東京モーターショー2019報告
 近未来自動車はEVかFCVか 自動車業界への提言
あなたは近未来自動車企画の番目のお客様です。
新年あけまして、おめでとうございます。毎年新年は、近未来の夢の持てる話にして
います。今年は東京モーターショー2019を見て近未来自動車。特にEVとFCV。
そして自動車業界への私の提言を紹介します。
今年のモーターショーのテーマは、OPEN FUTURE。10月23日のプレス発表から
11月4日の日曜まで13日間東京ビッグサイトで開催されました。
東京モーターショー開催年は、ほぼ毎回拝見していますが、今年は、かなり変わった
というか違和感すら持ちました。何故そう感じたのか。以下私見ですがお話します。
                              2019/12/29文責 垣見裕司
 私には広すぎた三つの会場
皆様もご存じ通り、東京ビッグサイトは巨大な施設です。今回のモーターショー
は南ホール1から4。西ホール1から4を使いARIAKE EXHIBITIONを展示。
またモノレールゆりかもめの東京ビッグサイト駅北側のTFTビル棟を使い
DRIVE PARKを展示しています。
これだけでも広いのに、隣の青海駅までの延々1.5kmをOPEN ROAD
として色々な展示や実演コーナー、体験コーナー、試乗コーナーなど屋外の
「シンボル プロムナード」スペースが続きます。
そして青海駅と東京テレポート駅の間には青海ホールABでのAOMI
EXHIBITIONと トヨタの展示ビル MEGA WEBAを使いFUTURE EXPO
を展示しています。
 私は空いているはずの25日の特別招待日の午前中に行きました。大雨
だったこともあり、OPEN ROADはがらがらで展示中止状態でしたが、
その反面、ビッグサイトと青海会場を繋ぐ巡回バスは大混雑。それに大雨の中
屋根のないバス停で40分も待たされる始末です。体験コーナーも大混雑で
どれも30分待ちで諦めです。
 そんなことで今年は若干辛口コメントになることをお許し下さい。

 今年のテーマは OPEN FUTURE
 今年のモーターショーテーマはOPEN FUTURE。そのテレビCMで、
豊田章男社長が今までと全く違うモーターショーと説明し、聞き手である
俳優の香川照之氏も同様の感想を語っていました。車の枠を超え未来の
移動空間を快適にプロデュースしたということでしょうか。パナソニックの
ブースでは、ハンドルもブレーキもない、動く小空間が展示されていました。
でも私は、自動運転さえ10年先か20年先かも分からないのに、アニメの世界
でもあるまいし、そんな先の誰も責任をとらない展示は余り興味がありません。
少なくとも自動車会社のモーターショーなら、近い将来発売しようと思う車の
プロトタイプ等を展示し、来場者からの意見を聞き、それを反映させて
一両年で量産車の販売を開始する。ユーザーがメーカーに唯一意見を
聞いてもらえる場が私の理想とするモーターショーです。
 レクサスEV VS  ミライ次世代FCV
 東京都石商の水素担当副理事長として一番残念だったのは、もちろん私の
勝手な期待なのですが、レクサスFCV版が発表されなかったことでした。
更に申し上げれば、先に発表されたのがレクサスEVだったのもミニショックです。
展示は男女のモデルさん付でお金のかけ方がFCVと全く違います。もちろん
FCVミライの後継版もあるのですが、誰でも入れる無料の青海エリアFUTURE
EXPOでのひっそりとした展示でした。

 来場者の人気は、やはりレクサスEVの方が圧倒的に高かったと思います。
ドアは跳ね上がるガルウィングタイプ。高級マンションの地下駐車場でも高さは
約2.3m。どうやって降りるかは買おうと思う人が最後に悩むことかもしれません。
その発売価格は幾らになるのでしょうか。レクサスブランドなので、1500万円は
軽くするかもしれません。世界では、EVで一応成功していると言われている
テスラの価格も決して安くはありません。
 バッテリーを大量に積みこんだ電池コストを、デザインで高級感を出して、
それを回収しているのだと思います。
安くないだろうレクサスEVの一回の充電で走る距離も500kmは超えるでしょう。
水素スタンドを推進役の私が申し上げるのも気が引けますが、レクサスEVが
発売されれば、かっこもいいので間違いなく売れると思います。

 私にとってもう一つ残念なのは、今新車タクシーシェアNO1のジャパンタクシーに
FCV版が発表されることを期待していたのですが今年も発表はありませんでした。
もちろんトヨタは約束などしていません。オフレコでトヨタにお伺いすれば、タクシー
の過酷な使い方を考えると、ハイブリッド車でも、長年の使用でその安全性が
確かめられ、安心が顧客に認知されてから、タクシーに乗せたとのことなので、
タクシーFCVは当分先になりそうです。

 やはりEVが次の主流になるのか EVの普及は電池性能次第
 FCVの展示は私が見つけたのは、トヨタの他ホンダが発売済みのクラリティ。
メルセデルベンツも展示していました。しかしそのベンツも力の入れようとしては、
やはりEVで、VISION EQSはやはりカッコいいです。各社の展示を公平に見る
限り、次世代はやはりEVのようです。私はEVを否定していません。地域限定や
用途限定。あるいはセカンドカーなら、間違いなくそのニーズはあるでしょう。
 
