JXTG誕生から丸1年
業界はどう変ったのか& SS規制緩和の検討開始
あなたは「JXTG誕生」企画の番目のお客様です。
早いものでこの4月は、JXTGの誕生から丸1年です。 一体何が変わったのでしょうか。
色々あると思いますが、今月はこの問題ともう一つSSのとくにハード面の規制緩和に
ついて考えてみたいと思います。           2018年3月30日文責 垣見裕司

元売の収益が大幅に改善した

最大の良い変化は元売の収益力が大幅に改善したということです。 簡単に表現
するなら、JXTGが改善するのは合併効果として当然ですが、おそらく、旧東燃
ゼネラルが流していたと思われる業転品が大幅に減ったことで、業転品や系列
卸価格が上がり、数量こそ若干減ったものの、利益は大幅に改善したのです。
 JXTG統合の目的は、業界他社に対して、圧倒的な競争力を身につけて勝ち
残ることなのだと思います。ただ業転数量の削減の結果として卸市況が改善した
ので、一部下をもぐった元売もあるようですが、少なくとも卸市況においては、
絶対価格も原油輸入CIF価格からのマージン幅も改善したので、結果的に全元売
の収益が大幅に改善したのです。 一時は、経営危機説まで流れたコスモ石油も
最近はそのような話は全く聞かなくなりましたので、この経営統合は元売全体の
ためになりました。

決算だけでなく、元売の株価にも注目してみる

上表はJXTGHDとコスモエネルギーHDが発表した2017/4-12期の決算です。
見ての通りJXTGだけでなくコスモまで大幅改善しています。 次に決算と同等に
重要な株価でも見てみます。JXTGは2016年6月の約400円から650円に
回復しています。 下のグラフは、コスモの株価の推移です。
本年1月からの米国トランプ大統領の自分ファーストのコメントによる米国株式
市場に端を発する世界の株式市場の同時暴落等はありますが、2016年6月
からの推移で見れば、その価格上昇率は、日経平均の値上がり率より、かなり
高いのではないかと思います。
  米国の某新興EVメーカーのように、まともな利益すら出したこともないのに、
時価総額が、GMなどのビッグ3を上回るという難解な株価もあります。 しかし
通常は、ある会社の株価は、大手投資家や個人投資家によるその会社の評価
であり、人気投票でもあるので、現在はもちろん、近未来への期待も入っている
と思います。 従って私は、少なくとも上場企業においては、実際の決算書による
絶対利益額や利益率の次に、大切な指標だと思います。 出光や昭和シェルの
株価も改善しておりますが、こちらは、合併の思惑とか、いまだに創業家が出光
株式を買い増ししているなどの噂も聞きますので、今回の業界としての改善判断
には使わないことにしました。

大幅に上がったコスモエネルギーHDの株価 2016/6〜2018/2



一方、太陽石油も絶好調のようです。前期の4月から9月までの半期の経常
利益は、在庫評価除きで、前年の1億円の赤字から、今期は124億円の黒字
転換です。過去の安い業転放出元売というマイナーなイメージから完全に卒業
したと言えるでしょう。 利益の源泉、沖縄の南西石油の買収が功を奏し、沖縄
の卸市況や末端市況の改善は、電力やガス業界ならば、正に地域独占状態(笑)
なのでお見事です。

SS業界への恩恵は

全体的な末端市況の改善は確かにあったと思います。業転市場は値上がりし、
系列価格との差が大幅に縮小。その系列価格も一切の値引きなく(当社の場合
だけかもしれませんが笑)、系列価格も実質的には上昇したのかもしれません。
それでもSS口銭改善はあったと思います。 ただ一部の市況の悪い地域は存在し
筆者の会社のSSも二か所も巻き込まれているので、実に辛いものがあります。
 
 またgogoGS東京の安値40SSで見ると、昭和シェルマークが16もある事実は
相変わらずですが、その安値レベルは、昨年11月同社の卸価格体系の変更の
あと、少しは改善されて来たかも知れません。
 
 ただそれは「ましになった」というレベルです。同社には、自社のマークや
ブランド価値の向上を念頭に、SSでの利益確保が可能な末端価格にして行く努力
が必要でしょう。 SS経営者は自身で 生き残りへの模索を さて今回のJXと東燃
ゼネラルの合併は、よく言えば業界のためであり、系列SSのためでもあります。
 
 しかし大幅な改善利益を出したからと言って、系列店への統合成功収益改善
の御礼感謝サプライズ3月値引きはなさそうです。
 あるとすればむしろ株式配当の増額の方かもしれません。 従ってSS業界や
SS経営者としては、自分SSの心配は自分でするしかなさそうです。
 
 筆者の会社のSSのガソリン販売数量はせいぜい月間100klなので、口銭が
10円になっても100万円の利益しかありません。直営SSの平均的な経費は最低
月間300万円ですので、あと200万円以上の利益をどう上げるか。本気で検討
しておく必要があるのです。 弊社なら、洗車、コーティング、レンタカー、納得の
車買取&オークション代行ビジネスですが、その他のビジネスはもうないので
しょうか。

