どこまで減るのかガソリンスタンド  
 
どこまで増えるかセルフスタンド
あなたはSS数企画の番目のお客さまです 2018/8/31 Ver1
皆様もご存じの通り、資源エネルギー庁より本年3月末のSS数が発表されました。
また石油情報センターからは、3月末のセルフSS数が発表されました。そんな訳で
今月は、SS数はいつ頃どこまで減るのか、そしてセルフSS数はどこまで増えるか。
過去データ、ハード、規制緩和などあらゆる角度から検証してみたいと思います。
                                    文責 垣見裕司

資源エネルギー庁から発表された数字は
7月18日に資源エネルギー庁から発表された2018年3月末のSSは30747で
前年比マイナス720です。一昨年はマイナス866。その前は、マイナス1177
でしたから、減少数としては鈍化して来ました。しかし大底感もありません。
まずは個別要因を考えず、今までのSS数の減少傾向を未来に引き延ばした
のが、下記のグラフです。グラフがシンプルで綺麗なら、的をえていると思います。
2030年で20000という数字は「当たらずと言えども遠からず」でしょう。

具体的には年間マイナス800

実は下記のグラフで今年以降の減少数は、昨年の減少数と一昨年の減少数を
平均化して丸めた数字(720+866)÷2=793→約800にしました。
3年前以前の毎年1000から1200の減少が本当なのか。
それともここ2年の1000割が本当なのかは、分りません。
それがはっきりするのは、2018年度末の数字次第だと思います。
一方、事業者数も同様に計算し、丸めた数字で予想してみると、2030年で
10000事業者という数字が、もっともらしく見えて来ました。


日本のセルフSSはどこまで伸びるのか 10000件がほぼ上限か

2018年3月末のセルフSS数は、9928となりました。前年対比の伸びは、僅か72
SSです。来年もう一度72SS以上伸びれば、ついに10000に達することとなります。
ただ数字お宅の私としては、その72の内訳をしっかり説明したいと思います。
新設改造は、1年間で215あるのですが、何と撤退も143もあるのです。
セルフの分母が約1万。そしてオープンしてから10数年しかたっていないのに
10数年前から毎年100ヶ所以上撤退しているのです。
出店計画を見誤ったので勇気ある撤退をしたと言えばそれまでですが、これが
プロパー特約店や販売店だったら命取りでしょう。今までの20年の累計で言えば
11416SS出店して、既に1488店が閉鎖しているのです。

日本のセルフSS数




   セルフSS数は左軸、新規・改造、撤退、前年増加数は縮尺5倍の右軸

ガソリンスタンドの撤退理由は、ガソリン需要減ではない!

将来のSS数の予測をする際には、その前提条件として、ガソリンの需要予測の
話が当然の様に出ます。現在年率2〜3%減というのが、一応業界に認知されて
いるように思います。仮に1.8%の減少ですめば、ああ猛暑で冷房需要が伸びた
のかなと後から、予測と実際値の差の理由を考えます。でも、予想より現実の数字
の方が正しいのです。
 要するにSS経営者としては、にガソリン需要が年率2〜3%減少することを最初
から織り込んで経営計画を立てればよいのだと思います。
メーカーである元売としては、ガソリンの需要予測は大切です。年率の減少が2%
なのか3%なのは、日本全国の話なので、その1%の違いが非常に重要であること
はよく分かります。
我々の様な中小の月間100KL程度のSSにしてみれば、1%の誤差は1000L
の話です。市況回復でマージンが10円あったとしても、1万円の違いです。
従って対策としては、昨年より仕入れは、ほぼゼロの1万円のコーティングを月に
1台増やしましょう。年率3%の減少なら3台増やせばよい話です。
 このように月間100KL程度の我々のようなSSにおいては、ガソリン需要の減少
は、SSの直接的閉鎖要因ではないような気がします。
13増9減 その9減の撤退理由
今弊社の運営するガソリンスタンドは、4件ですが、今に至るまでの増減を議員
定数風に申し上げると13増9減です。その9減の理由は以下の通りです。
日本石油の社有SS(日石も地主から借りていた)のケースでは、地主等の関係
で返却を余儀なくされたのが、2SSありました。
同様に地元の地主との賃貸期間の満了に伴う返却も1件ありました。
また元々販売店が運営し、その後当社が改造して運営していたSSは、15年の
定期借家契約の満了による閉鎖もありました。
築50年超の老朽化と再投資不可の判定で元売に返却したのが一例。
近隣に超大型セルフが誕生し市況悪化で黒字が見込めなくなったのが、
唯一の赤字防止要因での閉鎖です。
1800坪のLPガス充填所を購入するための等価交換と、ビルにしたSS。
そして今回4月に石油販売のみをやめたのは、給油関連設備の老朽化です。

全国石油協会発行のSS経営実態調査報告書からの考察

次に視点を変え、全国石油協会が行っている平成29年の経営実態調査から
参考となる数字をピックUPしてみます。この調査の母集団は2281SSですが、
統計上の信頼性は高いでしょう。
まず1か所のみ運営のSS割合は未だに72%もあります。すなわち約2万のSSは、
会社規模が小さいので、計量機の交換等はしても全面改装は難しいと思います。
その1か所運営のSS所有形態は、自ら所有が77%。元売や仕入先以外の地元
地主等からの賃借が21%なので、ますます再投資は難しそうです。
但し心強いのはその1か所運営者の兼業率は46%もあります。灯油販売やLPガス
販売が想定されますが、東京なら賃貸アパート経営をしているケースもあります。
その辺が強みですし、儲からないSS業界には、余り固執しないとも言えるでしょう。

