原発問題から家庭での省エネまで
マクロからミクロまで日本のエネルギー問題を考える
水素では番目。ガス体エネルギーでは 番目のお客様です。 
                                   2015/5/28 更新 Ver1   

今月も引き続き日本のエネルギー問題を考えてみたいと思います。題して
原発問題という超マクロから、家庭での省エネというミクロまで、エネルギー業界人
として考えるです。                        文責 垣見 裕司

2030年の望ましい電源構成の大矛盾

ご存じの通り経済産業省の諮問機関である総合エネルギー調査会の長期エネ
ルギー需要見通し小委員会は、2030年の望ましい電源構成案について4月28日、
その骨子案を発表しました。
石炭 天然ガス 石油など 再生エネ 原子力
2030年度想定 26 27 3 22〜24 20〜22
2013年度実績 30.3 43.2 14.9 10.7 1.0
2010年度実績 25.0 29.3 7.5 9.6 28.6

また原発を含む1次エネルギー需給率は震災前が20%、現在は6%ですが
これを25%まで引き上げる内容となっています。

その一方、運転か開始から40年前後が経過し、老朽化したり小規模で効率が
悪くなったりした原発の廃炉も5機決まりました。関西電力の美浜原発1号2号
(福井県)、日本原子力発電の敦賀原発1号機(福井県)、九州電力の玄海原発
1号機(佐賀県)が4月27日、そして4月30日には中国電力の島根原発1号機
(島根県)も廃止されましたので、国内原発は48基から43基に減っています。

では2030年時点での構成比20〜22%はどのように算出したのでしょうか。
2030年時点で、運転開始40年未満の18基と上記廃炉表明済の5原発を除く
老朽21基の最大39基をフルに稼働させて22%なのだそうで、20〜22%と幅を
もたせたのだそうです。ちなみに原発の新増設については触れていません。
 私は決して原発即時全面反対派ではありませんが、流石にこれでは国民の
真の納得は得られないでしょう。

2030年の発言コストも極めて不可解な数字

次に2030年時点での電源別発電コスト試算を見てみましょう。これも不可解です。

発電コスト 原子力 石炭 天然
ガス
太陽光
非住宅
太陽光
住宅
風力
陸上
石油
火力
2030年 10.1以上 12.9 13.4 12.7〜15.5 12.5〜16.4 13.9〜21.9 28.9〜41.6
2011年試算 8.9円以上 10.3 10.9 12.1〜26.4 9.9〜20.0 8.8〜17.3 25.1〜38.9

そうなのです。単純に見ても原発が一番安くなるように計算したように見えます。
国際価格が比較的安定しているからなのか石炭は固定数字を書ききっています。
太陽光や風力などは、ある程度の幅を持たせてあるものの、ちゃんと上限価格を
明記してありますので、非常に信頼性が高いという印象を受けます。
少し疑問に思うのは、東日本大震災後の輸入急増時には、大幅上昇した天然ガス
が、安価な固定値なのに対し恣意的なものを感じてしまうのは私だけでしょうか。
確かに長期の開発プロジェクトにより安定した輸入であることは承知していますが、
価格契約は原油価格連動のはずです。石油が独歩高なのも違和感を感じます。
原発コスト「以上」って何? 見込むべき通常廃炉コスト
今回で一番私が注目したのは、原発の発電コストが「以上」と「〜」という表現で
最も安いチャンピオンデータし記されていないことです。その理由としては、
万一の事故時の補償費等が見込めないからというのが理由だと思います。

