレス会計が推奨されコンビニではPayPayやLINEpay等コンビニ系
以外の決済も可能です。しかしSS業界では元売共通POSでの利用はまだ出来ず
各SSの独自対応となりました。当社は全SSでPayPayと楽天Payに対応済です。
 私個人は、石油連盟主催の講演は一部コロナで中止となりましたが、山形のみ
実施出来ました。そのコロナ対策として事前収録のWeb講演の講師に選んで頂き
収録しました。石油連盟のHPで近日公開予定ですのでよかったらご覧下さい。
 今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。

 
石油連盟スペシャルWEBセミナー 公開開始
 you tubeより どうなるどうするエネルギー業界2021 
  コロナ禍の需要減や人手不足、採用、人材育成にどう対処するか