安倍政権誕生で日本経済は、エネルギー政策はどうなる
 円安で輸出が増える VS 輸入エネルギーコスト上昇?  
新年あけましておめでとうございます。あなたは新年企画の番目のお客様です。
民主党の地滑り的大敗で、結果、歴史的大勝利を収めた自由民主党。政治的コメントは避けますが
安倍新首相が打ち出している円安誘導やデフレ脱却が成功して、日本の景気は好転するのか。
そして肝心のエネルギー政策はどうなるのか。原発再稼働問題は3年間の検討後どうなるのか。
私ごときが、誠に恐縮ではありますが、毎月の弊社所長会では、冒頭の貴重な時間に、このような
時事問題を本気で、そして各所長が安倍首相になったつもりで討議しています。その私の予習も含め
新年企画としたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いします。 2012/12/27 Ver2 文責 垣見裕司

民主党の地滑り的大敗で自由民主党が圧勝し安倍政権誕生 市場は好感
野田前総理の「近いうち」が突然の解散となり12月16日の衆議院選挙となりました。しかし
民主党の地滑り的大敗で、自民党は大勝利です。本HPは、特定政党の応援は控えますが
選挙結果は、エネルギー問題も含め「民意の繁栄」なので、冷静に分析してみたいと思います。

1 まず投票率は、小選挙区制になって以来、非常に低い 59.3%という数字に留まりました。
  これは、政治に関心がないというより、 民主党にはがっかり、自民党に戻るのもいや。
  でも期待した第三局も選挙対策の緊急連合で「投票したい人がいなかった」のでしょう。

2 比例区の自民党の得票率は、27.6%で、前回2009年の選挙の 26.7%と大差ありません。
  単に民主党が、前回の 42.6%から 今回16%に大幅に減らしただけという感じです。
  ちなみに小沢さんの「国民の生活」改め「未来」の小選挙区の勝敗は、1勝70敗ですから
  民主党以上の大敗北です。小沢さんは岩手出身なのですから、民主党内で喧嘩などして
  新党を作っている場合ではなく、もっと被災地復興を考えてほしかったのだと思います。

3 今回選挙は、議員数的には自民の大勝利ですが、それは1人のみ選ぶ小選挙区の勝利で
  小選挙区の79%に当たる237議席を、43%の小選挙区の得票率で取ったのです。
  これは冒頭の投票率 59.3%まで考えると、全有権者を分母にすれば、小選挙区では24.7%
  比例区に至っては僅か16.0%の支持で、480議席中293議席という61%を取ったのです。

ただ与野党ねじれ状態で何も決まらない政治よりは、望まれる政治の型だと思います。
市場もこれを好感。日経平均も12月19日に久しぶりに終値で10000円台を回復しました。
また為替相場も、まだ何もしていないながら、一昔前の78円から84円まで、円安になったことを
考えると、国内市場もそして海外投資家も自民党の圧勝を、一まず歓迎というところでしょう。
従って自民党新執行部も、この敵失勝利に奢ることなく、謙虚に、しかし大胆に、そして願わくば
1年でコロコロ首相が変わることなく、同窓でもある安倍先輩には、任期一杯までその総理の
職責をしっかり務めてほしいと思います。   下記グラフは、過去7か月の日経平均です

安倍ノミクス?と日銀の反応 円安を実現してデフレ脱却はなるか
安倍新首相は、就任前から「輪転機を回してでも」等、やや不適切?強引?とも思える表現を使い
為替相場を円安に誘導するような金融政策を発表しています。一方日銀の反応も、選挙後は、
安倍発言を重く受け止めたようで、12月20日の白川総裁の発言も、1歩踏み込んだ感じがしました。
以下安倍発言の金融政策を下記にまとめてみました。