報告書の販売数量からわかること

次に1か所運営のSSの月間販売数量を見てみましょう。同報告書によれば
ガソリンでは月間51KLしか販売していません。灯油19KL。軽油30KL、そして
A重油5KLを合計しても106KLだそうです。従って今後SSが40年を迎えたと
しても、50年の時の再投資は難しいような気がします。
これが4〜5か所運営のSSとなると、ガソリンで90KL、灯油で20KL、軽油で
24KL、そして3KLのA重油を加えて全数量では、147KLまで伸びるので、
数量的競争力は、1か所運営の約1.5倍となります。
同様に油外収入も両者はかなり違います。1か所運営SSは、月間36万円の
粗利に対して、4〜5か所は、83万円です。
そして10か所以上のSSでは、その平均は130万円まで伸びますので、再投資
をして勝ち残れるか否かは、私は油外収益の違いの方が大きいと思います。

SS面積からわかること

再投資をするか否かにおいて販売数量と同様に、SSの敷地面積が広いか
狭いかは、かなり重要な要素になると思います。同報告書においては、SS面積
の調査項目もあるのはすばらしいことです。
セルフとフルを問わず、200坪以下の小型SSは、全体の36%。そして201坪
から300坪以下が35%。そして500坪以下が22%で、501坪以上は、7%です。
1SS運営のSSの平均面積はという括りでの記載はありませんが、200坪以下
の小規模SSが、1SS運営者の多くを占めていることは事実でしょう。
しかし面積論で言えば、都心での500坪超のSSは皆無で、せいぜい300坪
がいいところです。筆者の会社のSSは八王子を除けば、残念ながら皆200坪
以下です。但し都心のSSは、面積の割に比較的販売数量が多いのは事実です。


元売SSの廃止基準数量

1SS運営者が72%ということは、28%が2SS以上の運営業者ですが、彼らは
特約店の割合が圧倒的に多く、再投資するか否かは、元売の影響を受けます。
その時に参考となるのが、元売の再投資基準です。あくまで一つの目安ですが
フルで200KL以上、セルフで300KL以上です。それをSSの面積でいうと、
200坪以下はまず閉鎖と言えるのではないかと思います。
 再編により元売は大中小に集約されましたので、ある中小SSが閉鎖しても
周りの同系列で吸収出来る割合は多くなるので、再投資はより低くなります。
都道府県別のSS減少数
過去1年間の減少を都道府県別に見ると、やはり東京が4.7%で第一位。次いで
群馬が4.5%。長崎が4%、3.8%の福井、3.7%の青森など、もともとSS数が
少ない地方でも減少率が高くなっており、SS過疎地の拡大が進んでいます。
しかし一番閉鎖率が高いのは東京です。平成6年度(1994年度)からの
減少数や減少率は、2894から1046まで36%、すなわち64%にあたる
1848ヶ所が閉鎖したのです。全国のSS数は、94年度の60421がピークですが
東京のピークは、1977年度末の3445SSなので、2399SSも撤退したことに
なります。これは跡地利用の選択肢が色々あったのが最大の理由だと思います。

中小SSにとっての死神的存在

今、SS業界で一番問題なのは、異業種というか、巨大スーパー併設の地球外
生命の来襲のような侵略的出店でしょう。新規に月間1000KLSSが突然出現。
その販売価格は、NO1元売の仕切り以下です。現状では個別対応はないので、
半径5km以内のSSは撤退を余儀なくされます。
当社で言えば、巨大スーパーではありませんでしたが、大型安売りセルフが2件
出来てしまい、周辺市況が壊滅的になった撤退例と似ているかもしれません。
 しかしお客様の利便性を考えれば、5km走ってやっとたどりつく巨大な安値
1000KLSSよりも、正にホームドクターのような身近なSSが良いはずです。
社会的インフラとしても、巨大な1ヶ所より、普通の10ヶ所が良いはずです。
ちなみに元売にしてみれば、10ヶ所の100KLSSに納入するより1ヶ所の1000KL
に供給する方がコストは安いと思われがちですが私は違うと思います。
例えば導管で1000KLに1ヶ所供給するのと、100KLSS 10ヶ所に供給するなら
前者の方が効率的なのは明白ですが、石油製品は、16KLローリーなり、20KL
ローリーでの供給なので、1台に纏まる納入なら、配送コストは1000KLも100KL
も本当はそれほど変らないと私は思っています。

規制緩和の歴史から考える

最後にSSの過去の規制緩和から考えてみたいと思います。
1959年にタンクの容量が10KLに規制されました。それが30kLまで緩和された
のが1987年、そして2001年に容量規制がなくなり、建築基準法の縛りとなり
48KLのタンクも可能となりました。
タンクの大型化は、物流面でも防災面でも良いことです。
タンクの構造について1959年は6mmの鋼板。外面保護は、アスファルトかモル
タルでの被服。そして設置方法は、土壌への直接埋設が一般的でした。
 一重殻タンクの塗覆装については、77年にエポキシ樹脂、81年にポリエステル
82年にウレタン、93年にFRP、2005年にウレタンエラストマーが認可されました。
 もっともタンクの方も鋼板の二重殻、鋼板とFRP、そしてFRPの二重殻なども
認められより安全になりました。ただ国としてはプールのようなタンク室に設置
しなさいとの規制は、2005年からのようなので意外に遅いと思いました。
 従って1987年以降に新設されたSSなら消防法的には問題ないかと思います。
ちなみに1989年(平成元年)以降の新設の合計は18232SSです。
 せめてこのSSだけは未来永劫残ってほしいとは思います。