それは良く分かります。今回の福島事故も結局は、国が東電に変わって補償して
いるようなものですから、1000年に一度の事故をどうこう言うつもりはありません。

私がお伺いしたいのは、通常の運転で出て来る正常な使用済み核燃料の廃棄
方法の道筋さえ見えない中、どうやってその10.1円を算出したのかということです。
以前の特集で、青森県の六ヶ所村の一次保管施設のプールはほぼ満杯であること。
各原発にも大量の使用済み核燃料が保管されていること。そしてその余力が
もう余りないこと。その補完場所が圧力容器等ではなく テロ対策的には、ほぼ
無防備なところに保管されていることも大問題だと思います。
そして本年4月以降、大量の核廃棄物が出るのをご存じでしょうか。そうです。
事故なく長年の運転を終えて廃炉が決まった5機の原発から、1基あたり4000トン
とも言われる大量の核廃棄物が出て来ることです。しかしその処分方法や
最終保管場所などは、全く決まっておらず、その当てすらないのです。
今までは核のゴミと言えば、使用済核燃料すなわち高レベル放射線廃棄物を
いいましたが、事故なく正常に運転を終了した原発からは、一部の高レベルと
ともに大量の中レベル、低レベルの放射性廃棄物が出て来るのです。

現在の原発の発電コスト試算でも当然この費用の見積もりは入っています。
しかしその程度見積りでは、最終処分地に立候補してくれる自治体は全く
ありませんでした。これは、最終処分コストがもう2-3割多く見積もるればよい
という問題ではなく、10倍に増額しても引き受け手はいないかもしれないのです。
これを考えれば、やはり原発はソフトランディングすべきで、核燃料廃棄物処理
問題を我々の子供たちの世代に送っては、いけないのだと思います。

ちなみに2015年5月17日の東京新聞の1面によれば、福島の原発事故後に施行
された原発の新しい規制基準で必要になった追加の安全対策費用は、原発の
ない沖縄電力を除く9電力会社合計で何と最低2兆3000億円だそうです。2013年
秋の調査では1兆6500億円だったので、この1年半だけで4割の7000億円も増え
たことになります。この数字でさえ 関西電力が最新数字を公表していないので
更に増えるとのことです。
主な老朽原発一覧表
原発名 電力会社 運転開始 出力万kW





敦賀1号 日本原電 1970年03月 35.7
私は原発に関しては
全くの素人ですが、
今後もこのような資
料をこつこつ集め
少しずつ勉強してい
きたいと思います。
こうして表を作ると
廃炉決定と延長申請
の差がよく分かります
美浜1号 関西電力 1970年11月 34
美浜2号 1972年07月 50
島根1号 中国電力 1974年03月 46
玄海1号 九州電力 1975年10月 55.9



高浜1号 関西電力 1974年11月 82.6
高浜2号 1975年11月 82.6
美浜3号 1976年12月 82.6


東海第2 日本原電 1978年11月 110
大飯1号 関西電力 1979年03月 117.5
大飯2号 1979年12月 117.5
未定 伊方1号 四国電力 1977年09月 56.6

太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーの実力は

前月企画では再生可能エネルギーについては触れられなかったので
今月は一目瞭然の頁をご紹介します。固定価格買取制度情報公開サイト
http://www.fit.go.jp/statistics/public_sp.htm です。
正に、2012年の制度開始以来、移行認定分も含めて 2015年1月末までに
何と2553万kW すなわち原発25.5基分がその稼働を開始しました。更に
驚くのは、認定申請済の容量が2015年2月末現在7868万kWもあるのです。
申請して実際は着工し完成し、発電まで行かない事例が半分あるとしても
4000万kWですから、夏場の冷房需要のピークカットや、発電用の天然ガス
輸入量の減少には大いに役立つと思います。反面、曇りや雨の日、そして
夜は発電しない訳ですから、負荷追随能力の高い、火力発電が益々大切に
なります。

遂に発生太陽光発電抑制  鹿児島県種子島 九州電力

私としては、注目していた事象が遂に発生しました。
九州電力は、鹿児島県種子島の太陽光発電事業者に対し、5月5日に発電抑制
を要請したと発表したのです。私が知る限り、再生可能エネルギーの抑制要請は
全国初めてでしょう。九州電力によれば、当日の気象状況から供給量が需要を
大幅に上回る見込みとなり、合計出力1千KWの抑制を求めたとのことです。
しかしこれは、上記表をみれば時間の問題だったのです。種子島という需要が
限られた陸続きでない島で、ロケットの打ち上げ見学で島内人口が爆発的に
増えない限りは、電力需要が少ないのは十分想像出来ます。今後同様のことは
全国各地で増えて来ると思います。
そこで私が提案したいのは、余った電気で水を電気分解して、水素で貯めて
夜間等の発電するシステムです。再生可能エネルギーで水素を作るとコストは
高いというイメージですが、余った電気なら、価格は半分でも双方納得でしょう。
水素として売る、或は夜間に燃料電池で発電するのも良いと思いますが、読者の
皆様で、このシステムコストを教えて下さる方、是非ご連絡下さい。