1 インフレターゲットの設定 2%    日銀も次回1月会議で検討するとのこと。
  デフレ下では、今よりもう少し先の方が安くなるから、今買うのはやめようという心理なので
  インフレにしたいのは分かるのですが、目標の表明ではなく、何をするのかが肝心なのでしょう。
2 無制限の緩和  日銀も国債等の買い入れ基金枠を約90兆円から10兆円増やすと明言
  野田政権でも金融緩和はされていたので、これ以上市場に資金を供給しても、一般の企業が
  実質的に借りる金利は、銀行の手数料の割合の方が多く、これ以上下がらず、個人的には
  あまり意味がないと思います。むしろ1%等の安い金利でも、企業が、お金を借りて投資や
  新事業をしようと思う経済環境ではないことが、日本として大問題だと思います。
3 日銀による外債の購入
  間接的な円売りであり、米国債等なら紙切れになることはないので、円安誘導要因であることは
  間違いありません。但し、若干の日銀法改正が必要なようです。
4 日銀による国債の引受
  世界的には、末期症状の国が行う最後の切り札であり、輪転機を回すという表現に最も近く
  ハイパーインフレを招き易いので本来は禁じ手です。これを自国の通貨の価値を下げるために
  使うのですから、贅沢な悩みかもしれません。でも償還期限には解さなくてはいけないのですから
  借金の先送りであることに変わりはありません。これも財政法第5条の改定が必要なようです。
5 ゼロ金利から マイナス金利誘導政策
  これが本当なら、富裕層は銀行預金ではなく、現金を箪笥預金にしてもっていますという話だと
  思うので、個人的には、効果はないというか現実的ではないと思います。