 しかし最後の鍵はやはり電池性能です。2年前も書きましたが、最初に実用化
された鉛蓄電池から、ニッケル・カドミウム電池。それがニッケル・水素電池に
進化し大容量を狙って開発、実用化されたのが、今のリチウムイオン電池です。
 
 これから期待されているのが全固体電池です。開発の話は以前からありますが
コストパフォーマンスと安全性を含めた商品化は、あと5年がずっと続いています。
もう一つあげればタイヤのホイールの中にモーターを入れるインホイールモーター
車がいつ出るかです。これが実現すると車の形を劇的に変化させることが出来る
ので、各メーカーがこの量産車を出した時がEV時代の本当の幕開けでしょう。
 各社 力を入れるEV メルセデス ホンダ マツダ


 メルセデス VISION EQS  ホンダ初の量産車かHONDAe  MAZDA MX-30
 懐かしのF1は外せない
 この写真の車は、ホンダがF1に参戦し1965年に初優勝した時のF1カーです。
私が父におねだりしてコントロール式のレーシングカーのおもちゃを買ってもらった
時の思い入れの車です。読者の皆様は、アランプロストとかアイルトンセナ時代の
マクラレーンホンダ等はご存じと思いますが、この60年代に2輪メーカーのF1挑戦
と優勝に、心から敬意を表します。

CASEとMaaS
 自動車関連の近未来を考える時、良く聞くキーワードはCASEとMaaSです。
CASEはConnected(コネクテッド=色々な物やシステムと繋がる車)、Autonomous
(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングサービス)、Electric
(電気自動車)の頭文字をとった造語で、2016年のパリモーターショーで、
ダイムラーのCEOでメルセデス・ベンツの会長ディエター・チェッチェ氏が言い出した
のが始まりと言われています。

MaaS(Mobility as a Service )は、ICTを活用して交通をクラウド化し、公共交通か
否か、またその運営主体にかかわらずマイカー以外のすべての交通手段による
モビリティ(移動)を一つのサービスとしてとらえシームレスにつなぐ新たな移動の
概念だと国土交通政策研究所長は述べています。
 頁制限もあるので、今月はCASEの方のみを解説したいと思います。
筆者の理解としては
 Cの繋がるは、レクサス時代から感じ始めました。車に取りつけられたセンサー
数は従来の数倍に増え、それが車載システムやカーナビと繋がり、ネットに繋がり
更に行きたいレストランを声できけば、カーナビから優しく答えてくれ、頼めば
ご丁寧に予約までしてくれるシステムも既に実現済みです。
 また車の所有者の携帯に専用アプリを入れれば、暖気運転などの遠隔操作や
盗難防止、位置情報、車検の案内なども全て携帯に表示され操作できる技術も、
既に一部完成しています。
 レンタカーやカーシェア。広い意味でのタクシーの配車予約サービス等も含めて
着々と開発されつつあると思います。   EのEVは前述の通りです。
問題はAの自動運転でしょう。当初言われた程簡単ではなく、従って3〜5年では
全く無理で、10〜30年先かもしれないと昨今急にトーンダウンして来ました。
米国での自動運転の事故原因
 米ウーバー・テクノロジーズの自動運転車両が2018年3月に起こした歩行者死亡
事故について、米国家運輸安全委員会は、動画を視聴していたテストドライバーは
勿論悪いのですが、本質的な原因は、システム設計の欠陥にあると発表しました。
自転車を押して車道を横断しようとしていた歩行者をシステムは一応認識していた
のですが、その移動方向と遅い速度から、物体を最後まで人と認識することが出来
ないというか、道路を人が自転車を押して低速で横断することを想定しておらず、
システムは最後まで自動車とかつ停止状態。すなわち安全と判断していたのです。
 GPSが進化し1cm単位で今の位置を把握しても、車の周りの今この瞬間の
環境を、カメラやレーダーで見て正しい判断し続け、安全な進行方向に走り続ける
ことが如何に大変なのかを証明してしまったのです。
自動車会社は 出来ることから今すぐ始めて下さい
 私が自動車業界に期待することは、消費者の喫緊のニーズである衝突安全
装置の標準装備です。2兆円も利益を出す企業の社会的責任として、間違えて
アクセルを踏んだとしても、前に何かあれば急ブレーキで止まる。
 極端な話、高速で走行中、急ハンドルを切って自殺しようとしてもハンドルが
切れないようにする。自動運転よりは遙かに簡単かつ、今直ぐにでも搭載出来る
システムだと思います。
 法律改正も必須です。昨今高齢ドライバーによる死亡事故が多発していますが、
例えば70歳を過ぎたら毎年実地試験を受けなければならないよう義務化する。
更に75歳以降は安全装置付の車でないと運転出来ないようにする。家族だから
こそ言いにくいこともあるので、事故防止を家族の説得に期待するのではなく、
「法律違反だからもう運転はやめて」と言い切れるようにする。これが家族に期待
出来る範囲だと思います。
 本年も色々な話題に挑戦していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。