一般家庭の節電と節ガス対策  1年間の実験結果公開します

昨年5月企画で、省エネでの最高賞である「経済産業大臣賞」を受賞した
リンナイ様の 「電気×ガス」のハイブリッド給湯・暖房システム「ECO ONE(エコワン)」
を設置したとお伝えしました。http://www.kakimi.co.jp/2014-05.htm
余りにもガスの使用量が減るので、都市ガス業者もLPガス業者も実は
販売したくないとまで言われた商品ですが、本当でしょうか。
 また当然のように外気の熱を使って電気によるヒートポンプを使って45度のお湯
を沸かすので、ガスの消費量は減っても電気が増えてしまったら意味がないので、
その辺をしっかり実験してみようと思いました。
 例によって私の家族は、このようなデータを私が取っているとこは全く知りません。
従って エコワン設置の前後で特に生活状況は変わっていないと思います。
尚、この時に省エネ効果がそれなりにあると言われる節水シャワーに交換したこと
も付け加えておきます。さて ガスの絶対需要はどのくらい減ったと思いますか。

驚愕のガス使用量の節約効果

以下は、当家のガスの2年間の使用状況です。単価は円安やLNGの高騰により
価格が上がっていますので純粋に数量だけで比較してみました。
年/月  5月 6月 7月 8月 9月 10 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 合計
2014-15 38 18 13 9 11 18 34 33 44 39 31 24 18 292
2013-14 56 35 26 18 23 43 66 74 116 103 97 62 38 701
各月の検針日は概ね22日前後です。皆様感想は如何ですか。
私もまさかこれほどの明確なデータが出るとは思いませんでした。
正直を申し上げれば、9月検針分から子供の留学により、住んでいる人数が
4名から3名に減ったという事実はあります。しかし、5月から8月までの大幅減少
という間違いない数字もあるので、少なくとも半分になると申し上げていいでしょう。
年間合計で701-292=409m3の減 単価が仮に170円なら7万円弱の節約です。

では電気使用量はどのくらい増えたのか

私の事前の予想では、減ったガス代の半分が残れば、最低限はクリヤー。
しかしそれでは、エコワンの本体+設置工事比が、近年とても安くなった
エコジョーズには遠く及ばないと思っていました。しかし結果は以下の通りです。
年/月  5月 6月 7月 8月 9月 10 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 合計
2014-15 460 411 496 588 502 418 393 510 617 567 483 415 350
2013-14 527 461 526 695 679 570 485 552 696 641 600 478 460
2012-13 548 455 480 686 677 577 509 596 697 642 608 529 527
えっ。何故減っているか。目を疑いました。そして一生けん命考えました。
過去データも遡って調べました、そうすると減り始めたのは2014年3月なのです。
あっ10年使った冷蔵庫を買い替えた月だ。
従って、エコワンの電気の消費量は、
10年使った冷蔵庫の買い替えで十分賄える程度の消費量しかないと言う結論に
達しました。夜中の電気で80度まで上げて使うまで半日以上ほっておく、エコ
キュートより、使う直前に使う温度である45度までしか加熱しないその設計思想が
良いのだと思います。
そして9月からの子供の留学。そして10月からの150Wx2枚の独立型太陽光
パネルの導入は、昨年10月企画でご報告した通りですが買電量は更に減ります。
年間ベースで 300W x 東京の日照係数 1000 = 300kW これを一度
12Vバッテリーに貯めて使用しているので、変換効率0.9x0.9=約0.8としても
年間240kWの買電節約にはなっていると思います。
6月からは、留学していた子供が帰って来るので、この電気とガスの使用料調査は
もう1年続けてみようと思います。