円安≒インフレで問題は解決するのか 本当の目的は景気回復の好循環
最近の議論を冷静に考えると少し短絡的で、目的とそれを実現するための方法が、混同して
いる気がします。すなわち、「デフレがいけない」「デフレ≒円高?」だから「とにかく円安にする」
「物価さえ上がればいい」。何かおかしい?。では改めて、本当の目的を考えてみましょう。
 景気を回復させ、国内産業(特に製造業等)を活性化し、投資を増大させ、国内の
 空洞化を改善し、雇用を増やし、賃金を増やし、消費を拡大し、景気を回復する。
こう考えると「鶏が先か卵が先か」或いは「ネズミの嫁入り」のようですが、どこから始めるかは
別として、この好循環が、回り始めれば、極端な話、円高でもデフレでも、よいのかもしれません。
上記循環が国内型の循環なら、日銀や国や銀行を通してかは別として、海外循環もありそうです。
 日銀が(国が)外国債を大量に買う。必然的に円安になり、輸出が促進されて景気回復。
こちらは、米国債等安全な資産なら、将来の国民の負担増とはならないので一つの有効法です。
同様に政治発言でも本末転倒があります。「最大の目的は参議院でも勝つこと」でも違いますね。
真の目的は日本を良くすることであって、その結果、政権与党が指示されて、参議院で勝つのです。
簡単には円安にならない?円ドル需給と世界一の対外純資産国要因
現在、貿易収支は赤字に転落しましたが、実は金利とか株の配当とかの金融収支まで考えると
国全体としては、まだ経常黒字を保っているので、円とドルの需給バランスは、まだ円高要因です。
また借金体質の日本は、国債を乱発していますが、そのほとんどが日本国内の個人資産等で
買われていて、現在、日本国債の外国人の所有割合は、増えたと言っても約9%程度です。
もう一つ世界一の海外純資産253兆円も、信用ある国として、やはり円高要因です。
ちなみに米国の対外純負債は201兆円なので「日本1国で米国の負債を全てカーバーしている?」
数字上成り立つ上記表現の通貨ペア「ドルと円」は、容易に円安が進行しないこともあるのです。
 実際、多くの投機家が、日本国債の暴落=すなわち金利の上昇を見越して、過去10年以上
相場を張ってきましたが、今のところ彼らの見込みは外れたことになります。
また「有事に強いドル」といわれますが、2001/9/11の米国同時多発テロの時、ドルは121円から
117円まで約10日で4円近く下げたのに対し、2011/3/11の東日本大震災では、円は1週間で
83円から79円まで、4円も円高になっています。やはり日本の信用力は高いではないでしょうか。
以上を総合すると、円を下げるには円を大量に売って(或いは売り逃げて)、ドル等の外国通貨
を大量に買わなくてはいけません。しかし日本国債を見て分かる通り、円を持っているのは、
日本人なのです。国家転覆を恐れて海外資産を持つどこかの国の幹部と違って、国が亡びる
心配を全くしていない日本人は、円で金を買うことはあっても、ドルやユーロを大量に買おうと
は思わないのでしょう。どちらにしても、金融危機のギリシャやスペインには出来ない話なので、
信用ある日本国民であることに改めて誇りを持ち、感謝する次第てす。
輸出の増加が先か 輸入に頼るエネルギーコストの上昇が先か
ここからがようやくエネルギーの話ですが、その前にちょっと考えてみます。
例えば国内生産を前提として自動車の場合、円安になって、鉄鉱石の円価格があがったとしても
鉄板にして、自動車のボディーにして、多くの付加価値をつけてから販売しているので、輸入素材
や部品の円安によるコスト上昇は、最終の売値からみれば、恐らく微々たるものでしょう。
しかしエネルギー業界を考えるてみると、付加価値を非常に多くつけているのは、原発くらいです。
円安になって輸入ウランの価格が、大幅上昇しても、原発は固定設備費が、コストの多くを
占めるので、たぶん電気料金は上がらないと思いますが、我々石油業界の原油や石油製品は、
輸入価格から税金を除けば、付加価値は、ほとんどありません。従って、円安はそのまま円建て
でのエネルギーコストの上昇となります。本HPの読者はご存じとは思いますが、一応解説します。
 原油の日本輸入CIF価格が 100ドル/Bとします。 円が80円/ドルなら
 100$/B X  80円 ÷ 159L = 50.3円/Lです。 これが1ドル 100円になったします。
 100$/B X 100円 ÷ 159L = 62.9円/Lで、 12.6円のコストUP(125%)となります。
都市ガスにおける輸入価格が上昇した時の末端価格への影響度は、固定設備や導管配給の
宿命である設備費コストが石油より多いので、上昇割合としては、石油よりは少ないでしょう。
しかしマクロでみれば、はっきりします。2011年度の原油輸入CIF価格の総額は約10兆円。
もし円レートが80円から 100円になるとすれば、恐らく12.5兆円になるのだと思います。
 ちなみに現在輸入数量急増中のLNGは、昨年のデータでは参考にならないので、直近の
半期のデータでは、2012年4-9月は約3兆円、前年同期比24%UPなので、年間で約6兆円。
これが前例の通り、125%の円安となるなら、輸入総額は7.5兆円となるはずです。
 以下は貿易統計からの数字です。日本の輸入総額は2011年度で約70兆円。原油、石油製品
LNG、LPG、石炭等の鉱物系の輸入総額は23兆円で、何と約33%をしめているのです。
従って、円レートが80円から100円に25%円安になれば、エネルギーの輸入総額は28.8兆円。
すなわち5.8兆円も増えることになりますが、輸出増は、それ以上見込めるのでしょうか。
 尚、2011年度における対前年比の上昇は、原発停止による火力発電用の、LNGや原油の
生炊き用の輸入増です。従って2012年度は、数量がもう少し増えた数字が予想でき、更に
2013年度は、これに円安分が加わり、日本のエネルギーの輸入金額の増加は、2010年度比
約10兆円程度は覚悟しなくてはならないでしょう。
2011年度 輸入量  前年比 輸入額(兆円) 前年比 12年筆者推定 85円 90円 100円
原油 粗油 20,985万KL -2.4% 11.9兆円 +21.9% 12.0兆円 12.8 13.5 15.0
石油製品 2.3兆円 +37.4% 2.5兆円
LNG 8,318万t +17.9% 5.4兆円 +52.2% 6.2兆円 6.6 7.0 7.8
LPG 1,267万t +1.4% 0.9兆円 +12.0% 0.9兆円 1.1 1.1 1.3
石炭 17,538万t -6.0% 2.5兆円 +11.5% 2.6兆円 2.7 2.8 3.1
鉱物系合計 輸入総額69.7兆円(33.2%) 23.1兆円 +27.5% 24.2兆円 24.4 25.8 28.8
安倍新政権のエネルギー政策 核のゴミを未来に送ってはいけない
原発の再稼働については、自民党は最も寛容な方針を打ち出していたように思います。
「すべての原発について、3年以内の結論を目指し、電源構成の最適な組み合わせを、
遅くとも10年以内に確立する」としていました。しかし、速やかな原発ゼロを目指す公明党
との連立協議で、よりトーンダウンしたように思います。要するに、直ぐに強引な再稼働を
していくのではなく、3年かけて調査や議論をして、安全性が確認されれば、地元の同意を
取りつつ、順次稼働していくということだとすれば、最も現実的な方法だとは思います。