SSの本格的な規制緩和の議論が始まる

 そんな時まことに嬉しいニュースが入って来ました。 経済産業省が2月22日に
ガソリンスタンドの規制緩和に向けた有識者検討会の初会合を開いたのです。
 給油所敷地内にコンビニや物流拠点の設置、次世代自動車向けの電気や
水素の供給設備を置けるように、技術的な観点などから検討を開始したのです。
  当然消防庁など関連省庁と連携が必要となりますが、いつもと違うのは、単なる
委員会や検討会だけではなく、一5月までに取りまとめるというタイムスケジュール
が入っていること。 そして最も肝心な関連法令の改正も、2019年度から実施を
目指すとのことなので、少しは期待できるかもしれません。
 SS業界における水素スタンド研究の自称第一人者としては、規制緩和の遅さは
呆れてもはや悲しいレベルではありますが、もう一度期待することにします。
  厳しいハード規制は必要なのか。私はその委員会の委員ではないので、以下は
あくまで私の勝手な推測です。
 まずSSは過度の規制を受けていると思います。阪神淡路大震災では、あの
大火災を止めたハードなのに、例えばキャノピー面積にしても敷地面積の1/3以下
という規制は疑問です。
 ガソリンのペーパーは空気より重いので、漏れだしても下に貯まります。空気より
軽い天然ガスや、水素のスタンドならまだわかりますが、少なくとも道路面に対して
開放してあればそれで十分だと思います。  同様にSSを囲む防火塀も、私なら
タンクローリーの荷卸し場所など、大量のガソリンが漏れ出し続ける場所の隣地
境界にあれば十分だと思います。
 実は洗車やコーティングに際して、一番必要なのは屋根であり、更に砂埃の入ら
ない密閉された空間は何としても欲しいので、是非、緩和してほしいと思います

自動車販売も実はグレーゾーン

 今、多くのSSが行う車販やリースも一歩間違えると違法なのをご存じでしょうか。
例えば販売目的の中古車があるとします。販売価格情報などをフロントガラスなど
に掲示し、SS内にディスプレーするのは、私の解釈では恐らく違法です。
 実際、車を展示していたら、消防から撤去しなさいと指摘を受けたSS経営者の
友人のもいたので、間違いないでしょう。
 要するに給油関連以外の業務をSS内では基本的には認めていないのです。
その意味ではレンタカーも給油や点検整備目的なのですが、このレンタカーに
車両価格看板を掲示して、貸し出しのない時、SSで展示したらおそらくアウトだと
思います。
 また今のIT時代に非常に困るのは、タブレット端末も防爆仕様などは本来ない
ので、給油中、運転席にいらっしゃるお客様への説明に使用することも、本来は
出来ないのです。

SS過疎問題も解決出来る

 業界の皆様はよくご存知の通り、一市町村内に給油所が3カ所以下の「給油所
過疎地」は、全国に302市町村もあり、その対策が急務となっています。
 日ごろは無人で休止中のSSに、お客様が来店され、呼び鈴を押してから最寄り
店舗から店員が来る「かけつけ給油」の実証実験も行われました。
  でもこれは常駐する定員のコストを削減出来るだけでハードは通常のままです。
無人のセルフが可能になっても、削減出来るのは人件費だけです。
 私の対策は、給油ノズル付きの6KLローリーを中古でもよいので確保する。
そして過疎地の特例として
@ガソリン、軽油、灯油の3油種の混載を許可。A道路や私有地での給油を許可。
Bしかるべき場所での積み置きを許可。  Cその6KL車のタンクへの給油を
一般SSのロングホースの計量器からも可能にする。これで解決します。

オートジョイ南田無SSで大実験開始?

 筆者の会社の南田無SSは、大昔LPガスの供給基地でした。 その入口の一角
に昭和40年にSSを作ったのが始まりで、昭和56年に大改装して今のノンスペース
型になりました。そして平成9年には、LPガス基地の跡地の1700坪に、スーパー
マーケットのいなげやを誘致し、ショッピングセンターを併設したSSとなりました。
 車で家族でいなげやに買い物に来て、SSに停めて奥様とお子様はいなげやに
歩いていくのですが、同一所有者の敷地にも関わらず、SSとショッピングセンター
の表玄関の駐車場との間には、防火塀が高くそびえ、その動線を隔てていました。
  前面道路もSS側には歩道がないので、一度車道に出ないと、隣のいなげやに
行けないという不便が、20年間も続いていたのです。
 この防火塀を何とかして撤去したい。私の強い思いでした。
 もう一つ実現したかったのては、洗車やコーティング命の筆者の会社にとって、
お客様からもその作業が見えて砂埃等が入らず、正面は車が出入り出来るよう
開閉可能な蛇腹のアクリルボード付きのコーティングブースでした。しかしこれも
屋根面積の問題とテント防炎性というダブル難題があり、SSではその設置が
認められないのです。

給油設備が相次いで故障  泣く泣くガソリン灯油の販売を断念

 しかしこの南田無SSは、今年に入り相次いで機器の不具合が発生しました。
ノンスペースのガソリンノズル10本あるうち何と6本に不具合があるのです。 そして
決定的なのは原因不明の漏電で、半日SSをオープン出来ないこともありました。
  天下のタツノさんにお伺いしても、最古は40年前の製品なので部品がない。
電気業者も「電気系統を全て変えないと漏電は治りません」との判断でした。
  全てノンスぺースの計量器と電気、配管もやり直すと約2千万円掛かります。
今は黒字でも月間100klでは、SSとしての投資回収は難しいのです。
 所長会と役員会での決定は、「ガソリン灯油の販売を断念。洗車・コーティング、
レンタカー、車買取オークション代行店に特化して運営を継続」となり、誠に、誠に
残念ながら、ガソリンと灯油の販売は、4月1日で終了することとなりました。
 その反面、洗車やコーティング、レンタカー。車買取りオークションなどの営業は
引き続き継続して参ります。今までの「ガソリン給油」という来店動機がなくなっても
洗車やコーティングビジネスが成功するのか。
 実はいなげやさんも4月1日で営業を終了し、その後は「リクシルビバ」様に借りて
頂けることになったので、SS廃業後の洗車やコーティングでやっていけるのかの
実験を身をもってしてみたいと思います。 
 それにしても、SSを諦めると、消防法や、防火塀問題やコーティングブースの
呪縛からも解放されるのは皮肉な話なので、規制緩和はやはり必要でしょう。