98新年号「紙上シンポジウム」「活力ある業界づくりに向けて」―私の3つの提案

 この度はシンポジウムに当り私まで参加させて戴き、光栄かつ身の引き締まる想いです。
私からは問題提起のあった中から、価格、流通物量問題、テレメの3つについての認識と
それに対する私の考え方を紹介させて戴きます。           以下本文

1.異業種や新勢力による価格崩壊は大きな代償をともなう。(価格について)
現在LPGの小売価格は全体の平均としては極めて落ち着いているが、競合エネルギーとの競争力や
規制緩和の効果として適正な競争による緩やかな下方修正が多方面から期待されているところである。
 では当社は下げるのかと言われれば、先立って値下げの意志もは無く、我々業界の経営判断としては
一番難しいところではないか。しかしその高値安定、高利益率がもたらすものは、結果として
  1. @無償配管の商習慣
  2. A顧客の意志が全く介在しない営業権売買
  3. B異常な条件での既存ユーザー争奪行為、
が続いているのは極めて残念である。
 SS業界では異業種であるスーパーSSの新設や一部の安値看板の影響で粗利が約半分になった結果
悪習慣といわれた事後調整や過剰な新規SS投資がなった事は歓迎出来るが、
無秩序な競争で失った業界利益はあまりにも大きい代償であった。
LPG業界は自らの努力と適正競争で顧客が納得するレベルまで価格を下げ、
結果として常識を逸したような新規営業等が出来ない環境が整うことが望ましいが、
残念ながら、業界にとっての外圧や業界内の新勢力による無秩序な競争が突然起こるような気がする。

2.価格崩壊してからでは遅い、流通、物流再編。
 前述の急激な価格下落で仮に10立方m4千円程度になった場合、無償配管等の悪習慣や高値での
顧客売買は一気に沈静化するだろうが、もう一つの大きな経費である物流面の改革はすぐに出来ない。
(充填所の平均的な充填量は多く見ても300T/月。相場8円なら240万円/月)
(容器賃貸を事業として考えた場合も、購入費と20年の維持費用を使用可能月で
 割った数字を総コストと考えると、収入の方は遙かに少なくこちらも大赤字)。
それでも卸業者がやってこられたのは、直売部門の莫大な利益で吸収してきただけ。
かといって卸価格や卸業者間の充填費用が値上げ出来るとも思えず、生き残る充填所は、いわゆる
充填収入(社内部門からも充填相場と同じものを計上して計算)だけで収支採算を図る必要がある。
 それには少なくとも月間1500−2000tの充填数量が必要で、その形態も組合方式ではなく、
複数業者集まっての共同事業や、地域で効率の高い業者が核となって受け皿を作り、他の卸業者が
そこを共同利用し配送車や出来れば容器の統一、更に広い地域で提携し系列を越えそれを広げて行く
というのが現実性の高い物流提携方法であり、これを価格崩壊の前に方向づける必要があると思う。

3.通信技術が飛躍的に進歩する今、平成16年の目標に意味はあるか。(テレメ問題)
 インターネット等情報分野立場から見ると、業界のテレメ普及に疑問を持ちたくなる。
通信分野の技術革新と商品化、ローコスト化やその普及速度は、眼を見張るものがあ。
それは既存の電話線を取り替えや、2005年の光ファイバーの普及を待つまでもなく、市価3万円
前後のISDNモデム(正確にはDSU付きTA)の設置だけで一秒間になんと
128Kビットのデータ転送が可能になったことにも代表されている。
(インターネットの画像の様な膨大なデータと普通の電話やFAXを2回線分同時に利用可能)
このモデムに例えば、電気、ガス、水道等のメータへのデジタルジャックをつけることは技術的には
簡単で、NTTが電力、都市ガスや銀行各協会等と相談し次世代モデムとして基準を統一出来れば、
一般家庭へのデジタル情報化は飛躍的に進歩するだろう。
(在宅勤務、医療診断、銀行振込支払、通販等もまたそのモデム費用は5千円を切る)
そんな技術進歩の著しい時代に「平成16年のテレメ設置率70%」は現実と乖離しているとともに
投資という意味でも少々危険であり、マイコンUでも死亡事故は激減したのだから、保安能力数倍の
10年S型で十分ではないか。むしろ価格下落に備え、ローコスト化に力を入れるべきだと思う。
(また現在テレメの設置家庭がISDNを入れようとした場合は、アナログ回線と配線等の問題が
 あり知的レベルの高い顧客からテレメの取り外しを依頼されている残念なケースもある)

4.ガス業界の経営者として
 今のLP小売り粗利を当たり前だと思ってはいけないのではないか。
それはLPの利益というより創業者の利益と考える方が正しいと思う。
例えばLP業界は、保険、通販等色々多角化の話はあっても成功例は極めて少ない。それはLP業の
粗利に甘えているとともに、当たり前の意識が多角化=他業界の勉強を遅らせていると思う。
(SS業界はガソリンの粗利に頼らずに(頼れずに)洗車等独自のサービスで油外収益を増やした)
私自身の反省も含め異業種から参入してくる経営者に負けることなく、消費者が納得する低マージン
でやって行ける、そして価格崩壊がいつ起きても良いような体質作りに今年一年努力していきたい。
                                 以  上