原発再稼働派の言うとおり、短期的な経済性を考えれば、確かに原発再稼働でしょう。
その安全性も震災前と比較すれば、津波や地震対策が格段に向上したのだと思います。
しかし、核燃料リサイクルが事実上困難になり、使用済核燃料は単純廃棄しかなく、それが
コスト的にも最も安いことを原発推進派も認め以上、地震火山国の日本において、10万年
レベルでの安全な保管場所などあるはすがありません。景気の悪い地方の足元を見て、
お金の力で核廃棄物の最終保存所を確保したり、アメリカの砂漠に保管してもらうのは、
道徳的にも許されないことでしょう。子供たちの未来の世界にこれ以上核のゴミを送っては
いけないのです。従って、全機再稼働は認めないとまでは、言わないものの、私としては、
最終的には、原発ゼロを目指してソフトランディングを図ってほしいと思います。
尚、再生可能エネルギーの固定料金買取制度(FIT)は確か当時の多くの政党が賛成して
始まった制度ですから、新規の買い取り契約は単価の見直しするとしもて、既に契約して
買取が始まったものについては、前政権が決めた価格でしっかり継続してほしいと思います。
安倍新政権への提案(エネルギー編) 水素社会の本格普及で税金のいらない経済対策を
しかし私は、脱原発のソフトランディングを考えても、またエネルギーの輸入依存度を減らす意味
でも水素社会の到来を速めるべきだと思います。もし水素社会が実現すれば、やがて
@ガソリンは一部水素に代わり  A灯油も一部電気に代わり  B電力重油も一部水素になると
原油輸入数量は、やがて現在の約半分になるのです。2011年で輸入総額は約10兆円ですから、
その半分の5兆円が、水素製造等で毎年国内還流して、経済対策となるのです。
普通の経済対策は、多大なる税金を投入しなければなりませんが、その水素がガソリンと等価なら
税金投入は最初のインフラ整備だけでよいのです。それが実現すると貿易赤字も減少します。
逆に言えば、輸送効率が悪く、国産も可能な水素は、絶対輸入などしてはいけないのです。
今まで、CO2削減等、環境面しかアピール出来なかった水素は、遅かれ早かれ、ブレイクします。
特に燃料電池車の動く中型発電機としての実力は、あまり知られていませんが、震災対応に、
最適ですし、SSの急速充電器にもなるのです。以下特徴を端的に書きます。

@FCVは、6kgの水素を高圧(70MP)タンク搭載、一回の充填での走行可能距離は約500km以上
Aこの水素6kgで 停車時でも 短時間20kW/h  連続で10kW/h  合計で150kWの発電が可能
B動く中型発電機は、震災対応や真夏の電力ピーク対策になる。
C発電コストは、水素を1千円/kg(ガソリン150円等価) 6kg=6千円 150kWで40円/kW。
DFCVの2015年の発売価格は未発表だが マスコミ予想は、中型車で500万円
E同格車が300万円なら差額200万円で 20kW/hの動く中型発電機が買える
F蓄電システム10kWで現在約300万円 FCVをSSに常設すれば急速充電器になる?

現在のSSでの充電ビジネスは大赤字ですが、FCVはキュービクル(変電器)が不要なのです。
それこそ三菱や日産のディーラーの充電は24時間やっていないので、電欠時のEVのレスキュー
にもFCVは最適です。また自宅にいるときは、車は使いませんので、電気のニーズと車のニーズ
の両立もしやすいのです。よって水素社会の普及とFCVの普及は、首都直下型地震対策や
脱原発の電力不足のピーク対策に、巨大投資不要で実現可能な方法だと思います。
安倍新政権へ中小企業経営者として望むこと 設備投資の一括償却等
SSを運営する中小企業経営者としての要望は、SSは社会的インフラであるにも関わらず、
自由競争を強いられ、その存続も危うい状態ですから、タンク同様、老朽化して危険な計量機等
の更新にも補助金を出してほしいところです。ただ他業界の皆様からは、お叱りを頂きそうなので
せめて本来の償却年数に関わらず、設備投資は1年等の特別償却を認めてほしいと思います。
これを幅広く実施すれば、税金の投入なしに、また円安円高にも関わらず、必要最低限の設備
投資のきっかけになると思いますが如何でしょうか。  ご意見ご要望ご感想はこちらから